長江貴士

これまで4000冊近くの本を読んできました。 「文庫X」とか「帯1グランプリ」とかやり…

長江貴士

これまで4000冊近くの本を読んできました。 「文庫X」とか「帯1グランプリ」とかやりました。 『書店員X』(中央公論新社)とか『このままなんとなく、あとウン十年も生きるなんて マジ絶望』(秀和システム)とか著作があります。 なるべく、フラフラと適当に緩やかに生きていきたいです。

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<プロフィール>【オススメ本リスト】のリスト <索引>【本】感想・レビュー・解説 <索引>【映画】感想・レビュー・解説 <索引>【思考の断片・思索の途中・価値観の…

長江貴士
4年前
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【映画】「人間の境界」感想・レビュー・解説

いやー、ホントに、これは凄まじかった。その凄まじさを説明するためにまず、公式HPに書かれている「ポーランド政府からの映画上映の妨害」について触れておこう。 「ポー…

長江貴士
2日前
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【映画】「ペナルティループ」感想・レビュー・解説

なるほどなぁ。「ループものの物語」はもう出尽くしたかと思っていたが、ちょっと前にも『MONDAYS』や『リバー、流れないでよ』など、新機軸のループものの物語が出てきて…

長江貴士
3日前
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【映画】「悪は存在しない」感想・レビュー・解説

「さっきの話なんですけど」 「うん」 「野生の鹿って、人を襲うんですか?」 「襲わない」 「でも時々、奈良の鹿が人を襲ったとかってニュースになってたりしますよね」 …

長江貴士
4日前
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【映画】「システム・クラッシャー」感想・レビュー・解説

本作は、衝動を抑えきれず大暴れしてしまう9歳の少女ベニーを描く物語である。しかしまず僕は、映画で描かれている国(たぶんドイツ)の福祉制度に驚かされてしまった。 …

長江貴士
5日前
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【映画】「エドガルド・モルターラ ある少年の数奇な運命」感想・レビュー・解説

ホントに、イカれた話だった。これが実話だっていうんだから、やっぱり僕の「宗教嫌い」はあながち間違ってないなぁ、と思う。 以前、大学時代の友人と、こんなような話を…

長江貴士
6日前

【映画】「正義の行方」感想・レビュー・解説

いやー、これは実に興味深い作品だった。 「飯塚事件」のことを知ったのは恐らく、『殺人犯はそこにいる』を読んだ時だったと思う。著者の清水潔の尽力のお陰もあって再審…

長江貴士
7日前
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【映画】「死刑台のメロディ 4K リマスター・英語版」感想・レビュー・解説

さて、4Kリマスター版で劇場公開されていた本作を観ようと考えた理由はただ1つ。エンリオ・モリコーネである。 エンリオ・モリコーネのことは、割と最近知った。『モリコ…

長江貴士
11日前
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【映画】「マンティコア 怪物」感想・レビュー・解説

いや、これは何とも重苦しい物語だった。「ある要素」さえ描かれなければ、「よくある恋愛物語」にしか思えないような展開なのだが、「ある要素」が含まれることによって、…

長江貴士
2週間前
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【映画】「毒娘」感想・レビュー・解説

いやー、これは面白かった!思ってたような話じゃなかった、というか、別にどういう物語なのかイメージしてたわけではないのだが、にしても、全然思ってもみなかった物語で…

長江貴士
2週間前
5

【映画】「No.10」感想・レビュー・解説

いやーーーー、凄かった!まさかこんな話とは。物語の中盤ぐらいでいきなり「およよ!」みたいな展開になるのが凄まじい。しかも、そんな「およよ!」的な展開なのに、それ…

長江貴士
2週間前
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【映画】「コール・ジェーン 女性たちの秘密の電話」感想・レビュー・解説

いやー、凄い物語だった。そして、こういう物語に触れる度、僕自身も男ではあるが、「男が作った社会」のクソさに嫌気が差す。ホントに、「男」という種族は碌でもない。 …

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2週間前
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【映画】「霧の淵」感想・レビュー・解説

うーーーーん、って感じだったなぁ。 僕はやはり、映画(に限らず物語)には「ストーリー展開」を求めてしまう。時々、「何も起こらないのにメチャクチャ面白い」みたいな…

長江貴士
2週間前
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【映画】「日日芸術」感想・レビュー・解説

(東京にお住みの方、新宿K’s cinemaでの上映は4/26(金)までなので、興味がある方はお早めに) いやー、面白かった!まったく想像もしていなかった作品でビックリした…

