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『ママー!!!』

これは、子どもの力ってすごい、とシンプルに感動した話。


ただ、疲れていた。
8年前、息子を産んだ後、一人で赤ちゃんと向き合う生活になってから4ヵ月。

いわゆる「カンの強い」タイプだった息子は、一日中ほとんど抱っこをしていないと泣き叫ぶ人だった。

ちょっと寝たかな?と思って降ろしたら数分で泣く。ベランダで洗濯物を干すわずか数分でも、顔が見えないと泣く。人一倍ミルクを飲むので、哺乳瓶が空になるともっとよこせと泣く。

「黄昏泣き」と言われる夕方のぐずりも激しくて、毎日2時間抱っこしてあやさなくてはいけない。

そんな生活が長く続き、私は息子を抱いて床にうずくまり、何もできない時間が増えた。そして、脳内で何故か育児川柳をひねっていた。

あかちゃんは どうして泣きやま ないのかな

とか…。思い起こしたら、かなり怖い光景だ(笑)。


そんな息子もいまや8歳。スクスク育って重くなり、今では抱っこも難しい。だがそんな彼について、最近気づいたことがある。

それは、音をたてること。

机をトントン叩いたり、手をパチパチ叩いたり。どうも、私が仕事や家事に集中し、「注意が自分にない」と感じたタイミングに、無意識にやっているようなのだ。

「こっちを見て」という合図なのか、、と思って都度仕事や家事を中断し、息子と向き合うようにしている。だが、頭の中でまだ書きかけの原稿の続きを考えていたりすると、たちまち見抜かれる。

その後もトントンが続いたり、長い長いクイズタイムが始まったりするのだ。

一瞬でも全てを忘れて彼に全身全霊で向き合うと、納得してくれるのか、音はおさまる。その線引きがいつも的確で、第六感的な力には驚くばかりだ。



そんな力からふと思いだしたのが、生後4ヶ月の頃の息子のことだ。あの頃、疲れ果ててうずくまる私を見て、「これはヤバイ、、」と思ったのか。

彼は、突然言った。

ママー!!!

と。ものすごくハッキリと。


生後4ヶ月の赤ちゃんって、こんなにハッキリ喋るものだろうか、、?と私は耳を疑ったが、その後も何回も言われたので、間違いでは無かった。
彼の生き物としての本能が、専属お世話係(?)の危機を感じ取り、彼を喋らせたのかも、、という気がしている。

なぜならその後も息子はどんどん言葉を覚えていき、意思疎通ができるようになった育児は、俄然ラクに、楽しくなっていったからだ。
途方にくれてうずくまることもなくなった。

息子さまさまである。

頼りがいのない親で大変申し訳ないのだが、うちの子育ては、そうやって助けたり、助けられたり、また助けられたりしながら、ちょっとずつ進めばいいと思っている。

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