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『ミッドナイトスワン』では、草彅さんが持つ人格が凪沙の中に入ってキャラクターが変化した。【2020/10/4放送_映画監督 内田英治さん】

Fm yokohama(84.7MHz)から毎週日曜日深夜24:30~25:00にお送りするラジオ番組『文化百貨店』。今週は、先週に引き続き、映画監督の内田英治さんをお迎えして、絶賛公開中の「ミッドナイトスワン」についてたっぷりお話をお伺いしました。

【パーソナリティ】
セイタロウデザイン代表・アートディレクター山﨑晴太郎(@seiy

【今週のゲスト】
映画監督 内田英治さん

ブラジル・リオデジャネイロ生まれ。 週刊プレイボーイ記者を経て99年「教習所物語」(TBS)で脚本家デビュー。
1 4 年「グレイトフルデッド 」はゆうばり国 際ファンタスティック映画祭、ブリュッセル・ファンタスティック映画祭(ベルギー)など多くの主要映画祭で評価され、つづく16年「下衆の愛」はテアトル新宿でスマッシュヒットを記 録 。東 京 国 際 映 画 祭 、ロッテルダム 国 際 映 画 祭(オランダ)をはじめ、世界3 0以上の映画祭にて上映。イギリス、ドイツ、香港、シンガポールなどで配給もされた。
近年はNETFLIX「全裸監督」の脚本・監督を手がけた。

【今週のダイジェスト】

▶︎『ミッドナイトスワン』でのキャラクターの作り方

撮影前は、主演の草彅剛さんに、テーマとなっている「トランスジェンダーやナイトクラブのカルチャーのことを勉強してもらって、めっちゃリハするぞ!」というモードだったという内田監督。しかし、草彅さんが感受性の高い人だと感じ、細かいリハーサルは必要ないと判断したそうです。

また、当初は、主役の凪沙に“極度に女性っぽい”イメージを考えていたという内田監督ですが、撮影を進めていくうちに、草彅さんが持つ人格のようなものが凪沙の中に入っていき、内田監督が抱いていたキャラクターとは全く別のものになっていったのだと言います。

当初のイメージとは違っていったものの、現場でキャラクターが変化していくことこそ「映画っぽさ」だと感じているとのことで、この変化が作品を良い方向に導いたとも感じている様子です。

反して、ヒロイン役を演じた服部樹咲さんは、今回がデビュー作。ベテランの草彅さんとは違って、こちらはしっかりとリハーサルを行ってから、本番に臨んでいたようです。現場で揉まれることで、普通の中学生から“女優”になっていく面があったようですが、『ミッドナイトスワン』では、普通の面を活かすために女優として開花していく部分を抑える演出を意識されていたということでした。

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▶︎丹念な取材によって集められたエピソード

『ミッドナイトスワン』の脚本を執筆するにあたって、何十人もののトランスジェンダーの方や中学生でプロのバレリーナを目指している人から話を聞き、実際にお店にも顔を出したりして丁寧に取材をしたという内田監督。作中に出てくるエピソードは、すべて実話を基にしていると言います。

一方で、実話をベースにしているものの「重苦しい映画にはしたくなかった」とのことで、娯楽性を意識しながらアレンジをしたりエピソードを選択していったそうです。

そして、映画では取り上げられなかったサイドストーリーを中心に書かれたノベライズも発売されています。こちらは、映画の撮影後に執筆されたそうですが、脚本と違い感情的な部分を書くことが「めっちゃ大変」だったのだとか。

しかし、映画では1分ほどしか出演のないキャラクターの話を出すことが出来るなど、書き手としては面白さもあったようです。映画『ミッドナイトスワン』の世界観をもっと堪能されたい方は、ぜひノベライズも手に取ってみてください。

▶︎映画への想い

『ミッドナイトスワン』を、普段アートハウス系の映画を見ない人たちに見て欲しいという内田監督。日本映画は、大作に一点集中する傾向があるので、もっと色んな映画を見てもらいたいと感じているようです。

このような、日本映画界への想いがある一方で、撮影中は「別の国の映画」というようなイメージで撮るようにしていると言います。その理由は、作品を海外に出していきたいから。自身のような立ち位置の監督は、日本国内だけでは難しいので、映画祭などを通じて海外でも展開していきたいということでした。

▶︎山崎晴太郎とコラボレーションするとしたら?

内田監督は、山崎晴太郎とコラボレーションするとしたら「映画とCMの連動。例えば、役者が一緒で……みたいな」というイメージが沸いたようです。

日本のCMのクリエイティブチームは優秀だと感じているそうで、「単独感が強い」と考えている映画と連動したら面白いものが出来るのではないかと思ったそうです。

また、文化を扱う架空の百貨店でバイヤーをするなら、「需要が無いけど面白い映画」を扱いたいということ。そんな映画を、世に残すためにも、文化百貨店にそういう映画を取り扱う一角が欲しいとのことでした。

【今週のプレイリスト】

▶︎内田英治さんのリクエスト

『Everybody’s Talkin’』 Harry Nilson

▶︎山﨑晴太郎セレクト

『Filima Solo』 Gabriel Olafs

といった所で、今週の文化百貨店はここで閉店。

内田監督の最新作『ミッドナイトスワン』は、絶賛上映中です。まだ、ご覧になっていない方は、ぜひ劇場でご覧ください。

次回は、ロンドンを拠点に活躍されているアーティストの猪瀬直哉さんをゲストにお迎えします。

【来週10/11(日)24:30-25:00のゲスト】

アーティスト 猪瀬 直哉さん

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1988 年神奈川県生まれ 。猪瀬直哉は東京藝術大学の油絵科を卒業し、現在はロンドンを拠点として活動しています。彼 の作品の収蔵先には高橋コレクションやベネトン財団などがあります。猪瀬は、自然界とそこ における人間の強欲な在りかた、それによって生み出される不調和な関係性を探求しています。 細部まで精巧な風景と抽象的な世界を、油絵の技術によってキャンバスに描き出します。彼の 作品は私たちがどう自然と向き合っているのかを問い、またポストモダニズムにおける名画の 役割、そしてそれがどのように変化しているかについて議論しています。

また日曜深夜にお会いしましょう!

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