長江貴士
2週間前
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【映画】「ナチ刑法175条」感想・レビュー・解説

僕が「刑法175条」という法律の存在を知ったのは、少し前に観た映画『大いなる自由』でのことだった。驚いた。ドイツでは長らく「男性の同性愛」が刑事犯罪だったからだ。1…

長江貴士
3週間前
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【映画】「フォロウィング」感想・レビュー・解説

いやー、凄かったなぁ。びっくりした。なにせ、物語の途中まで「ストーリーがまったく分からなかった」からだ。 この「分からなかった」というのは、ミステリ的な意味での…

長江貴士
3週間前
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<索引>【オススメ本リストのリスト】【映画 感想・レビュー・解説】【本 感想・レビュー・解説】【思考の断片・思索の途中・価値観の表出】【乃木坂46メンバーのまとめ】

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【映画】「人間の境界」感想・レビュー・解説

いやー、ホントに、これは凄まじかった。その凄まじさを説明するためにまず、公式HPに書かれている「ポーランド政府からの映画上映の妨害」について触れておこう。

「ポーランドの凄まじい現実」を暴き出した本作に、ポーランド政府は激しく反応し、本作を上映する劇場に、上映前に「この映画は事実と異なる」という政府作成のPR動画を流すように、と通達を出したそうだ。しかし、ほとんどの独立系映画館がその命令を拒否し

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【映画】「ペナルティループ」感想・レビュー・解説

なるほどなぁ。「ループものの物語」はもう出尽くしたかと思っていたが、ちょっと前にも『MONDAYS』や『リバー、流れないでよ』など、新機軸のループものの物語が出てきている。そして本作もまた、少し変わった形でループが描かれる作品と言えるだろう。

さて、僕はこんな映画が公開されていることをまったく知らず、映画館のトイレに貼ってあった写真みたいなのでこの映画の存在を知った。そして、その程度の情報だけで

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【映画】「悪は存在しない」感想・レビュー・解説

「さっきの話なんですけど」
「うん」
「野生の鹿って、人を襲うんですか?」
「襲わない」
「でも時々、奈良の鹿が人を襲ったとかってニュースになってたりしますよね」
「あれは人に慣れすぎてるだけ。野生の鹿は襲わない」
「絶対に?」
「絶対に。人を見れば必ず逃げる。可能性があるとすれば、半矢の鹿かそお親」
「ハンヤ?」
「手負いって意味。逃げられないとしたら、抵抗するために襲うかもしれない。でも、あり

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【映画】「システム・クラッシャー」感想・レビュー・解説

本作は、衝動を抑えきれず大暴れしてしまう9歳の少女ベニーを描く物語である。しかしまず僕は、映画で描かれている国(たぶんドイツ)の福祉制度に驚かされてしまった。

ベニーは、基本的に保護施設で暮らしている。「たらい回しにされている」という表現の方が正しいが、その辺りは後で触れよう。ベニーのことは、社会福祉課のバファネが担当している。

ではそもそも、ベニーは何故保護施設にいるのだろうか?

日本の場

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【映画】「エドガルド・モルターラ ある少年の数奇な運命」感想・レビュー・解説

ホントに、イカれた話だった。これが実話だっていうんだから、やっぱり僕の「宗教嫌い」はあながち間違ってないなぁ、と思う。

以前、大学時代の友人と、こんなような話をしたことがある。キリスト教だってイスラム教だって、元々はユダヤ教から分離した「新興宗教」だった。確かに今は「世界宗教」みたいになっているし、「キリスト教とかイスラム教とかは、宗教としてちゃんとしてる」みたいな扱われ方になってる。でも、結局

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【映画】「正義の行方」感想・レビュー・解説

いやー、これは実に興味深い作品だった。

「飯塚事件」のことを知ったのは恐らく、『殺人犯はそこにいる』を読んだ時だったと思う。著者の清水潔の尽力のお陰もあって再審無罪となった「足利事件」においては、事件当時まだ開発されたばかりだったDNA鑑定法「MCT118法」によって有罪判決が決まったのだが、後にこの鑑定法に「証拠能力が無い」と認められて再審無罪が決まった。そして、同じく「MCT118法」のDN

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【映画】「死刑台のメロディ 4K リマスター・英語版」感想・レビュー・解説

さて、4Kリマスター版で劇場公開されていた本作を観ようと考えた理由はただ1つ。エンリオ・モリコーネである。

エンリオ・モリコーネのことは、割と最近知った。『モリコーネ 映画が恋した音楽家』というドキュメンタリー映画を観たのだ。エンリオ・モリコーネが世間的にどれぐらい有名な人なのか僕にはよく分からないが、少なくとも僕は、このドキュメンタリー映画を観るまで彼のことは知らなかった。

