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2020年のトピックを振り返る(日産のロゴからローザンヌのオンライン審査まで)【2020/12/13放送_山崎晴太郎ソロ回】

Fm yokohama(84.7MHz)から毎週日曜日深夜24:30~25:00にお送りするラジオ番組『文化百貨店』。

今週は、パーソナリティーの山崎晴太郎が1人でお送りするソロ回。今回は、年末ということもあり、2020年のトピックの中から、山崎が印象に残ったものを中心にお送りしました。

【パーソナリティ】
セイタロウデザイン代表・アートディレクター 山崎 晴太郎(@seiy

【テーマ】2020年のトピック

【今週のダイジェスト】

▶︎日産のロゴリニューアルから探るデザインの流れ

1つ目に取り上げたのは、日産の20年ぶりとなるロゴのリニューアル。山崎が、このトピックに注目したのは、「ロゴは時代を映し出すもの」と考えているから。そして、”ニューモーフィズム”という新しいデザインの流れを多くの人が目にするCMで使用されたことが珍しいと感じたからのようです。

ニューモーフィズムとは、凹凸を取り入れ浮き出たように見せる手法で、上記の日産のCMでは、最後に赤色の背景から同系色のロゴが浮き上がってくる部分。これまでのロゴよりもフラットになり、オンラインでのコミュニケーションが増えていく時代に合わせて、デジタルシフトをしたと考えられているようです。

オンラインを意識したデザインでは、“フラットデザイン”というパネル型の平坦に見せる手法が主流でしたが、フラットになればなるほど、「身体性がなくなっていく」と山崎は言います。そこで、登場したのがAppleのiOSのアイコンに代表される日常にあるものをメタファーとして持ち込んだ“スキューモーフィズム”。このスキューモーフィズムによって、【デジタルの中にアナログの概念を持ち込む】という流れが生まれた後に出てきたのが、日産のCMに代表されるニューモーフィズム。

ニューモーフィズムは、同系色の中に立体感を出すことで、“ボタンを押せる”ような日常の身体性をうまく取り入れていて、山崎自身も注目しているデザイン処理だと言います。来年以降、もっと色々なものに取り入れられていくのか、それとも時代にマッチせず別のデザインが流行っていくのかも含めて、見逃せない話題です。

▶︎キース・ジャレットのリタイア

番組内で山崎がたびたび選曲しているキース・ジャレット。田中義人さんとのサウンドアートユニットNU/NCでの曲づくりにも影響を及ぼしたという偉大なるジャズ・クラシックピアニストですが、2度の脳卒中の影響から、事実上リタイアとなったというニュースに「彼の新曲がもう生まれることが無いという事実に大変ショックを受けた」と言います。

そんなキース・ジャレットが、今年新しく音源とした発表したのが『Answer me』という曲。すでにライブでは披露されていた曲ですが、これを聞いた山崎は「レクイエムっぽい感じで、色んな思いが沸いてきた」そうです。“ソロピアノのライブの概念を変えた”と言わる偉大な音楽家に敬意を表して、1年の締めの特集で紹介させていただきました。

現在、キース・ジャレットのプレイリストを作って公開する企画も行われているので、キースのファンの方はぜひトライしてみてください。

▶︎ローザンヌバレエのオンライン審査から考えるリモート

バレエは”身体表現の極地”と考えている山崎。若手バレエダンサーの登竜門と言われるローザンヌ国際バレエコンクールの2021年の審査が、新型コロナウイルスの影響でオンライン化するという話に衝撃を受けたと言います。

今年は、リモートワークを取り入れる企業も増えましたが、「デザイン、クリエイティブ産業だと100%リモートは難しい」と感じているようです。特に、クリエイティブを進めていく上での最初の一歩となる、「気配のようなものを共有かしてチームで1つのものをつくっていく」という部分では、リモートで伝えられる情報量が少なくなると感じているようで、アイデアの共有などにはリモートは向いていないと思っていると言います。

そんな風にリモートを捉えていた中で、身体表現によって周りの空気も一変させるバレエの著名なコンクールがオンラインで審査を行うという発表を興味深く見ているようです。

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▶︎noteでの連載『透明な好奇心』

これまでは、デザイナーという仕事柄もあってか、自身の活動や思考を言語化することに今まで何となく恐怖感を抱いていたという山崎。「どういう風に解釈をしてもらっても良いという前提で表現をしている」ので、文字を残すという事が、自身の活動と相性が良くないと感じていることもあるのだとか。

そして、大学時代に見た”Motherless Chinese Baby(上海南駅の赤ん坊)”と呼ばれる写真も、言語化することへの戸惑いの要因になっていたようです。

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アメリカのフォトジャーナリスト誌『LIFE』に掲載された写真ですが、そこに”Motherless Chinese Baby”というキャプションを加えるだけで、解釈が1つの方向へ偏ってしまうことを目の当たりにし、「文字って絵の力を捻じ曲げて流通させる力があるのかな」と思っていたこともあったようです。

そんな思いもある中、社会学者の加藤晃生さんとの共著というような形でスタートしたのがnoteでの『透明な好奇心』という連載。山崎が言語にしていないものや逆に言語にしているもの、そして山崎の活動を加藤さんが俯瞰して、社会学の観点からこれまでの活動を言語化するという取り組みだと言います。

この連載は、誰かに見せるというものではなく、山崎が自身を知るために始めたようですが、一方で「未来のクリエイティブ産業やクリエイターの1つの糧になるような発見が出来たら良い」とも考えているとも言います。興味のある方は、ぜひnoteをフォローして、ご覧ください。


【今週のプレイリスト】

『Lucida』 Thomas Bartlett

『Anything Can Happen(feat.Leon Russel)』 Bruce Hornsby

『Gully』 Animal Feelings


といった所で、今週の『文化百貨店』は閉店となります。

来週は、9月に初の著書『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』を出版された作家の岸田奈美さんをゲストにお迎えして、お送りします。

【次回12/27(日)24:30-25:00ゲスト】
作家 岸田 奈美さん

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100文字で済むことを2000文字で伝える作家。一生に一度しか起こらないような出来事が、なぜだか何度も起きてしまう。
2020年2月~講談社「小説現代」でエッセイ連載。2020年1月「文藝春秋」巻頭随筆を担当。
1991年生まれ、兵庫県神戸市出身、関西学院大学人間福祉学部社会企業学科2014年卒。在学中に株式会社ミライロの創業メンバーとして加入、10年に渡り広報部長を務めたのち、作家として独立。
世界経済フォーラム(ダボス会議)グローバルシェイパーズ。 Forbes 「30 UNDER 30 JAPAN 2020」選出。
2020年9月初の自著『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』(小学館)を発売。

また日曜深夜にお会いしましょう!

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