見出し画像

【今日コレ受けvol.107】ちりめんじゃこの小蛸

7時に更新、24時間で消えてしまうショートエッセイ「CORECOLOR編集長 さとゆみの今日もコレカラ」を読んで、「朝ドラ受け」のようにそれぞれが自由に書くマガジン【今日コレ受け】に参加しています。

道案内が苦手だ。

なかでも「梅田ダンジョン」と揶揄される大阪・梅田の街は、
阪急梅田駅、阪神梅田駅、JR大阪駅、大阪メトロ梅田駅、東梅田駅、西梅田を結ぶ地下街が77,000㎡も広がっている。
地下の広さで言えば新宿駅が一番だそうだが、おそらく「全部つながっている」のは梅田だけではないだろうか。

この梅田ダンジョン。
行き先によって、地下を通ったほうが近い場合と、使わずに地上を通ったほうが近い場合。さらに、両方を駆使したほうが便利なときもある。
ときどき、ここに立体交差点という飛び道具も加わったりする。

私は生粋の関西人で、梅田は“庭”と言ってもいい。

だが、ルートを人に聞かれて説明するのはかなり難しい。
理由のひとつは東西南北の感覚が弱いこと、もうひとつは、地下などへの出入り口の番号を、ほとんど覚えていないことではないかと推測する。

だから道を聞かれたら、急いでない限り、分かりやすいところまでお連れすることが多い。親切なのではない。説明ができないのです。


ただ、このほんの数分、交わすおしゃべりが好きだ。
遠方から来た知人や友人、日本人観光客、インバウンド……。高齢の方には地元っ子だけれど迷っている方も結構いらっしゃる。

長くても5分程度だから話し込むことはないのだけれど、だからこそ、「込み入った話」でもなく「世間話」でもない、絶妙な話題が浮上することが多い。「案内小話」とでも呼ぶべきもの?

昨年の冬は東北から来たというおばあさんが、「コロナが明けて久しぶりに娘に会いにきたんです」と、お土産が入った風呂敷を抱えていらっしゃった。

かれこれ4年は会っていないそうで、
「再会が楽しみで、楽しみで」と、ちょっと涙ぐまれたため、つられてホロリ。おじいさんは足が悪いため来れなかったそうが、孫がLINE電話でつないでくれる予定らしい。

東梅田駅で別れてからシェアラウンジまで、再会シーンを思い描いてほっこり。案内したつもりが、こちらが幸せな気持ちをもらった。
これって、作った料理を「おいしい」と褒められたときの感覚に似ている。


そうか。原稿に詰まったら、こうやって梅田を歩いたらいいのかもしれない。そうすれば幸せな気分転換になって、お互いウィンウイン。
原稿もはかどるかもしれない?

……いや、いつも声をかけられるとは限らない。
「道案内します」とか、タスキをするのも知り合いに遭ったら恥ずかしいし……。

それに、道案内を待ちつつブラブラする自分を想像してみたら、ちょっと怖い。得られるほっこりも半減しそうな気がした。
うん。。きっと、たまたまだからいいのよね。。


雨上がりに虹をみつけるように。
ちりめんじゃこに、小蛸をみつけたときのように。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?