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マスコミ その5

マスコミ その5
 
数日後の夕食時、久しぶりに佐橋も含めて家族全員でテーブルを囲んだ。
妻が口火を切る。
「そう言う立派な意見を言えるようになったのは、誰のおかげ?
お父さんが頑張ったおかげじゃないの?
あなた達の指摘はもっともだと思うわ。
だけどね、だから日本は世界一住みやすい国、訪ねてみたい国になってるんじゃない?
過ぎたるは及ばざるが如し
って言葉があるけど、お父さんも常々反省してると思うわ。
少し左に寄っていたことは、お父さんが一番よく分かっているのよね。お父さん?」
 
「お母さんがお父さんを擁護したい気持ちは分かるよ。
しかし、違うな。
偏らない正しい報道をすれば、国民には自浄能力があるんだ。
世論を誘導しようなどと大それた妄想を持たずに、可能な限り客観的かつ中道的な情報提供に徹していれば、紙媒体だけではなく支持者は増えていたと思うよ。」

「私もそう思うわ」と娘。

佐橋は意見を差しはさむ気になれなかった。
「大それた妄想か・・・」

「自分の人生は何だったんだ・・・
欲に溺れただけだった・・・
金はいくらでもある。しかし、それが何だと言うんだ・・・
自分の人生は、それだけだった・・・
いや違う、日本という国家を貶めることだった。
全てをぶちまけて、自分の最大の武器である報道で国を救うか・・・
今更、出来るわけない・・・ 」
と胸の中で呟く・・・
 

 

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