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「思い出に音楽を付けたらどうなるのかという事をずっと繰り返している」【2021/5/9放送_音楽家 [.que]カキモトナオ さん】

Fm yokohama(84.7MHz)から毎週日曜日深夜24:30~25:00にお送りするラジオ番組『文化百貨店』。今週は、ソロプロジェクト[.que]を中心に活動されている音楽家のカキモトナオさんをお迎えして、ソロでの活動を始めるきっかけや制作について、たっぷりお話をお伺いしました。

【パーソナリティ】
セイタロウデザイン代表・アートディレクター 山崎晴太郎(@seiy

【今週のゲスト】
音楽家 [.que]カキモトナオさん

徳島県出身。カキモトナオによるソロプロジェクト。2010年より[.que]名義で活動を開始。 新たなる『日本』から発信される才能、フォークトロニカの新星として活動初期より注目され、一聴して伝わるメロディー、美しい楽曲は世界中から大きな賞賛を浴びている。 近年ではインストゥルメンタル作品のみならず、作詞作曲編曲のすべてを手掛け、枠に捕われない自身の音楽性を発揮。 作品のみならずCM音楽、空間演出音楽も多く手掛け、その他楽曲提供やリミックスなど活動は多岐に渡り様々なコラボレーションを行っている。 ライブではフェスへの出演、海外アーティストとの共演、また2017年には初の海外ツアーも経験。 バンドルーツを感じさせる楽曲、パフォーマンスに魅了される人も多く、さらなる活躍が期待される音楽家である。 常に「今、鳴らしたい音」を表現し続けている。

【今週のダイジェスト】

▶︎好きな音楽を掘り続けてたどり着いた[.que]のサウンド

【山崎】[.que]の音楽がSpotifyのサジェスチョンで出てきたのをきっかけで聴いて、瞬間的に「好きだ!」と思ったんですよね。そこから興味を持って、今回遊びに来ていただきました。僕は、ミニマルで風景が浮かぶような音楽が好きなのですが、お話をしていると、共通の繋がりが多かったんですよね(笑)

【カキモト】ジャンル的に狭い世界なので、すぐ繋がるんだと思います。

【山崎】出身は、徳島県なんですね?

【カキモト】生まれと育ちは、徳島で、大学で広島に。その後に、就職で大阪へ行ってから「音楽一本でやっていくぞ!」という事で東京に来ました。

【山崎】音楽を始めたきっかけは、何だったのですか?

【カキモト】徳島に住んでいた小学生の頃に、ゆずに憧れて。

【山崎】ゆず!?横浜じゃないですか!

【カキモト】ギターを持って弾いている姿とか、ハーモニカを吹いている姿が、カッコイイなと思ったのがきっかけです。「ギターを弾きながら歌う人になりたい」と思って、ギターを始めたんですよね。

【山崎】そうすると、かなり変遷があったと思うのですが、どのように今のスタイルにたどり着いたのですか?

【カキモト】中学校でコピーバンドをやるんですよ。そこでも、ゆずとかコブクロとかMONGOL800とかの音楽のコピーをやっていました。高校へ行ってからも、Bump of ChickenやASIAN KUNG-FUGENERATIONなどのROCKIN’ON 系のコピーをしていました。大学にいってから、ようやくオリジナル曲でパンクバンドを始めました。

【山崎】パンクに行くんですね!?

【カキモト】そうです。ギターボーカルをやって、そこから色んな音楽を掘って、なぜかここに辿り着いたという…

【山崎】最後の省略したところが一番気になる!(笑)

【カキモト】確かに(笑) 好きなバンドのストレイテナーのボーカルのホリエさんが、entというソロプロジェクトで曲をリリースしたんですね。その曲を聞いた時に、ポストロックとか、エレクトロというジャンルを知ったんですよ。

【山崎】なるほど。

【カキモト】今まで、パンクとかロックとかJ-POPしか聞いていなかったので、音像とかメロディー感に「何だ、これは!?」「何ていう音を出すんだ!」という刺激を受けて、音響系をディグって行ったという感じですね。

【山崎】フットワークが軽いですよね。

【カキモト】そうですね。元々、“好きな音楽を掘る”という事が自分のやり方というか、掘らないと気が済まない。1つのレーベルが好きになったら、所属しているアーティスト全員聞いたりしますね。それで、好きなアーティストのバックボーンを調べると「面白いな。新しい音楽が一杯あるな」と、どんどん掘って行ったら、エレクトロとかアンビエントに辿り着きましたね。

【山崎】それは、面白いですね。過去の経験も、今の音楽に影響をしている部分があるという事ですもんね。

【カキモト】そうですね。あると思います。

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▶︎音楽を志した学生時代も今も、熱量は変わっていない

【山崎】2010年からソロプロジェクトの[.que]を始動されますが、この時に仕事は辞めているんですよね?

【カキモト】まだギリギリ辞めていないですね。多分、就職して1年目とかですね。

【山崎】就職してからも音楽を続ける人は、少ないと思うのですが、背中を押したのは何だったのですか?

【カキモト】大学のころにバンドをやっていて、デビューを目指したんですけど、叶わなかったんです。それで、大阪で就職することにしたんですけど、音楽が好きで、掘ることも辞めていないし、ギターも弾いている。そんな中で“自分で表現をしたい”という気持ちが大きくなって、休みの時や家に帰ってからMTRを使って、毎日録音をして、1日1曲をMyspaceとかにアップをするという事をずっとやっていました。

【山崎】何が、その創作意欲になったんですかね?

【カキモト】「憧れているミュージシャンみたいになりたい!」とか「CDデビューをしたい!」とか、夢を現実にしたいという気持ちが大きかったんですよ。その先に「デビューが出来たら、音楽で食べていければ良いな」という考えもありましたね。

【山崎】なるほどね。“好きなことをして食べていく”というのは、すごく共感します。1日1曲を作っていた時は、どのように方向性を決めていたんですか?

