食べること。楽しいけど、難しい。

今となっては食べることにしか興味のない私だけれど、昔は給食の時間が嫌いだった。

なぜか緊張してしまって、食べ物が喉を通らなかった。

学校の給食は残さず食べることが美とされていたから、それがプレッシャーになっていたのかもしれない。
毎日「残していいですか」というものだから、先生もだんだん呆れ顔になってくる。
仕方ないから、私の給食は毎日ベランダに放られ、鳥の餌になっていた。

お腹がいっぱいなわけではないけれど、食べ物をスプーン半分くらいの少量口に入れただけでも、「食べたくない」という反応を起こす。
しばらく口の中で噛んで、自分の中で飲み込めるタイミングを探し、「今だ!」という時にようやくごっくんする。
飲み込む時にはもう、味のなくなったガムのようなものしか口の中に残っていない。

それだけちまちま食べていれば時間もかかるし、周りがどんどん片付けをしていく中で取り残されていく私。
食べられないのに食べなくてはいけない状況。
給食の時間が本当に苦だった。

あるときは、わざと床に落として食べるべきものを減らしたこともある。確かあれは「ちくわの磯辺揚げ」。
またあるときは、口の中に入れた食べ物を鼻をかむふりをしてティッシュに出したこともある。確かあれは「コーン入りソーセージ」。
デザートのムースだって、カップを洗いに行くふりをして、中身をトイレに流したこともある。

怒られるよりいいかな、と思ってしたことだけど、悪いことをした記憶は鮮明に覚えているものだ。
けしからん、けど、当時はどうしようもなかった。

今や給食の味がとても恋しい。
あの時に残した全ての給食を胃の中に入れて、無駄にしてしまった食べ物の記憶を抹消したいくらい。

校外学習でみんなでカレーをつくったときだって、おいしいんだけど食べられない。
「もったいなーい」と友達や先生に言われながら、ゴミ箱にカレーを捨てる。
ため息をつかれたこともあるけれど、私だって残したくて残していたわけじゃない。

どうしたらよかったのだろうか、と今考えても、答えはわからない。
でも、食べたいのに食べられない子が目の前にいたら、「無理しなくていいよ」といってあげたいな、と思う。

残したら怒られるかもしれない。
ため息をつかれるかもしれない。
嫌味を言われるかもしれない。

そんなことを考えながら食べていると、より食べることへの恐怖心が生まれてくるから。

ちょっとずつちょっとずつ食べられるようになって、
いつか今の私みたいに食べること大好き人間になるかもしれない。

食べるって、楽しいけど難しいよな。

昔の自分を思い出すと、本当にそう思う。

これでおいしいものを食べます🍴 ありがとうございます!