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『暑寒を制す』⑲「輻射熱」を制すれば熱を制することができる。ではその「輻射熱」はどうやって防げば効果が上がるのだろう。

一言で言うと「遮断しちゃいましょう」ということになります。それしかありません。

断熱じゃないですよ。でも、どうやって?

反射させてしまいます

電磁波は反射させてしまえば、ほとんどが熱に変わることなく飛び去ってしまいます。ちょうど光が鏡に反射して別の方向へ飛んでいってしまうのと同じです。

光は可視光線なので目に見えるのですが、電磁波の場合は可視光線ではないので目に見えませんが、ちゃんと反射する性質を持っています。

ただし、反射材の材質や設置方法にもよりますが、ほんの少しだけ通過する電磁波もあります。その場合は、物体にあたれば熱を発しますが、それほど大きな影響が出るほどの熱量ではありません。

こうしておおかたの電磁波を反射させてしまえば、大きな熱に変わることはありません。

この電磁波を反射させることで熱を室内に発生させない概念を「遮熱」とよんで「断熱」と明確に分けています。

断熱の「断」も遮熱の「遮」も、どちらも遮るという意味ですが、断熱の場合は熱を溜めることでそこから先へ伝えない、という技術です。

しかし溜める熱量には限度があり、その限度を超えると放熱を始めます。なので、断熱材は厚いものが効果が高いとされています。

一方遮熱は、そもそも熱を室内に入れない、というのが原点なので熱を溜めるという概念もなければ、もちろん熱を溜めるような仕組みも持ち合わせていない、というが大きな違いです。

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実際に断熱と遮熱、どちらが効果が高いのでしょうか。
これまでこのコラムをお読みいただいた方にはどちらが効果が高いかはおわかりだと思います。

では、数値的にはどうなのか、というとこれが単純に比較できないのです。


断熱効果の性能を簡単に説明すると、材質の片方から入った熱がもう片方に伝わるまでの時間が長い方が高性能である、です。

つまり、物体の表面あるいは外面から反対側の裏面もしくは内面に熱が伝わるスピードが遅いほど性能が高い、ということです。つまり伝わるのです。

なので、現実的には間に断熱材のような蓄熱素材をたくさん挟んで厚みを増した方が熱が反対側まで伝わるのに時間がかかるので、高性能な断熱材ということが言えるのです。

もちろん、壁材や断熱材の材質にも左右されますが。

一方、遮熱はどうかというと、事情がまったく違います。そもそも遮熱材は断熱材のような厚みを必要とはしないのです。

遮熱材の厚さは1mmにも満たない、薄い金属製のシートでできています。ちょうどアルミ箔のようなものですね。

このようなシートをたとえば屋根裏に敷き詰めることで電磁波を反射させてしまう、というのが原理です。

なのでシートの表面は熱を持ちますが、室内での発生熱は微々たるものなのです。

このようなアルミ箔は厚さがほとんどないので、伝導熱は瞬間的に伝わってしまいます。ですから断熱指数は限りなく低性能という結果しか出ないのです。

しかしここで見落とせないポイントがあるのですが、この測定方法はそもそも輻射熱のような熱を測定するものではなく、あくまで伝導熱を測定するものなのです。

つまり、アルミ箔は遮熱には優れているのですが、触れてしまうと瞬時に熱が伝わってしまうということで、そもそも断熱材と同じ土俵で比較するには無理があるのです。

実は、省エネ住宅の断熱度合いもこの断熱性能基準で判断します。そして、一定の基準を満たしていなければ省エネ住宅として認められないので助成金なども交付されないのです。

遮熱材はどんなに断熱効果に優れていても、数値的には瞬時に熱を伝えてしまう最低基準値しか出せないのですから。

このようなことが要因となって日本では遮熱が普及しないのですね。

そして、大手メーカーも断熱材しか扱っていないのもこの辺に理由がありそうですね。

次回からは、いよいよ遮熱技術を省エネに生かしていく考え方をご披露してきましょう。

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