わが青春想い出の記 4 おてんば娘

 自分が佐々岡を訪ねるようになったのは、彼に柔道を教えてもらっていると言うこともあるが、自分が校内弁論大会で発表する原稿の添削をお願したら、随分厚意を持った批評をもらい、その上暇なとき遊びに来ないかと手紙まで送ってきたからだ。
それで自分は喜んで、同時にいく分恐る恐る訪問したのが始まりだった。
逢えば気楽な男だった。今でも自分は佐々岡のことは佐々岡さんと言っているが、気持ちの上では当時からすっかり友達のような気になり、平気で生意気なことも言える仲になっていた。この位気のおけない何でも分かってもらえる友達にはめったに会えるものではないと自分は喜んでいる。

 ある日、佐々岡を訪ね道場へ行くと、五~六人の女子高校生が道場で遊んでいた。当初はさほど気にしなかったが、あまりにも騒々しいので一寸その方を見ると、二人の学生が逆立ちの競争をしているのだ。一人の方が勝って皆から喝采を受けていたかと思うと、今度はデングリ返りして皆を笑わせている。
「しょうがない奴だ」
と、佐々岡が言った。
何を言っているのか、その時、自分にはわからなかった。
たが、オテンバな女学生もいるものだと思った。


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