エンリオ・モリコ

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【映画】「マンティコア 怪物」感想・レビュー・解説

いや、これは何とも重苦しい物語だった。「ある要素」さえ描かれなければ、「よくある恋愛物語」にしか思えないような展開なのだが、「ある要素」が含まれることによって、城がじわじわと崩壊していくような感覚に陥る。いや、それも違うか。正直、その「ある要素」がどう物語に関係してくるのか、終盤になるまで正直理解できていなかったため、「ぼんやりとした不安感」みたいなものにずっと支配され続ける作品と言えばいいだろう

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【映画】「毒娘」感想・レビュー・解説

いやー、これは面白かった!思ってたような話じゃなかった、というか、別にどういう物語なのかイメージしてたわけではないのだが、にしても、全然思ってもみなかった物語で、メチャクチャ良かった。いやー、これは観て良かったなぁ。

本作ではもちろん、「ちーちゃん」と呼ばれる、真っ赤な衣装に身を包んだ謎の少女のインパクトが凄まじい。しかし、物語を追っていく内に、「ちーちゃんがメインで描かれているわけではない」と

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【映画】「No.10」感想・レビュー・解説

いやーーーー、凄かった!まさかこんな話とは。物語の中盤ぐらいでいきなり「およよ!」みたいな展開になるのが凄まじい。しかも、そんな「およよ!」的な展開なのに、それまでの物語とトーンもさほど変わらないのも驚きだったなぁ。

普通、こんな物語成立しないと思うのだが、本作はどうにも成立しているように僕は見えた。不思議だ。無茶苦茶な物語なのに。

さて、感想を書くのに公式HPを開いたら、冒頭に「みんなネタバ

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【映画】「コール・ジェーン 女性たちの秘密の電話」感想・レビュー・解説

いやー、凄い物語だった。そして、こういう物語に触れる度、僕自身も男ではあるが、「男が作った社会」のクソさに嫌気が差す。ホントに、「男」という種族は碌でもない。

以前、『あのこと』という映画を観たことがある。中絶が違法行為だったフランスを舞台に、「勉学に打ち込みたいと思っている若い女性」が望まぬ妊娠をしてしまい、その中絶のために奔走するという物語だ。

本作『コール・ジェーン』もまた、中絶が禁止さ

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【映画】「霧の淵」感想・レビュー・解説

うーーーーん、って感じだったなぁ。

僕はやはり、映画(に限らず物語)には「ストーリー展開」を求めてしまう。時々、「何も起こらないのにメチャクチャ面白い」みたいな作品もあるが、そういうケースは稀だ。基本的には「何かが起こってほしい」と思って映画を観ている。

そんなわけで、「美しい風景」とか「印象的な音楽」とか「インパクトのある衣装」とか、そういうものにも特段興味がない。

そういうわけで、本作『

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【映画】「日日芸術」感想・レビュー・解説

(東京にお住みの方、新宿K’s cinemaでの上映は4/26(金)までなので、興味がある方はお早めに)

いやー、面白かった!まったく想像もしていなかった作品でビックリしたけど、とにかく良い映画だった。しかし、まさかドキュメンタリー映画だとはなぁ。驚いた。

いや、そういうことは時々ある。フィクションだと思っていたけどドキュメンタリーだったとか、ドキュメンタリーだと思ってたけどフィクションだった

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【映画】「ナチ刑法175条」感想・レビュー・解説

僕が「刑法175条」という法律の存在を知ったのは、少し前に観た映画『大いなる自由』でのことだった。驚いた。ドイツでは長らく「男性の同性愛」が刑事犯罪だったからだ。1871年、ナチスによって制定されたこの法律は、幾度かの改訂を繰り返しながら、なんと1994年まで存在したそうだ。映画『大いなる自由』は、そのような時代を生きた男の辛い人生を描き出す物語である。

『大いなる自由』の描写で驚かされたのは、

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【映画】「フォロウィング」感想・レビュー・解説

いやー、凄かったなぁ。びっくりした。なにせ、物語の途中まで「ストーリーがまったく分からなかった」からだ。

この「分からなかった」というのは、ミステリ的な意味での「分からない」ではない。

ミステリの場合、「謎は提示されたが、解決が分からない」ということがほとんどだろう。つまり、「この謎は、いかにして解き明かされるのか」という点が「分からない」というわけだ。

しかし本作『フォロウィング』の場合は

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