井の頭公園の散歩(19)井の頭自然文化園開園に協力した小学5年生たち
井の頭自然文化園は、戦時中にもかかわらずなんとか開園にこぎ着けましたが、その開園に小学5年生の活躍がありました。
須田孫七さん(昭和6年生まれ/故人)は、病弱だった幼少期を過ごし、「その後、病気も徐々に治まり、小学生の頃には石神井の昆虫学者加藤正世先生が開いている昆虫の同好会に入っていました。そのとき聞いたのが、今度開園する井の頭自然文化園の中に資料館が出来るという話です。
実は、加藤先生は東京府から資料館の展示を任されていたのです。自然文化園の開園は、太平洋戦争が始まって半年後ということもあって、標本類が集まらなかったのでしょうね。そこで、小学5年生だけど、100箱以上の標本を持っていた僕が目をつけられた(笑)。病気だった僕は遠方にはいけないから近場の昆虫だけです。それも良かった。園の方針は東京の昆虫展示ですから、ぴったりの標本だったのです。それでも足りなかったから、今度はクラスメイトの標本とか、もっと採集しようということになったのですよ。 これには訳があるのです。僕の桃井第二国民学校5年2組の担任は西沢二郎先生といって、理科教育に熱心な青年教師で、加藤先生や後に自然文化園の園長となる木村四郎さんとも知り合いで、良い資料館を作りたいという思いに賛同していたのですね。それが、5年2組の協力につながったのです。
そんなわけで、自然文化園の資料館は5月17日の開園に間に合わず10月3日に開館したのですが、開館にこぎつけた陰には小学5年生が標本を提供したり、採集した協力があったということなのです」(『いのきちさん』4号抜粋2012年5・6月号)と語ってくれました。
「ぶんしん出版+ことこと舎便りVol.19 2022/12/15」掲載
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?