洗い物の流儀〜双子の生活3〜

2023年12月26日 10:20

2023年12月26日

働かざる者食うべからず
どこかの誰かがそう言ったらしい。
この言葉の由来や意味に関心は特にないが、不安定な仕事や立場に身を置く我々のような人種にとって、関心の有無に関わらず意識することを強いられる。

積立NISAとか株とか投資とかFXとかビットコインとか家賃収入とか見ヶ〆料とかエトセトラ
そういうもので生計を立てる人々の暮らしは知らないが、我々は労働をしなければ賃金が発生しない。
仕事を休めば休むだけ首が締まり、豊かな老後から順番に未来の希望が途絶え始め、自己破産という聞きたくもない不穏な単語がひたひた迫り来る。

好きとか嫌いとかはいいトマトを食べるんだ

どこかの飛び級高校生のパパがそう言っていた。
好き嫌いじゃなく、生きるために働くしかない。
働けば生きていけるし飯は食える。
仕事から帰ってきたから飯を食おう。

俺とPNRAは夜勤従事者なので、朝ごはんは世間一般でいう晩ごはんの感覚である。

「いいなー、夜勤って昼遊べるもんなー、役所行けるもんなー、最悪コミケ行ってから出勤できるもんなー」

よく言われるが、いいわけないだろう。
お前達は仕事上がってクタクタ帰宅後の午後9時から、遊園地開くからって遊びに行って午前3時まで遊ぶか？？晩飯食ってから「ちょっと役所の手続き行ってくるわ」ってとなり町の役所行きたいか？？なんか混んでて2時間かかったりして午前1時とかになっても、怒らずに帰宅して仕事まで僅かな睡眠しか取れなくても一日に感謝できるか？？仕事上がりにそのままコミケ行って終わってからすぐ出勤できるか？？コミケに関しては少し考えたら地獄って分かるだろ、俺は実際仕方なくやった事あるけど地獄どころの騒ぎじゃねえぞ？？夜勤は遊びじゃねえんだぞコラ、寝てる時間に隣で爆音工事始まっても俺達はマイノリティなんだぞ。それらを受け入れて従事してるから俺達は文句ねえが事情も知らずに羨むならテメエあとd

さあ今日も労働がんばった！
おいしいごはんを作っていくぞ！
えいえいおー！

「丁寧な暮らしをしよう」

この新生活が始まった瞬間、兄であるPNRAはそう提案し、そしてスローガンになった。
怠惰な生活を改めよう、ゴミはゴミ箱に捨て、しっかり節電節水し、部屋は整理整頓し、お金をキチッと管理しよう……
性根の先端まで怠惰に侵された双子は可能な限り頑張った。当社比180％の丁寧さを実行していた。その自負はある。

洗い物。
食べた後に生まれるきちゃない食器をキレイキレイしてあげる、その行為だけはどうしても食後頑張れなかった。

ここにあるのは双子の弱さの象徴だ。だが同時に頑張ってもどうにもならない到達点でもある。
ならば胸を張ろうじゃないか。
洗い物は翌日の調理前にやる。
それが双子の洗い物の流儀だと。