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光明 第6章

第6章
邂逅

カチンスキは、その恐るべき行動力と、国家の力押しでミランダを保護した。
やはり、「帰りたい・・・」とミランダは言う。
「エミリ、この子を連れてタンザニアに行くことにしよう」
「はい、母にはもう了解をもらっています」
カチンスキは、喜び勇んで旅行の手配をするエミリの横顔をぼんやりと眺めている。
この子は研究一辺倒の学者ではないんだ・・・
ふと、エミリが髪をかきあげた時、首筋に目が行く・・・ホクロ。
「先生、手配出来ました。出発は三日後です!」
「そうか、わかった」
「ところでエミリ、お母さんの名前はなんていったかな」
「どうしたんですか先生、急に・・・」
「マリコ、鞠子ですけど・・・」
カチンスキ、思わす息をのむ。
「君のお父さんは?」
「先生、私の履歴者を精査してハンティングして頂いたんじゃないですか?」
「私のパパは天国で神様のお手伝いをしているそうです」
と言って明るく笑う。
鞠子から妊娠したという話は全く聞いていなかった。
「あなたは、研究一筋に生きてください」
そう言い残して、カチンスキの前から姿を消した。

それから、三十数年が経ち、この邂逅である。
エミリ、ミランダ、カチンスキは何か見えない力の存在を意識せざるを得ないのである。


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