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キーワードは【再発見】 葬送のフリーレン【好きなアニメを語る】

今年 3 月まで放送されていたアニメ『葬送のフリーレン』は,初回 4 話分を金曜ロードショーで映画のように放送した後,2 クール連続で駆け抜けるという少し特殊な構成でした.そこからは制作スタッフの意気込みを感じますが,それ相応にとても面白い作品です.

この記事では,個人的『葬送のフリーレン』の推しポイントを 3 つ紹介します!


⚠️ 以下ネタバレを含みます ⚠️


推しポイント①:「私はもっと,人間を知ろうと思う」というテーマ性

勇者一行の魔法使いフリーレンは,魔王を倒し,再び長い魔法収集の旅に発ちました.エルフであるフリーレンの寿命は千年を超えるようです.数十年後,フリーレンは勇者ヒンメルの死に立ち合い,ヒンメルのことをもっと知っておけば良かったと後悔することになります.

だって私,この人のこと何も知らないし.
――たった十年,一緒に旅しただけだし.
――人間の寿命は短いって,わかっていたのに,なんでもっと,知ろうと思わなかったんだろう.

#01 冒険の終わり 15:40

そして,フリーレンは新たな旅に出ます.その旅は,これまでの旅とちょっと違う旅.

私はもっと,人間を知ろうと思う.

#01 冒険の終わり 17:40

こうして,フリーレンの「人の心に触れる旅路」が始まるのです.

とある事情(後述)で,勇者一行当時と同じ旅路を辿ることになったフリーレンは,同じ場所を訪問したり,同じような出来事に遭遇したりする中で,過去の出来事を都度都度思い出していきます.

例えば,旅の道中で受験した一級魔法使い選抜試験の一次試験でパーティを組んだラヴィーネとカンネは,幼馴染でいつも喧嘩をしているのに,戦闘となると息がぴったり.そんな二人の関係にフリーレンは当初,疑問を持っていました.

どうして二人は連携が取れているんだろう.不思議だ.

#18 一級魔法使い選抜試験 20:20

しかしその後,フリーレンはヒンメルたちと冒険をしていたときの出来事を思い出します.竜との初戦闘を控えて震えているアイゼン.他の冒険者に倣ってアイゼンを鼓舞しようとしたヒンメルですが,アイゼンがすんなりと恐怖を認めてしまい,話はおかしな方向へ.自然体でいい,冒険の形は冒険の仲間ごとに違っていいのだと,ハイターが諭します.この経験が,ラヴィーネとカンネとの関係を捉えなおし,「人間を知る」ことに繋がったのです.

なるほど,確かに仲間ごとに違うみたいだ.

#19 入念な計画 03:00

別の例も取り上げてみましょう.北側諸国の村で出会ったザインをパーティに誘うフリーレン.そこでかけた言葉は,以前自身がヒンメルに勧誘されたときにかけられたものでした.

僕は/私は今の話をしている.

#13 同族嫌悪 12:20

なぜ頑なにザインを勧誘するのかと聞かれたフリーレンは,その理由を「同族嫌悪」と表現しています.機を逃し時間が経ちすぎてしまっていることを冒険に出ない理由として挙げていたのは,以前のフリーレンも,今のザインも同じでした.だからこそ,自分を動かしたヒンメルの言葉を,今度はフリーレンがザインにかけたのです.

あともう 1 つだけ,ここで絶対に紹介すべきエピソードを.

フリーレン.君は今回の討伐依頼で頑張ってくれたからね.好きなものを選んでくれ.

#14 若者の特権 21:00

アクセサリー店に連れられてきたフリーレンは,ヒンメルに買ってもらう指輪を適当に選びました.その指輪の意匠を見たヒンメルは,何かに気づいた表情.フリーレンの手を取り,指輪をはめます.そう,まるでプロポーズのように.些細なプレゼントで,何を大げさなことをしているんだろう.

時は変わって現在.シュタルクがフェルンに同じ意匠のブレスレットを(うっかり)プレゼントしたことをきっかけにして,フリーレンはヒンメルの当時の想いを知ることになります.

これと同じ,鏡蓮華の意匠の指輪だったんですよね.花言葉は「久遠の愛情」だそうです.

