Cape Gloucester戦のM4A1シャーマン

M4A1導入の経緯

ガダルカナル島での戦訓によりM2A4及びM3軽戦車系の37mm砲は日本軍が構築した丸太製のバンカー等に対して威力不足であったため、75mm砲を持つM4シャーマンの配備を進めていたが中戦車の充足は陸軍が優先された。
海兵隊にはM4A2が配備される事となったが、第一海兵師団はニューブリテン島攻略にあたり上陸戦闘能力を欲したGHQ/SWPA(南太平洋軍総司令部)司令官のダグラス・マッカーサー大将(当時)の指揮下に一時的に置かれ、再編中のオーストラリアにて陸軍用の75mm砲塔のM4A1が配備された。
シャーマンが配備されたのは本部中隊とA中隊のみで、B・C中隊には新型軽戦車のM5/M5A1軽戦車が配備された。

ニューギニア戦で使用されたM4A1はPacific Car&Foundry(以後PCF)製であった。
PCFは他のM4シャーマンのメーカーと異なり太平洋側のワシントン州レントンに工場を持ち、地勢的に欧州戦線には殆ど送られず太平洋戦線か、カリフォルニア州のDesert Training Centerといった西海岸側の各種訓練施設等に送られた。

PCF製M4A1(75)に見られる特徴

M34A1砲架には上面2箇所のリフティングアイが付けられている。

既に砲塔上面のスポットライトブラケットがている。

上部車体のスポンソンの間にはL字ブラケットのステップが溶接されている。

車体前方機銃のダストカバー取り付け金具が他社標準の棒状金具ではなく、PCF製に特有の板状金具になっている。

ヘッドライトガードに取り付けられたプラグホルダーの角度が他社は斜めになっているがPCF製は垂直に取り付けられている。

Lima Locomotive Works製同様、車体下部後端が丸くなっている。

リアライトガードは3本足だが他社に比べ背が高く、後面2本は捻れて溶接されている。

フロントフェンダー付属の部分と車体後端のリアフェンダー以外のサンドシールド取り付け金具は生産段階で取り付けられてない。
また、一部の車両(5号車など)はリアフェンダーを取り付けている。

サイレンは「V for victory grille」と呼ばれるVの字マークを備えたFederal Type 160で、左フェンダー上に取り付けられている。


その他の特徴

角形エアクリーナーを付けている車両が多い。

履帯は全ての車両が全鋼製のT49履帯である。全鋼製履帯の導入により、履帯とトラックスキッドの擦れが問題となり、リターンローラーブラケットがスペーサー入りの水平型か持ち上がり型になっている。

起動輪は標準的なD47366タイプ、転輪はオープンスポークタイプ(D38501)、誘導輪はスタンプドホイール(C85164)に見えるがオープンスポークタイプ(D37916)を装着する車両の存在も否定出来ない。

上陸作戦時はガダルカナルやタラワ同様LSTより直接ビーチに上陸しており、後のようなD.W.Fユニットはまだ使用されていない。

海兵隊シャーマンの特徴として戦闘行動時にはフロントライトは取り外され、車内に収納されている。

フロントライトガードに鹵獲した戦利品の日本軍の防毒面(ガスマスク)を飾っている車両もある(1号車、13号車)。

行軍中、ピストルポートが開いている車両の写真が多く見られるが僅かばかりでも暑さから逃れる為である。勿論この行為は規律違反であったが守られる事は少なかった。

ブローニングM2重機はどの車両も車外に装着していない。

荷物は殆どのせておらず数両エンジンデッキに箱等が置いてある以外は砲塔バッスル後方にバッグ類や布、スチールヘルメットがかけてある程度である。

上陸作戦であることと、川や泥濘も多く、牽引ロープはほぼ全ての車両に取り付けられ、車体前後の牽引ラグにもフックが付けられている。

乗員は旧型タンカースヘルメット、通常のタンカースヘルメット、カバー付きM1ヘルメットを被っている。

塗装

オリーブドラブ地にアースイエローと思われる色で幅広の迷彩がされており、境界線はくっきりしている。

マーキング

車体番号
砲塔の側面前方(直接照準器の下付近)左右、砲塔バッスル横上方左右に小さく白で1から16までの番号のみステンシル風な書体で書かれている。
車両名などは書かれていない。

車両識別の番号はPCF製のスモールハッチA1では全ての車輌が白ではなく1942年制定の古いブルードラブ色だが、故意にか消されており確認が出来ない。

ファイナルデフカバー前面中央付近には小さく乱雑に1~2桁の数字が書かれている(9号車など)が詳細は不明。LST積載時の番号であろうか?

