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「美術作品の空間表現」信州大学教育学部入学者選抜試験平成29年度

(1)問題



設問 1‐1:図 1 について、200 字以内で説明しなさい。
 
設問 1‐2:図 2 と図 3 を比較し、それぞれの空間表現の特徴について、400 字以内で述べなさい。

図 1  クロード・モネ《印象、日の出》

図2 マインデルト・ホッベマ《ミッデルハルニスの並木道》

図3 東山魁夷 《黄山雨過》

(2)解答例

 

設問1

印象派の名前の由来ともなった作品。朝もやの中で光に染められる空と海。前景には小舟、後景には高いマストを持つ大型の船が描かれている。水平線をあえて上に置くことで、海面に反射した光の微細なゆらぎを表現している。絵の具をパレットの上で混ぜずにそのままカンヴァスに置く筆触(ひっしょく)分割(ぶんかつ)の技法で描かれている。素早く筆を動かし時間の経過とともに移ろいゆく自然光を即座に捉えるためにラフな筆致を用いているところが特徴的である。

 

設問2

 図2は、画面中央の一本道を中心としてシンメトリーな画面構成をとっている。消失点を中央下部に配置する1点透視図法を用いている。ひたすら写実に徹し、クリアーに風景全体を丁寧に描いている。空と大地の比率を2対1とし、空高く伸びるポプラの縦線と水平線が垂直にクロスするように配置して統一感を持った幾何学的な空間構成にしている。
 図3は図2と対照的にあえて左右対称の破れを用いている。背後の山塊の、左上から右下への稜線をぼかす描法に対し、手前の山肌を比較的リアルに描き右上から左下へ斜めに空間を裁断している。図2とは異なり、斜めにクロスする線によって画面に緊張感や距離感を持たせている。図2は木の頂点までしっかりと描き、完結した世界を現出しているが、図3は左の山塊の頂上部を大胆に切り取ったり、霞で山肌を隠したりすることで、作品に未完の美を創出し、鑑賞者の想像力に委ねる仕掛けを施しているところに特徴がある。(399字)

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