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ferrariやDior、BMWも!海外で流行っている“Branded Podcast”とは【2021/10/10放送_株式会社オトナル 代表取締役 八木 太亮さん】

Fm yokohama(84.7MHz)から毎週日曜日深夜24:30~25:00にお送りするラジオ番組『文化百貨店』。先週に引き続き、ゲストは株式会社オトナル 代表取締役の八木 太亮さん。
オトナルが展開している音声コンテンツ制作や、日本でのデジタル音声広告市場を広げるための取り組みについて伺いました。

【パーソナリティ】
セイタロウデザイン代表・アートディレクター 山崎晴太郎(@seiy

【今週のゲスト】
株式会社オトナル 代表取締役 八木 太亮さん

2013年ウェブメディアを運営する株式会社オトナルを創業。ウェブメディア事業を事業売却ののち、音声コンテンツと音声広告領域に特化し、アドテクノロジーを活用した広告出稿とクリエイティブ制作をトータルサポートできる”音声広告カンパニー”としてデジタル音声広告事業を展開。そのほかラジオ局や新聞社など大手パブリッシャー向けの音声コンテンツの配信支援事業とデータ運用支援も行っている。
著書:『いちばんやさしい音声配信ビジネスの教本 人気講師が教える新しいメディアの基礎』(インプレス)

【今週のダイジェスト】

▶︎オウンドメディアの流れが音声にも起きている

【山崎】オトナルさんは“デジタル音声広告カンパニー”と標ぼうされています。先週もお聞きしましたが、改めて「デジタル音声広告」について教えていただいてもいいですか?

【八木】言葉で定義すると、“インターネットで聴くことが出来る音声メディアに出稿できる音声の広告”です。例を挙げると、radikoで流れる広告です。radikoで聴く広告の中には、電波で聴いている場合には流れて来ない広告もあるんですよ。radikoでしか流れない広告があって、“アドサーバー”というサーバーから挿入されているのが、デジタル音声広告の一例ですね。

【山崎】ターゲットやメッセージをチューニングしていくんですよね?

【八木】そうですね。ターゲットを複数用意して、その中でどれが最も効果が高いのかを見極めたり。あとは、配信時間が、平日と休日でどちらが効果的かみたいな数値を全て見られるので、「平日の数値が低いから、出稿を止めよう」みたいな事をやっています。

【山崎】確かに、音声に浸りたい気分の時と、外を歩いている時では、受け取り方が違いますもんね。

【八木】ビジネス用の広告出稿だと、平日の20時以降が良いですね。日中はみんな忙しいですから、効果が無い印象があります。

【山崎】なるほどね。バナーとか検索トレンドとはまた別の特性が見えてくるんですね。

【八木】そうですね。1日の体験時間や接触時間に関係していますね。例えば、学生さんの登校前と下校後では、体験が全く違うと思っています。「今から学校だ」と思っている時と、部活終わりで疲れている時では、話しかけ方が違うと思うんですね。例えば、時間を見計らって「部活、お疲れ様です」というCMを流したら、部活終わりの学生さんは「私のためのCMだ」と思いますよね。

【山崎】デジタル音声広告を手がけてこられた中で、相性の良かったと思うものはありますか?

【八木】相性が良いのはアプリのダウンロード。例えば、実用的な家計簿アプリで、ターゲットを明確に出していくと結構ダウンロードされたりもします。

【山崎】逆にビジュアルが無いから、自分で想像してダウンロードがアクティブになるという事もあるんですかね?

【八木】そうですね。デジタル音声広告はビジュアルが無いので、メッセージで買ってもらえるものや機能性を口で伝えられるものが向いているんですよ。保険の商品では、間接コンバージョンが動画を超える時がありますね。

【山崎】費用対効果としては、すごく良いわけですよね?

【八木】そうですね。出稿費用は動画広告より安いですし、何よりメリットは制作費にあります。動画のCMを作るのと、音声CMを作るのを比較すると、圧倒的に音声CMが安いんですよね。

【山崎】確かに、圧倒的に低コストですよね。オトナルさんはデジタル音声広告の配信や運用や広告の制作だけではなく、コンテンツの充実や作成にも力を入れていらっしゃいます。広告だと運用や配信に軸足が向かうイメージなんですけど、音声コンテンツの制作にも注力している理由は、何なのですか?

