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”大丈夫”の意味を探し続けてきた【2020/12/27放送_作家 岸田 奈美さん】

Fm yokohama(84.7MHz)から毎週日曜日深夜24:30~25:00にお送りするラジオ番組『文化百貨店』。先週に引き続き、作家 岸田 奈美さんをお迎えして、著書『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』に掲載されているエピソードや、今後の活動ついてたっぷりお話をお伺いしました。

【パーソナリティ】
セイタロウデザイン代表・アートディレクター 山崎晴太郎(@seiy

【今週のゲスト】
作家 岸田 奈美さん(@kishidanami

100文字で済むことを2000文字で伝える作家。一生に一度しか起こらないような出来事が、なぜだか何度も起きてしまう。
2020年2月~講談社「小説現代」でエッセイ連載。2020年1月「文藝春秋」巻頭随筆を担当。
1991年生まれ、兵庫県神戸市出身、関西学院大学人間福祉学部社会企業学科2014年卒。在学中に株式会社ミライロの創業メンバーとして加入、10年に渡り広報部長を務めたのち、作家として独立。
世界経済フォーラム(ダボス会議)グローバルシェイパーズ。 Forbes 「30 UNDER 30 JAPAN 2020」選出。
2020年9月初の自著『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』(小学館)を発売。

【今週のダイジェスト】

▶︎漫画と英文だけで乗り切った受験勉強

経営者だったお父様への憧れと、車いす生活をしているお母様のために、経営と福祉を学べる関西学院大学人間福祉社会学部社会企業学科を目指した岸田さん。塾に通う余裕が無かったため、家族ぐるみの知人である塾で英語の講師をしていた近所の整骨院の先生に、指導をお願いします。ところが、この先生が岸田さん曰く「ヤバいおじさん」だったのだとか。

「必要なことは、これに全部書いてある」と最初に渡されたテキスト(⁉)が、東大受験をテーマにした漫画『ドラゴン桜』。そして、受験直前には、スノーボードに連れて行かれるという破天荒な指導だったようです。

実際の勉強というと指示されたのは、ひたすら英文を翻訳して意味を覚えることと、岸田さんが先生に文法を説明することのみ。他の教科についての指導や、直接何かを教えてもらうことは無かったと言います。

戸惑いながらも、やるしかなかった岸田さんですが、いくつもの英文を翻訳することで自然とルールが身に付いたほか、自分では理解しているつもりでも人に説明することで頭の中が整理でき、成績がアップし見事に合格を果たします。

晴れて志望校に入学した岸田さんでしたが、「車いすのお母さんが、行きたかった場所に早く一緒に出かけたい」という自身の思いと、授業とのスピード感のギャップに戸惑いや不安が募っていったと言います。そんな時に、出会ったのが、2歳年上の車いすに乗っている男子学生。

「車いすに乗っているからこそできること、伝えられることがあるから、会社を立ち上げようと思っている」という彼の言葉に感銘を受けた岸田さんは、大学に通いながら、自分たちで福祉の事業を広げていくという学生時代を送っていきます。

▶︎福祉について伝えていくということ

寝る間も惜しんで、大学と実社会の両方で、“経営と福祉”を学んでいった岸田さん。その原動力になったのは、突然車いす生活になり「歩けなくなるなら、死んだ方がよかった」と漏らしたこともある、お母様を助けたいという想いから。車いすで入れるお店が少なくいという現実があり、自身の手で少しでも選択肢を増やして、「大切な人にもっと楽しんでもらいたい」という気持ちで、働いていたようです。

そして、作家となった今、自身が出来ることとして捉えているのは、バリアフリーのことや車いすの人との接し方などを、分からない人や遠い世界だと感じている人に、伝えていくことだと言います。

多様な人たちと共に生きていきながら、日常や家族との間に起こったことを書いたエッセイを通じて、岸田さんが面白いと感じたことを、読者にも一緒に面白がってもらいながら、発信していければと話してくださいました。

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▶︎悩みを解決するための選択肢を提示したい

山崎晴太郎とコラボレーションをするとしたらという質問に、ラジオをテーマにした漫画『波よ聞いてくれ』が好きだという岸田さんは、「1分だけ尺が空いたら、喋りに来させて欲しい(笑)」といったカジュアルな案と同時に、「人の悩みから、本を逆引きできるようなことをしたい」とご回答。自分が悩んでいることが書かれている本にたどり着く人が少ないと感じているそうで、読書好きの山崎と、人の悩みを解決できるような本の提案をやってみたいと考えてくださいました。

また、“文化を伝える架空の百貨店でバイヤーとして一画を与えられたら?”という質問には、「物語を扱いたい」とのこと。

この回答にたどり着いた要因の1つとして、自身のエッセイの読者から、「自分も同じような環境だけど、岸田さんみたいに明るく捉えられないので、まぶしくて辛い」という感想を貰って落ち込んだ時期があったこと。そこから、色々考えた結果が、「みんなが好きな物語を選べるようになれば良い」ということだと言います。

「私の家族の物語が参考にならない人は、他の人の物語を探しに行くだろうけど、選択肢が少ないと思う」ということで、人を救うような物語を誰よりも知っていて、それを伝えられるようなことをしてみたいということでした。

▶︎今、考える”大丈夫”の意味

著者やnoteにも書かれていますが、お父様が亡くなられる直前に岸田さんに遺したのが「お前は大丈夫。俺の娘やから大丈夫」という言葉。この言葉を受け取った時から、”大丈夫”の意味を探し続けてきたという岸田さんに、現時点で考える“大丈夫”の意味を伺いました。

自分が家族に”大丈夫”という言葉をかける立場になって、“言った者勝ち”だということに気づいたのだとか。とはいえ、誰に対しても言った者勝ちということではなく、親しい人からではないと逆効果になってしまうとも言います。

「この人に言うべきだと思った人に言うと、大丈夫にしてくれる力を持っている言葉」だと岸田さん。こういった言葉だと、これからも考えていくと思うと話してくださいました。


【今週のプレイリスト】

▶︎岸田 奈美さんのリクエスト

『狩りから稲作へ feat.足軽先生・東インド貿易会社マン』レキシ

▶︎山崎晴太郎のセレクト

『Klaki』 Gabriel Olafs

といった所で、今年の文化百貨店は閉店となります。

2021年初回となる来週1月3日は、本番組初のロケ収録。京都から有斐斎弘道館の館長・濱崎加奈子さんをゲストにお迎えしてお送りします。

【次回1/3(日)24:30-25:00ゲスト】
伝統文化研究者/有斐斎弘道館館長 濱崎 加奈子さん

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神戸市出身。京都大学文学部(美学美術史学)卒業。東京大学大学院(表象文化論)博士課程修了。学術博士。公益財団法人有斐斎弘道館の代表理事であり、伝統文化プロデュース連を主宰。また、専修大学文学部准教授、北野天満宮和歌撰者、京都観光おもてなし大使など、多方面で活動。

また日曜深夜にお会いしましょう!

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