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少女の憧れが詰まったマーメイドファンタジー日本上陸!【編地直送!♯3】

わたしはエミリ、12 歳。プールに入ったことがない以外は、どこにでもいる、ふっつ~の女の子。……だと思ってた。あの日、海にとびこむまでは。

世界中で翻訳され、シリーズ累計500 万部突破!NYタイムズのベストセラーリストにも選ばれた、人気爆発中のマーメイド・ストーリー。

編集者:森彩子(書籍編集者)
聞き手:中西亮(出版マーケティング部)

マーメイドになる少女の冒険物語

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(中西)
いやぁ~!面白かったです!30手前の大人ですが、ぐいぐい読んでしまいました(笑)まず簡単にあらすじをお願いします。

(森)
これは英国を舞台とした、エミリという12歳の女の子の冒険物語です。エミリは、どこにでもいる普通の中学1年生。友達作りも苦手で、どちらかというと目立たないタイプです。港に浮かぶヨットの上で、お母さんと二人暮らしをしているんですが、生まれてから一度も海の中に入ったことがありません。

(中西)
お母さんが、水をとても怖がっているからですよね。

(森)
そう。でもある日、中学校のプールの授業で、ついに水に入ります。すると、なんだか足がおかしくなる。「なにこれ!?」とびっくりしたエミリ。怯えるものの、その不思議な感覚が忘れられず、その夜に決心をして一人で海に飛び込みます。そうしたら、足が尾びれに!なんと、エミリはまさかの人魚だったんです!

(中西)
怒涛の展開!

(森)
人魚になったエミリは、心と身体が解き放たれ、「これが本当の自分だ」という実感を得ます。勇気を出して一歩踏み出したことで、エミリは自分の居場所を見つけ出すのです。そこから、波乱万丈のエミリの冒険が始まります。

イラストやタイトルに込めた編集の工夫

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(中西)
めちゃくちゃワクワクしますね。この物語をどのように発掘したのですか。

(森)
翻訳出版のエージェントとのミーティングで紹介された、イギリスの出版社のパンフレットで見つけました。そこには、「The world’s must-read mermaid series for readers aged 8+(8歳以上必読の人魚シリーズ)」とあり、世界で累計500万部売れていると書いてありました。それで、「これは絶対買わなきゃいけないシリーズだ!」とビビっときたんです。イギリスの作家、リズ・ケスラーさんの作品で2003年に1巻が出て、最新作の9巻が2020年に出ていて、17年もの間ずっと読者が付いているんです。これは、間違いなく面白いお話なんだと思いました。

(中西)
日本版を作るにあたり、工夫した点は?

(森)
原書はテキストだけなんですが、日本語版ではイラストをたくさん盛り込みました。可愛い絵を描いてくださったのが、カタノトモコさん。小学生の女の子に大人気のイラストレーターさんです。また、8歳から読んでもらえるように、小3以上で習う漢字にはルビをふりました。

(中西)
「人魚」は、女の子に人気のテーマなんですか?

(森)
はい。根強い人気があります。前に勤めていた出版社で、小学校低学年向けの人魚シリーズを編集したことがあるんですが、沢山の読者ハガキをいただき、とても手応えがありました。女の子に大人気のプリキュアシリーズの最新作でも、人魚のキャラクターが登場するなど、人魚熱は高まっています。私自身、子供のころから人魚になりたくて、熱海へ旅行にいったときも、「この海にも人魚が住んでるかな?イルカと友達になれるかな?」と思っていました(笑)

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(中西)
表紙のエミリをよく見ると、人間の足と尾びれが両方描かれています。これ、面白いですね。

(森)
そうなんですよ!これは、カタノトモコさんの発明です!両方同時に描いてあるのは、見たことがないです。リアルな鱗を描くと生々しいので、この尾びれはレースのドレスになっています。エミリの後ろの背景は、海の中にある女の子の部屋になっています。これは、普通の女の子の世界と人魚の世界の重なりを表現しています。

(中西)
『エミリときどきマーメイド』というタイトルも素敵ですよね。

(森)
私は児童書を編集する中で、タイトルに名前を入れることを大事にしてきました。文響社の本では、『名探偵テスとミナ』『たまごの魔法屋トワ』なども、主人公の名前がタイトルに入っています。名前が入ると主人公への親近感が湧き、自分の世界と物語の世界の境界線が溶ける感じがすると思っています。「エミリー」と伸ばしてもよかったんですが、親しみを持ってもらうために、訳者の田中亜希子さんとも相談して、日本人の名前にもある「エミリ」にしました。

子どもの読書は、一生自分の味方になる

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(中西)
子どものとき、本屋さんに行くのってワクワクしましたよね!

(森)
本当にそうでした!子どもにとって、本を買うのは特別な行為ですよね。私も小さい頃は、本屋さんに連れていってもらう度に、めっちゃ選びました。母と買いに行ったら堅い文庫本になるけど、祖母と行ったら漫画っぽいのも買ってもらえたり(笑)

(中西)
森さんは、教育書として本を作っていますか?

(森)
私自身は、児童書はエンターテインメントだと思って作っています。まるで学芸会を主催するような気分です。「楽しかった!」「おもしろかった!」の先で、読者が自由に感じることが、結果的に学びにつながっていくのかなと。本の世界に夢中で浸っていると、物語が現実の世界にはみ出してくるような感覚を覚えるときがあるんです。子どもの頃のそんな特別な読書体験は、きっと辛い時にも自分の味方になってくれると思います。

(中西)
最後に、この物語を一言で表してください。

(森)
これは、「女の子が勇気を出す物語」です。それは、自分のための勇気でもあるし、愛するパパとママのための勇気でもあります。エミリは、普段はぐじぐじしていても、いざという時に立ち上がれる強さを持っています。その姿に、読んでいて何度も胸が熱くなります。そして、彼女の勇気は、本当の自分を知るためには、自分から新しい世界に飛び込まないとダメだということを教えてくれます。ぜひ、書店でエミリと出会ってください。

(中西)
本日は、ありがとうございました。

編集者プロフィール

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森彩子(もりあやこ)
東京都出身。新卒で児童書出版社のポプラ社に入社し、情報システム部を経て児童書編集部勤務に。小学生向けの読み物シリーズを中心に、YA、絵本、音の出る本、キャラクター本などの編集に携わる。2018年に文響社へ転職。文響社での主な担当書籍は「名探偵テスとミナ」シリーズ、「たまごの魔法屋トワ」シリーズ、『+1cmLOVE たった1cmの差であなたの愛はがらりと変わる』『12歳のスタイルブック はじめてのおしゃれレッスン』『だっしゅつせよ!ゾンビタウン』など。子どもたちにとって「読書の扉」になるような本を作りたい。

企画・執筆:出版マーケティング部 中西亮
ビジュアルデザイン:同部 にしくらみお