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100円で何でも預かる「あずかりやさん」は人情派

「さとう」の暖簾がかかる店


こんぺいとう商店街の西の端、「さとう」の暖簾がかかる店。目が見えないけれど、一度来たお客さんの名前と声は絶対に忘れない店主「桐島さん」が営むのは「あずかりや」さん。時計が何回鳴ったで時間を確認し、1人で営業してます。お客は少なく、1日のほとんどをボランティアさんが持ってきてくれる点訳した本を読んで過ごしています。

紙切れ一枚でも生き物でも一律1日100円で返金不可。あずかり日数を店主に伝えておき、それを過ぎても取りに来ない場合は店主の物。どんな預かり物でも同じ条件、大事に保管する事が条件です。お客さんが預ける物に関して、理由や思い出等を店主から尋ねる事はありません。


あずかりもの


この作品は全て「品物目線」でつづられています。最初は店の「暖簾」、そして自転車、ガラスケースなど人間以外の視点で語られるのが特徴的です。1話だけお気に入りをご紹介。

「ミスター・クリスティ」
クリスティは職人気質な自転車屋の天井に飾られていた希少価値の高い高額自転車。ある日少年つよしと紳士がやってきて、クリスティを購入します。高校入学のお祝いに選んだのですが、つよしには母が安く購入してくれたママチャリがあるのです。そこでクリスティを「あずかりやさん」に預け、家からママチャリに乗って「あずかりやさん」でクリスティに乗り換える暮らしをします。顛末には触れませんが、この物語はクリスティが必要とされる人に渡る事で色々な経験をする感動物です。悲しみではなく、少し笑えるような自転車の気持ちが表現されています。


また読み返す小説

店と店主の雰囲気が、来るお客を饒舌にさせてしまい、色々な物語へと発展します。なんでも受け入れてくれそうな店主、つい持ち込んだ物の話をしてしまうお客、そして物の視点と上手に出来事やそれぞれの気持ち等を表しています。重くなり過ぎず、かといって軽く流れる話ではなく、しっかり「考える」シーンが盛り込まれています。読んでみると「そういえば昔大事にしてたな」という物を思い出し、つい実家や自宅を探してしまう作品です。


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