#14 若者の特権 20:00

つまり本作では,フリーレンの次のような姿が描かれています:

  • 過去の経験を通じて,現在を生きる人間のことを知る

  • 過去の経験を通じて,現在を生きる人間たちに影響を与える

  • 現在の出来事を通じて,過去の出来事を【再発見】する

過去と現在が繋がることで,フリーレンは人間を知っていきます.現在だけではだめで,過去があったからこそ,フリーレンは人間を知ることができたのです.つまり,実は大切なことはどれも,過去に経験しているのです.単に見聞きすることと,認識することとの間には隔たりがあります.フリーレンが後悔した過去の旅路は,決して無駄だったわけではありません.新たな感じ方でその価値を【再発見】していっているのです.

話は冒頭,新たな冒険のきっかけに戻りますが,

人間の寿命は短いって,わかっていたのに,なんでもっと,知ろうと思わなかったんだろう.

私はもっと,人間を知ろうと思う.

この二つの文は,少し似ているようで,まったくの別物です.目的語が違うのです.前者はヒンメル個人についてであるのに対し,後者は人間全般に対してです.つまりフリーレンは,本当はヒンメルについてもっと知りたいと思っていたが,ヒンメルが亡くなってしまった今,それは無理なことだから,せめて他の人間のことをこれからはきちんと知ろうと考えたのです.

しかし実際には,現在の旅を通じて,ヒンメルのことを知る機会も多いのです.ヒンメルから,大切なものはもうたくさんもらっていたのです.当時はそれらを素通りしてきたけれども,今ヒンメルの想いを【再発見】することで,ヒンメルについてもっと知ることができているのです.

このテーマ性は,私たちの日常にも同じことが言えるのではないかと感じられます.私たちの日常は,一見意味のないものに思えるのかもしれません.でも,そこにはきっと価値があるのです.もしかしたら何年後かに今を思い返して気づくときが来るのかもしれません.そう考えると,つまらない今を生きることも,きっと素敵だなと思えてくるのです.

ところで,なぜフリーレンは,過去を思い出すきっかけをたくさん与えてくれる,勇者一行と同じ旅路を歩んでいるんでしたっけ.それは,魔王城があった大陸北端の地・エンデに,死者の魂と対話できる場所・オレオールがあるとされているからです.でも,その出典は大魔法使いフランメの手記だけです.フランメは,フリーレンが自身の行いを後悔して人間を知ろうとすることを予言して,この手記を遺していました.もしやフランメは,人生をかけて大きな嘘をついているのではないでしょうか.すべてはフランメの作り話で,魔王城までの旅路をもう一度辿ればいろいろ思い出せるだろうと,魔王城の近くに架空の地・オレオールを据えたのではないでしょうか.フランメは,そういう人な気がします.

推しポイント②:「くだらなくて,とても楽しい旅」

僕はね,終わった後に,くだらなかったって笑い飛ばせるような,楽しい旅がしたいんだ

#06 村の勇者 11:30

勇者一行の冒険でヒンメルが語っていた言葉です.実際,当時の旅も,現在の旅も,とても日常的で緊張感が全然ありません.本当に魔王倒す気あるの!? みたいな掛け合いもたくさん出てきますが,そうやって登場人物が肩の力を抜いていて,いつも笑っているからこそ,それを見ているこちらとしても,楽に見れてくすっと笑えるところがあります.

後世にしっかりと,僕のイケメンぶりを遺しておかないと✨

#07 おとぎ話のようなもの 07:40

オサケ ノンデナイヨ

#14 若者の特権 08:50

文通をしていたからな

#04 魂の眠る地 12:40

といった具合にふざけたおしているわけです.

でも,「くだらなくて,とても楽しい旅」という表現自体は,とても素敵だなと思います.他にも,素敵な言葉がたくさん紡がれています.特にヒンメルは,メリハリをつけるが上手だなと思います.イケメン発言だって,その直後には,大事なことを言っています.

でも,一番の理由は,君が未来で,ひとりぼっちにならないようにするためかな.
――おとぎ話じゃない.僕たちは,確かに実在したんだ.

#07 おとぎ話のようなもの 07:50

ふざけたかと思ったら,すごくいいことを言って.笑って心を全開にしたこちらに,ホカホカを突っ込んでくるような.じんとくるような.これがギャップ萌えというやつなのでしょうか.

推しポイント③:フェルンまじかわいい

まとめ

どんな毎日にも意味があるという温かいテーマ性,くすっと笑える掛け合いと紡がれる素敵な言葉,個性の豊かなキャラクターたち,これらが『葬送のフリーレン』のことが大好きになった主な理由でした.とても話題になった作品でありながらなぜかアニメ二期が発表されていないのですが,きっと制作されると信じて大切に待ちたいと思います!


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