【八木】我々が行っているのは、企業が配信する音声コンテンツの支援なんです。Web広告の世界だと、企業が自分たちでオウンドメディアを立ち上げてファンを作っていくんですけど、それが音声でも起きているという感じです。日本では、まだこれからなんですけど、世界だとブランドがポッドキャストをする事で“Branded Podcast”という言葉が使われるんですよ。具体的には、ferrariやDior、BMW、CHANEL、Johnson&Johnsonというような企業が、自分たちでポッドキャストを作って配信をしています。

【山崎】そういった企業は、どんなコンテンツを作るんですか?

【八木】いくつか種類があるんですけど、例えばferrariは、歴史を紹介するコンテンツをやっています。ファンの方には、たまらないですよね。もっとブランドの事を好きになる。

【山崎】ストーリーが有ればあるほど、Branded Podcastに向いているんですかね?

【八木】そうですね。ブランドストーリーを語っていくパターンが多いと思います。

【山崎】キャラクターが立っていれば、社長が話すとかでもいいんですよね?

【八木】そうですね。そういう具体的な例がすぐには浮かばないんですけど、会社の中の人の声が聴けると、親近感が湧くというのはありますね。

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▶︎デジタル音声広告は、“ホストリード”が強い

【山崎】ネットをしていると、cookie設定の「YES/NO」のポップアップが出てくるじゃないですか?この辺りの規制の話も出てきていますが、これからどうなっていくんですかね?

【八木】音声に関わらずcookieの話をいうと、2023年にGoogleのChromeがcookieを止めると言っているので、そこが恐らく1つの終わりだと思っています。それによって、音声広告としての影響としては2つの話があると思っているんですね。1つは、他のデジタル広告のようにターゲティングがし辛くなったり、トラッキングが出来なくなるので影響を受けるという事。もう1つは、音声広告は他の広告と違う特性があって、“ホストリード”というのがすごく強いんです。

【山崎】ホストリード?

【八木】ホストリードは、ラジオの生CMと同じ、パーソナリティーが喋る広告で、効果が高いと言われています。デジタル音声広告全体の出稿割合だと、ホストリードの利用率が高いんですよ。そう考えた時に、cookieのターゲティングを使わない出稿というのは結構あるんですよね。

【山崎】そもそも、趣向性の高い人が来ているからですか?

【八木】ターゲティング性能よりも、パーソナリティーに対して出稿してくれているからですね。トラッキングがしにくい問題は引き続き起きちゃうんですけど、よりメディアに宿っている人たちに出稿するようになって、あまりトラッキングが重要ではない出稿があるんじゃないかと考えています。

【山崎】トラッキングは、なぜ問題になったんですか?

【八木】出来なくなっているのは、3rd party製のcookieと言われる第三者仕様なんですよ。だから、cookie自体は、サイトの持ち主が、自身のために使うには問題がなく、他者に情報を渡して、データを売るような使い方が規制されています。ターゲティングの話と表裏一体なんですけど、プライバシーを特定されてしまうからという事ですよね。

【山崎】あるサイトを開いたら、他のサイトを開いた時にその広告が出てくるというものですよね?

【八木】cookieは“無機質状態”になりやすい所があるんですよね。10年程は使われている技術だと思うんですけど、長持ちした方だと思いますけどね。

【山崎】そうすると、数年後には今より、ターゲティングがズレたcookieになるんですかね?

【八木】そうですね。マッチ率の高い広告が、出て来なくなる可能性はありますね。でも実は、次の代替技術も開発されているので、2024年になると今と同じような事になると思いますね。ただ、今ほど無差別に情報の収集が出来きるわけではないので、精度は落ちてくる気はします。

【山崎】トラッキングの理想は、どこを目指しているんですか?

【八木】主語が誰かによると思っています。広告主からしたら、ターゲティングが出来て、ユーザーが特定できた方がいい。メディア側からすると、「番組に宿っているファンに対して出稿してよ」と思っているから、ターゲティングし過ぎないで欲しいと思っているんですよ。その辺りの“何が正解か?”というのは色々ある気がします。

僕個人としては、メディアに宿っているファンに対して、出稿すべきなんじゃないかというスタンスなんですよね。デジタル音声広告をやっている私が言うのもなんですけど、アドテクを極めて行くと“数字の戦い”になっちゃうんですよね。だから、どんなユーザーがいるのかが、関係なくなってしまう。「PVの中から、ターゲティングをすれば良い」となると、コンテンツのつくり手としては、「どうなの?」って思うじゃないですか?

