あのこ

だれかの感性を、あの子の感性を、羨ましいっておもうことほど惨めなことはないよ。唯一のじぶんの個性を、自らグーパンして、血まみれになるまで殴っているみたいな気分。この感情を書いているこの文字でさえ、あの子には到底及ばないのだから。わたしは、あの子が聴いている音楽を聴いて、あの子がよく食べるものを食べて、あの子と同じように腕を切って、あの子と同じように「さっさと死ねばいい」って言われて、あの子と同じように地球を恨んでも、わたしはあの子になれない。なりたいのに。こんなにも、心酔しているのに。あなたが書く文章は全部スクショして、あなたが共有してくれる音楽は全部プレイリストに入れて、だれも起きていないような時間帯にだけなにしてる?って送ってこられてもすぐ返信できるようにして、なのに。なのにわたしはこれっぽっちも見てもらえてない。二番目?三番目?四番目?それ以下?わからないけど。あの子になれないことも、あの子の感性を羨ましいとおもうことも、あの子の一番になれないことも、一番愛情を注がれないことも、全部がいやだ。化膿していくよ、だんだん。日常を、あの日開けたけど上手く安定しなかったピアスホールをぎゅってつまんで膿を出すみたいにすると、そこらじゅうから消化しきれなかった感情や、隠そうとして隠しきれなかった言葉が、どんどんどんどん湧いてきて、ぷかぷか浮いてくる。それをひろってまるめて、きみに投げつけられればよかったのにな。きみもわたしも、ずっともっと、大丈夫だったらよかったのにな。

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