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『暑寒を制す』⑮省エネ住宅にも採用されている「断熱材」、使い方を間違えると恐ろしい。「断熱材」を知ったら「蓄熱材」と言った方が適切な気がした。

極寒の冬。体の熱は低い方、つまり外へどんどん逃げていきます。

だから寒い。

寒くなる理由は、体が冷やされていると思っていたら、実際にはそうではなく熱がどんどんカラダから逃げていたからなんです。風でも吹こうものなら更に体温は奪われるのはこういう理由からだった。

放射冷却」という言葉を聞いたことがあるともいますが、正体は輻射熱です。輻射でどんどん熱が逃げていくので、結果的に熱源が冷却されると言うことです。

「底冷え」がまさに分かりやすい、実は身近な「放射冷却」だったんです。
たとえばキッチンなんかで底冷えがする、なんて昔はお母さんたちがいっていたもんです。

あれ、床下から冷たい空気が室内に侵入してきて、体が冷やされる現象だと思っていたんですが、実は逆だったんです。

つまり、温度の高い人体から温度の低い床下へとどんどん熱が逃げていたのです。つまり、放射ですね。輻射熱。

温度は低いところから高いところへとは移動しないんです。

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ところで、寒いときにはダウンジャケットが一番ですよね。ジャケットの中には細かい羽毛がたくさん入っていて、その隙間に暖かい空気を抱き込んで熱を逃がさない。こちらは断熱効果です。

羽毛は細かくて厚みがあるほど保温効果は高まります。羽毛布団も同じですよね。これは経験でご存じの方も多いはず。

つまり、中にたくさん暖かい空気を溜められれば、一緒に熱も溜められるので暖かい、ということです。

だけど溜めた熱はやがて外に逃げます。温度の低い方ところと接している面からどんどん。
つまり、体の外へと熱はどんどん逃げていきます。

建物の断熱材も同じです。厚みがあって空気をより多く蓄えられる、隙間がたくさんある断熱材が優れているのですが、限界を超えればダウンジャケットと同じように放熱を始めます

断熱材は断熱というより、蓄熱というほうが合っているのかもしれません。

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海外ではすこし事情が違います。極端に寒い地域や、極端に暑い地域では断熱材では役に立たないそうです。もちろん断熱も行いますが、そもそも英語だと断熱も遮熱も同じなんです。

なので遮熱とか断熱とか分けて考えることはなく、遮熱技術を使う方が多いそうです。両方とも熱を遮るという意味のことばですが、前者は説明したように蓄熱の要素が強く、後者は反射させて輻射熱の影響を及ぼさない、という考え方です。

断熱の考え方は熱そのものを一旦受け入れて遮断し、時間をかけて放熱するということです。一方遮熱は、最初から熱源である輻射を受け入れない、という考え方です。詳しくはもう少し後で掘り下げます。

日本では、省エネ住宅の基準になっていたりするので断熱材が主流になっています。住宅の壁には一定の断熱材が入っていることが要求されるのです。

決められた量が入っていなければ省エネ住宅としては認められません。そうすると助成金などの交付などにも影響するので、断熱が主流になっているのです。

次回はすこし温度のことについて考えてみたいと思います。

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