【山崎】確かにね。それは、「何をつくっても良いじゃん」という話になりますもんね。

【八木】そうですね。結局「どんな手段を使っても、数字を上げればいいんでしょ?」となってしまうのは、どんどんメディアが悪くなっちゃうと思います。

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▶︎日本のデジタル音声広告の市場を作るところから始めたい

【山崎】それでは、最後のパートですね。ゲストの方皆さんに伺っている事をお聞きしたいと思います。僕、山崎晴太郎とコラボレーションするとしたらどんなことをしてみたい、もしくは出来ると思いますか?

【八木】晴太郎さんは、企業のデザインや戦略をされているので、視覚の情報がメインだと思うんです。だけど、これからの時代は”Sonic Branding”といわれる、「この音と言えば、この企業」というようなものが強まってくると思うんです。これは、音だけでは無くて、音と視覚が合わさって、企業を完全に思い出すといった事もですよね。その音のブランディング活用や、音のデザインをご一緒に出来ると面白いなと思います。

【山崎】それは、すぐに出そうですね。

【八木】増えると思いますよ。これはオーディオだけでなく、動画でも使えますし。

【山崎】具体的に、相談しましょう(笑) そして、この番組のコンセプトである「文化百貨店」という架空の百貨店があったとして、バイヤーとして一角を与えられたらどのようなものを扱いたいですか?

【八木】僕は、音声コンテンツを生みたいんですよね。音声に対してお金を払ってくれるという状況を作りたいので、色んなパターンの面白い会話を売るでも良いので、音声のコンテンツを販売していけると面白いかなと思います。

【山崎】NFTとの相性も良さそうですよね。

【八木】声の波形は真似が出来ないのです、むしろアートよりも相性が良いかもしれません。

【山崎】最後になりますが、日本のデジタル音声広告市場をどんな市場にしていきたいですか?

【八木】私自身は、もともとWebメディアをやっていた人間なので、コンテンツを作る人がハッピーになっていくようにしたいと思っています。デジタル音声広告の市場がきちんと形成されていて、循環していくような環境にしたいですね。日本は、まだそうなっていないと思うので、まずは市場を作ることですね。

【山崎】音声コンテンツを始めようと思っている方、デジタル音声広告を配信してみたいと思っている方にメッセージをお願いします。

【八木】音声配信は動画よりも気楽で、スマートフォンに10分話せば、出来ちゃうので、ぜひやってみてください。デジタル音声広告も動画に比べるとすごく身近で、簡単に作れますしコストも安いので、ぜひ試してみていただければと思います。

【山崎】2週にわたって、八木太亮さんとお送りしました。何かのアニメではないですけど、完全に「新世界の幕開けです」という内容でした。この後、番組スタッフと「ポッドキャスト番組をやろうぜ」って言うと思いますし、クライアントにも提案しようかなと思いました。

1つのブランドをブランディングするために並走しているとすごく伝えたいというのがどこかにあるんですよね。お客さんも聴きたいと思うんだけど、その出会いの場が無かったりするので、“音声”という近い距離のメディアを使って表現出来るのではないのかなと、リアルに感じました。

▶︎八木 太亮さんのリクエスト
『Across The Sea』Weezer

▶︎山崎 晴太郎のセレクト
『Why Not?』Jonsi

といった所で、今週の文化百貨店は閉店となります。
来週はモンゴル出身の、株式会社naura代表取締役社長のウランさんをお迎えし、日本で展開するカフェやファッション事業について伺います。

【次回10/17(日)24:30-25:00ゲスト】
株式会社naura代表取締役社長/ファッションデザイナー ウランさん

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モンゴル出身。幼少期から日本語や日本文化と触れ合い、交換留学生として来日。以後、10年に渡り日本で生活する。
かねてから興味のあったファッションを本格的に学ぶため、2015年、東京モード学園に入学。卒業後は、個人でオーダーメイドのドレスの製作などを行う。
2020年、株式会社nauraを創業。女性ならではの視点でスタイリングを提案するオーダースーツテーラー【naura ginza】のほか、ワインに合うモンゴル料理など「気が付けばモンゴルに触れあえる」カフェ・バー【cafe de naura】を展開する。
若いモンゴル女性のライフスタイルを日本に発信するほか、日本で学んだ“思いやり、おもてなし”といったサービスをモンゴルに伝えるブランドを目指している。

また日曜深夜にお会いしましょう!

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