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ガンギマリの予定や ~双子の生活18~

2024年1月12日

前日11日は弟である俺ひとりの休日で、キーボードや服を購入したり、実に有意義な一日を過ごすことができた。
だがまだ休みを満喫していない男がいる。兄のPNRAだ。
そんな兄が夜勤から帰ってくる直前、一本のLINEを投げてくる。

「俺は(帰ってからも)起きるつもりやで今日は」
「ガンギマリの予定や」

ガンギマリか……とてつもない気迫を感じる。
ガンギマリとなると今日は盛大に休日を味わうのであろう。ならば同じく休みの俺も付き合ってやろうではないか。地獄の果てのその先まで。


7:00 朝食と準備
まずは朝食。家で待機していた俺が洗い物と調理の大半を済ませていたので、サクっと食べることができた。

雑穀米・ベーコンエッグ・サラダ・味噌汁

実に健康的な朝食を済ませ、交互に風呂へ突撃する。
遊ぶためにも体の疲れはしっかりと取らなければならない。


9:50 池袋到着

軍資金調達

腹が減っては戦ができぬ
金がなくては遊びができぬ

給料直後でホカホカの銀行口座から資金調達。
これでどんな遊びが始まろうと戦えるはずだ。


10:00 パチンコ屋到着

21歳から26歳頃まで、双子はパチンコとパチスロを毎日のように打っていた。
元麻雀サークルの主幹であり学生麻雀連合の要職に携わっていたPNRAは、どのようなギャンブルに対しても本気で研究しながら取り組むため、毎日打ちながらも金銭的にはマイナスになることなく、むしろプラスを維持し続けた。
俺は3年ほど前からギャンブルにのめり込めなくなりほぼ引退していたが、今日に関しては話が違う。ガンギマリのPNRAが打つと言ってるんだから打つんだ。今日はそういう日だ。

パチスロ傷物語

楽園池袋店へ入店し、傷物語に並びで座る。
双子がスロットにハマったきっかけは5号機化物語であり、傷物語はその化物語のスペックを再現した機体。俺は初打ちだがなんの問題もない。化物語の打ち方なんて親の顔よりしっかり覚えている。PNRAの方を見る。目が血走っているのはガンギマリだからなのか単に夜勤明けだからなのか、俺には分からなかった。


ギュオーン
ギモヂィイ

3時間打ち込んで投資と回収はプラマイゼロ。
途中PNRAが苦戦したものの、ガンギマリの目と根性で中段チェリーを打ち込んで取り戻すことに成功した。徹夜麻雀を切り抜け続けた男だ。面構えが違う。

13:30 服を買う

なんか新しい服を買いたい。
そんなことを漠然と言い続けていたPNRA。買うならガンギマリの今でしょ、ということで楽園横のGUへそのまま突入した。目が血走っている。


フライデーみたいになった

カーディガンなんて似合わん、なんて言いながら家に無限にあるパーカーを買おうとしていたので必死で制止し、無理矢理カーディガンを買わせた。
さらに別店舗で服を数着購入し、同じ服を延々着回し続ける地獄の輪廻から脱出した。


こんなシネコン出来てたんだな……ん?屋上になんかあるぞ?

14:30 バッティングセンター

休日は終わらない。早く寝ろと信号を飛ばし続ける脳ミソを無視して、手当り次第面白そうなものへ飛びついていく。新しいシネコンの屋上にバッティングセンターを見つけた。もう歌舞伎町のクソ治安の悪いバッセンへ行かなくてもいいのか!?


地上80メートル。高すぎ

店員のニーチャンがひとり暇そうに店番をしている。貸し切りのバッティングセンターだ。ここは今から双子が占領させてもらう。目が血走っている。


ぽんぽん打ち返すPNRA

普段全く運動せず、俺より体重が15キロも重いPNRAがポンポン打ち返していく。それに対しバッセンを見つけたらとりあえず1打席は打っていく俺がろくにかすりもしない。
その理由は簡単だ。PNRAはガンギマリだからだ。

でも俺は2打席、PNRAは1打席で体が悲鳴を上げた。今年32歳。プロ野球選手ですら衰えが現れ始める年齢と考えれば当然かもしれない。


次は……こいつだな……

15:00 カラオケ突撃

まだまだ終わらない。終わりが全然見えてこない。
この休日の果てが一体どこにあるのかは分からないが、とりあえず腰を落ち着けようと手近なカラオケへ突撃した。腰を落ち着けるだけならそこのスタバでも椿屋珈琲でもなんでもいいはずだがカラオケへ突撃した。目が血走っている。


ソフトクリームあるドリンクバーって嬉しい

 入店してすぐPNRAはソフトクリームをモリモリ食べ、俺は喫煙所へ酸素補給しに行った。双子とはいえ細かいところに差が出てくる。


PNRAの第一選曲

PNRAは『ぼっち・ざ・ろっく!』にハマっている。
ギターを所有している俺はハマっていない。
ここにも差が表れる。今気づいたけどPNRAのうたスキアバターが俺のアカウントと同じだった。アバターも双子。


17:00 さらば池袋

2時間たっぷり歌い、いよいよすることがなくなった。
朝が軽めだったので胃が空腹を主張し始めている。であるならばメシだ。
この前行こうとして満席で諦めた、近所のちゃんこ屋へ行こう。そして酒を飲むんだ。目が血走っている。


PNRA「17時半から2名予約お願いします」


キンキン


タイのなめろう……?初耳だな……

串焼きと魚をメインに食べ進める。
双子は下戸……とまではいわないが酒にそこまで強くないため、ビールは一杯にとどめた。腹も八分目、さてそろそろ帰ろうk

PNRA「近くに良いバーがあんねん、そこ行こや」

その目は血走っていた。


18:30 ???

ちゃんこ屋からそこまで遠くないバーへ辿り着いたものの、臨時休業しているようだった。確かに不定休という話は聞いていたが、これは残念なのかラッキーなのか。
こうして強制的に休日はシャットダウンされ、セブンイレブンで締めのご飯を雑に買い、ようやく玄関扉に辿り着いたのだった。


ふたりともセブンの焼き豚骨ラーメン

はぁ……セブンのこれはいつでもうまいな。
でも味劣化したんちゃう?
――そうかなぁ、麺は変わった気がするけどな
まぁ十分にうまいわな
おぅ

ちびちび食べ進める。
PNRAの顔を見る。
焼きラーメンに胡麻をする顔は妙に優しげで。
その目はもう血走っていなかった。

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