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【蠅のマークの便器~ビヘイビアデザインを学ぶ】慶應義塾大学環境情報学部小論文対策

今日から、慶應義塾大学環境情報学部小論文対策で使えるヒントとなる情報を小出しにしていきます。

まずは、2016年度の問題の一部を抜粋します。

(1)問題

E.グリ一ンズ編、ソーシャルデザイン―社会をつくる
グッドアイデア集、朝日出版社、2012.pp.56―60(一部編集・改変)

①スピード違反は、法定速度を超えて運転することなので、それだけでも立派な犯罪行為ですし、そのせいで交通事故が増加する大きな要因のひとつです。そんなスピード違反をゼロにするために、スウェーデンが大胆な試みを始めました。それはなんと違反者に罰金を払わせるだけでなく、逆に制限速度を守って運転した人に宝くじが当たるという前代未間の制度です。

②日頃からマジメに法定速度を守って運転している人にとってはなんともうらやましくなるようなこの制度ですが、アイデアはいたってシンプルです。スピード違反を取り締まるために、まずは道路に設置したカメラで違反者の写真を撮ります。これは日本でも高速道路などで実際に行われていることですから、何も珍しいことではありません。しかし、この制度では同時に、制限速度を守って走った車の写真も撮ります。

③後日、スピード違反を犯したドライバーには違反切符を、制限速度を守ったドライバーには宝くじの当たり券が送られるのです。宝くじの賞金は、スピード違反の罰金から支払われることになっています。罰金を賞金に充てているところに、なるほど! と思わず膝を打ちたくなります。罰を与えるというムチではなく、宝くじに当たるというアメを使った、素晴らしい逆転の発想と言えるでしょう。
④ この「Speed Camera Lottery(スピード・カメラ・ロッタリ一)」という安全運転宝くじ制度は、フォルクスワ一ゲンが主催している「The Fun Theory=(楽しい理論)」で賞を取ったアイデアです。「The Fun Theory」とは、環境に対する人々の意識や行動を変えるアイデアを募集しているキャンペ一ンです。人間の行動を変えるためには、「楽しい」と思わせることが大事だというコンセプトに基づいています。

⑤アメリカ人のケヴィン・リチャードソンさんが応募したこのアイデアは、受賞しただけでなく、スウェーデンの国立道路安全協会にも正式に採用され、実際にストックホルムで試験的に導入されました。その結果、24000台の車を対象にしたうち、3日間でなんと22%も平均速度が下がったそうです。

⑥ この制度について、ストックホルムのドライバーに感想を聞いてみると、「法定速度を守るようになるし、宝くじは当たるし、パーフェクトだね!」というポジティブな反応もあれば、「いつもスピードは守って走っているけど、本当に宝くじが当たるのかは怪しいものだね」という懐疑的なものもありました。ですが、恒常的にこの制度が導入されて、実際に周りに宝くじの当選者が出たり、人づてに当選した人の話を聞いたりすれば、おそらく懐疑的なムードは消えて、より積極的に法定速度を守る人が増えるでしょう。「楽しい!」という気持ちは、人びとの行動を変えるパワーを持っています。しかも、一人ひとりに「自主的に」行動を変えさせる力があります。罰を与えられるから止めるというネガティブな「リアクション」よりも、宝くじが当たるかもしれないからやるというポジティブな「アクション」のほうが、自ら進んで行動もするし、継続もしやすいはずです。

⑦この制度を導入したおかげで、スピード違反を犯す人が本当にゼロになったら誰も宝くじに当たらなくなるのでは? と思った人もいるかもしれません。しかし、目的は最初からスピード違反ゼロなのですから、それでいいのです。(的野裕子)

F.横井軍平、決定版・ゲ一ムの神様横井軍平のことば ものつくりのイノベ一ション「枯れた技術の水平思考」とは何かフの序文「いま横井軍平が必要だ」草彅洋平、スペ一スシャワ一ネットワ一ク、2012.pp.16-21(一部編集・改変)

問1 資料AからGについて、どんなモノやコトの登場により、生活や人の意識など、何が変化したかをそれぞれ1行で簡潔に答えてください。

(2)考え方

参考文Eのような考え方に基づく環境デザインを「ビヘイビアデザイン(行動デザイン)」といいます。

人間の行動をコントロールするのに、恐怖や罰則ではなく、楽しさや好奇心に働きかけるというものです。

私は子どもの頃から、「勉強しないと将来こんなヒドイことになるぞ」と周囲から脅かされながら勉強をさせられてきました。

小・中の義務教育では、遅生まれで未熟な私は勉強でも運動でも同級生についていくのがやっとで、みなに置いていかれて自分ひとりが取り残されてしまうという恐怖と不安が動機で勉強していました。

これは、正しい知の在り方とはいえません。

「勉強は楽しい」「学ぶことは喜びだ」という純粋な知的好奇心で学ぶのが本来の学びの本質です。

しかし、残念ながら私が習った教師は知的な人はいませんでした(私の能力から、バカ学校にしか行けなかったからですが)。

そして、現在、予備校で教えている私の周囲も「学校のお勉強や受験勉強」はできるけれど、世間のことには疎く、知的な魅力を感じさせる人はあまり多くいません。

そんな不満が私を小論文に向かわせたのでした。

ともあれ、今回はこのビヘイビアデザイン(行動デザイン)を紹介します。

詳細は以下のサイトを参照いただければと思います。


(3)解答例

このような取り組みは私たちの生活を快適で安全なものに私たちの社会を変えている。

(4)解説

参考文のような設計思想をビヘイビアデザイン(行動デザイン)と言い、歩行者を上りたいと動機付ける、ピアノの鍵盤を模した階段や、男子トイレの小便器に描かれたハエの絵を利用者が標的にさせるように仕向け、結果的にトイレをきれいに使わせて、掃除の手間やコストの削減につながる効果を持たせる試みなど、わたしたちの身近に「楽しさ」を人間の行動原理とした環境デザインが増えている。

解答例に挙げた例以外に、健康増進(ピアノの階段)や、衛生を保ち、省力化(蠅のマークのトイレ)という方向にもビヘイビアデザインは貢献している。

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