ホワイトスターは描かれておらず、迷彩で消されている様子もない。


戦闘

ビスマルク諸島ニューブリテン島西端北側にあるグロスター岬付近の日本軍の二ヶ所の飛行場を奪取し、ラバウルを孤立させることを目的としたOperation Backhanderだが、ニューブリテン島は降雨量が多く暑いだけでなく、険しい熱帯雨林と高い尾根、上陸地点の低地は沼沢地が広がり決して戦車の運用には適しているとは言えなかった。
第1海兵戦車大隊A中隊はオーストラリアでの再編成とニューギニアでの訓練を終え、入念な準備砲爆撃の後1943年12月26日LSTにて上陸地点イエロービーチに上陸した。

対戦車戦闘は行われず、バンカーやピルボックスが主たる攻撃目標であった。後の76mm砲弾に比べても炸薬量の多い75mm砲弾にとって、非常に適していた。

LSTから上陸する際に弾痕に落ちたり泥や川に足を取られる車両もあった。

1両の戦車と1歩兵分隊というチームにて相互支援を行った。
戦車はバンカーや特火点を潰し、歩兵は生い茂った密林や茂みに潜み戦車に取り付こうとする日本兵を見つけ排除した。
戦車の限定的な視界を補助する為にも歩兵は車体に乗り乗員に対し目標を示した。このような戦訓が後の車外通話装置となった。

戦闘は1944年に終わり、SWPAはこのままニューブリテン島の日本兵掃討を続けてもらいたかったが、貴重な上陸戦闘能力を持つ海兵隊は次の戦場に向かう為4月には撤収した。

その後

ニューブリテン島での戦闘後、第1海兵戦車大隊はペリリュー島攻略に投入され、その際はビックハッチ型のM4A2(75)を装備した。
その後沖縄戦に投入され、最終的には45年9月に北京に駐留、日本人の帰国と地域の安定化を図るが49年9月1日国共内戦の激化により、中国から撤退した。
因みにその際に中国に残されたM4A2は国民党が使用後人民解放軍に鹵獲され、その内一台は現在も砲身が無いまま現存している。

資料

web site

SHERMAN MINUTIA WEBSITE
http://the.shadock.free.fr/sherman_minutia/index.html
特にM4A1 Pacific Car&Foundryの頁
http://the.shadock.free.fr/sherman_minutia/manufacturer/m4a1pcf/m4a1_pcf.html

Tanks Encyclopedia
M4A2 Sherman (Chinese Service)
https://tanks-encyclopedia.com/ww2/china/m4a2-sherman-in-chinese-service/amp/

書籍

Raymon Giuliani
Sherman in the Pacific War, 1943-45
Histoire Et Collections 2015

Kurt Laughlin
Son of the Sherman Vol 1: the Sherman, Design and Development: A Complete and Illustrated Description of the U.S. M4 Sherman Tank Series in the Second World War (Son of Sherman)
Ampersand Publishing Company, Incorporated 2014

Eric Hammel
Marines on New Britain: Cape Gloucester and Rabaul. A Pictorial Record
Pacifica Military History 2013

Gordon L. Rottman
Osprey Battle Order 7
US Marine Corps Pacific Theater of Operations 1943-44
OSPREY Publishing 2004

Kenneth Estes
Osprey Warrior 92
US Marine Corps Tank Crewman 1941 45: Pacific
OSPREY Publishing 2004

Steven J. Zaloga
Osprey New Vanguard 186
US Marine Corps Tanks of World War II
OSPREY Publishing 2012

Kenneth E. Hunter
The War Against Japan (United States Army in World War II Pictorial Record)
Department of Defense 2006

稲田 美秋 遠藤 慧 三味 由起雄
Ground Power 014
特集 太平洋戦争の機甲部隊(2)
デルタ出版 1995

丹羽 和夫
Ground Power 220
特集 76mm砲シャーマン
ガリレオ出版 2012

協力
沼の会メンバーの方々

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?