【カキモト】結構、ランダムだったのかな。とりあえず作って、「ネットの海に放り投げておけば、引っかかる!」という淡い期待をしていました。Twitterを使って、告知をしたりもしていましたね。

【山崎】作曲活動という音楽を生み出す時と、バンド活動という出役感が強かった時との、気持ちの面での線引きは無かったですか?

【カキモト】線引きは無かったかもしれないですね。バンドをやっていた時の熱量と、今の音楽に対しての熱量は、そこまで変わっていないし、そのままアクセル全開でここまで来ているイメージはあるかもしれないです。

【山崎】お話を聞いていると、すごい真っすぐな感じですよね。話していて気持ちが良いです。その後、2014年に上京したのは、どういうタイミングだったんですか?

【カキモト】その時リリースした『drama』というアルバムが、思った以上にたくさんの人に届いたんです。それで、一層「音楽でやっていくぞ!」という気持ちが大きくなったのと、その少し前から、東京の制作会社さんから「映像に音楽を付けてほしい」というご依頼のメールが届くようになっていたので、良い機会だと思って東京に出ることにしました。

【山崎】徳島、広島、大阪、東京と移り住んで来ていますけど、音楽を生み出すにあたって、“場所性”って影響がありますか?

【カキモト】住んでいる場所の風景や空気感、土地柄とかって、すごく影響があると思いますね。今、住んでいるところは、川や自然が近くにあるので、穏やかに過ごせるという気持ちがあります。

【山崎】曲名は、どうやって決めていくんですか?

【カキモト】曲を作る前に、“こういう風景に音楽を付けたい”という感じで、ある程度イメージがあります。例えば『Sunset』という曲だったら、地元の海岸に沈んでいく夕日をイメージした曲で、その風景に名前を付けるとしたら、分かりやすい方がいいと思って、そのままSunsetにしました。

【山崎】カキモトさんの曲を聴いて、風景が見えるというのは合っているんですね。

【カキモト】そうですね。それは、嬉しいことです。

【山崎】曲作りの際のルーティンや、インスピレーションソースはありますか?

【カキモト】最近は、週4~5回ほど走っています。毎日走っていると、見る景色とか感じる空気が、季節によって変わるじゃないですか。同じ時間に走ったとしても、空に雲が有ったり無かったりとか、そういう事を感じるのを楽しみに生きているという事があるかもしれないですね。

▶︎形のないものだからこそ、手に触れる形を残したい

【山崎】最近は、配信だけのアーティストさんが多かったりしますけど、[.que]はCDやレコードを作っていますよね。“盤を出す”という意味をどのように考えられていますか?

【カキモト】その都度、皆さんのニーズに応えられるようにしていきたいと思っています。だけど、“音楽を作って届ける”という意味では、音楽は触れられないし、目には見えないし、耳だけでしか聞けないです。なので、配信するだけではなくて、ちゃんとジャケット、CD、レコードがあって、手に触れるものがあればいいなと常々思っていますし、僕はずっと続けるのではないかなと思います。

【山崎】物性が無いからこそ、物性を大事にしたいという事ですよね。それで言うと、CDとかレコードという既成の物性ではなく、全然違うものになったりすることもあるんですかね?

【カキモト】それも有りだという気はしています。ありがちなのが、Tシャツと一緒に表現をするという事があると思うんですけど。それだけではなくて、空間に来たら聞ける作品でもいいし。

【山崎】“枝が1本だけある”という、風景の入り口のきっかけでもいいような気もしますね。

【カキモト】色んなやり方があるのかなと思いますね。

【山崎】写真を撮ることがお好きだそうですけど、音楽とリンクしている部分はあるんですか?

【カキモト】そうですね。写真は、走っている時にメモ代わりに撮っています。写真を撮った時に「あの時、晴れていたな」や「この季節の夕暮れが、美しかったよね」とか思い出すじゃないですか?その時に感じた気持ちを呼び起こして、思い出に音楽を付けたらどうなるのかという事をずっと繰り返している感じですね。

【山崎】僕の好きな音楽やミュージシャンの方って写真の表現やアートワークを大事にしていることが多いんですよね。その影響からなのか、音楽を聴いて浮かんできた風景観とかで、確実に繋がっていると思うんですけど、あの現象は何なんでしょう?

【カキモト】何なんでしょうね?僕の場合は「海っぽいよね」とか言われたりするので、それって何なんだろうと思っていて。生まれ育った場所や土地柄、背景が滲み出ていて、それぞれの人がそういう記憶を持っているのかなとか考えたりするんですけど、答えは分からないんですよね。

【山崎】分からないんですよね。音楽が呼び起こしているんだと思うんですけど、日本人だけかと言われたら、そうでもないですしね。

【カキモト】そうですね。すごい不思議ですね。

【山崎】不思議だけど、そういう風景で繋がれるというのが良いですよね。その風景が実際にあるものだけではなく、無かったりもするので、すごい面白いなと思うんですよ。この謎を、一緒に解明していきたいですね。本日のゲストは、音楽家のカキモトナオさんでした。ありがとうございました。

【カキモト】ありがとうございました。


【今週のプレイリスト】

▶︎カキモトナオさんのリクエスト
『sunset』[.que]

『petal dance』[.que]

といった所で、今週の文化百貨店は閉店となります。

次回もカキモトさんをお迎えして、運営されている自主レーベルやライブ活動などについて伺います。

【次回5/16(日)24:30-25:00ゲスト】
音楽家 [.que]カキモトナオさん

また日曜深夜にお会いしましょう!

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