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嘉日、蛙は考えた

しかし、この期に及んで蛙は考えた

このまま儚くなって佳いものか

いつかは還る命とは言え、この惨めな庭の片隅で
腹の斑にはまだ、艶がある

季節が廻れば命も満ちようか

蛙の命は微かな灯火

しかし、五月雨は優しく降り積み、
庭の片隅で下草は茂る

まだ、生きよう
まだ、跳ねよう
と、聞こえはしないか

蛙は呟いた
もしや、腹はまだ膨らむか

高く、低く落ち来る雨粒を遡り、
呟きは天に届いたのかもしれない

薄い瞼を伝わる滴が、答えるように蛙の躰を潤した

日照りの神よ、許せ、まだ往けぬ
雨垂れの神よ、いま一度、拾っておくれ

蛙は仰向けのまま
いま、投げ出す命は蛙のもの
いま、取り戻す命は預けよう
愛しいものたちのために

蛙は幸せだった
この嘉日に、帰り道を見付けたのだから

往かずと生かす、蛙は帰り
灯火を繋げる
繋げた先は、その先は、
語ってもこの庭の片隅に、もはや蛙はいないだろう

bun★jac 2020.06.10

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