蚕日記〈その1〉
(幼虫の写真があります。
苦手な方はご注意ください)
蚕を飼い始めてから、明日でちょうど一週間を迎える。
蚕にはずっと興味があった。養蚕農家のエッセイも読んだし、蚕の飼育法に生涯を捧げた人についてのマンガを読んだりもした。
そしてこの夏、満を持して? ついに蚕を迎えることができた。
販売されていたカイコは、4齢2日目だった。
この「齢」というのは、孵化してから脱皮をするまでの期間を指す。生まれてから、初めての脱皮までが1齢。脱皮後は2齢。4齢は3回脱皮を終えた状態であり、4齢2日目を日数に変換するなら、孵化からおよそ13日目ということになる。
配布されたカイコ飼育マニュアルを読んでいると、蚕は「飼う蚕(こ)」からきたものだと書かれてある。その名前が指し示す通り、蚕は人間に飼育されることが大前提であり、自然界では生存することができない。
また蚕のように、卵、幼虫、蛹、成虫、と四回に亘ってその姿を変える昆虫のことを「完全変態昆虫」というらしい。
「完全変態」という字面は、かなりインパクトがあるな、と思った。
カイコを触る前には、手を洗わなければならない。石鹸で入念に手を洗ったあと、やわらかい体をつまんで掌にのせる。おおう、16本のちいさな手足が皮膚上で蠢き、かなりくすぐったい。
写真は、アンパンマンと、先日川遊びにて持ち帰った石である。
カロリーメイトのような緑の固形物は、蚕の人工飼料である。粉末にした桑の葉と、ビタミンと、何か(忘れてしまった)を混ぜ合わせて作られたものだとか。
蚕を飼ってみて知ったのは、5齢までは、彼らが常に糸まみれであるということ。繭を作るときならいざしれず、そうでないときであっても、手足には常に柔らかい糸が絡まっている。(なぜ?)
もう一つは、手足が非常に粘着質であるということ。指に載せたカイコを、蚕座にしているダンボールへ戻そうと手で摘むのだが、わたしの指にしがみついて、まったく離れる気配がない。それと同時に、ダンボールから手へと移すときにも苦労した。
とはいえ、蚕みずからエサヘと乗り移るときには、すっと皮膚から離れてしまう。自分で粘着の加減を調節することができるのだろうか。
脱皮の瞬間も目撃した。
寝袋から這い出てくる人間のようだった。
いくら手足が16本あるとはいえ、ひとつひとつの足が短いから、大変そうだった。
自宅を空けていると、蚕大丈夫かな!? エサまだあるかな!? と心配になる。
幼虫と触れ合うのは、小学生以来だ。あの頃は、カブトムシの幼虫にも触ったし、アゲハチョウの幼虫も育てた。
大人になってすっかり虫嫌いにはなったが、やはり自分の蚕さんだと思うと可愛くてたまらない。
お別れまで、大切に育てたいと思う。
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