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カタツムリ

3時33分を3秒過ぎたところで、
大通りから走行音と車影が消えた

この先は真っ暗闇に続いてる
膝を抱えた道端で、いつも待っていれば
シュルシュルとやって来くる

薄ピンクの透けた殻に房飾りも付けて、
滑らかに這うように
動力は粘液質の燃料で、
行きたい方向に目玉をギョロリと向けるのだ

ノロノロ動いて見えるのに、
追い付けたことがないのはなぜだろう

乗客はどれも一杯で、
空いてるものは、いつもない

眺めていると賑やかなのに音はまるで立ててない
触角を前後左右に振りながら、
大きな巻き巻き貝を自在に動かす

残す跡は、煌めきながらやがて乾いて
空中へとヒラヒラ舞い上がる
虹のような光彩で、まるでセロファン

大通りはいつのまにか、大行進
舞い上がったセロファンが通りのアーチとなっていく

終わりがない、終わりはどこ
探しているうちに意識が遠くなる
そうして、いつの間にか大通りは元通り

3時33分をたった4秒過ぎた頃、
あれはどこに消えたのか

狭間が開くその時刻
大通りで待ってみよ
不思議な乗り物、やってくるから

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文雀 2020.0203

かねてより絵本を出版することが夢でした。サポートして頂いた際には、出版するための費用とさせていただきます。そしていつか必ず絵本としてお返しさせていただきたく、よろしくお願いします。ひとりでも多くのこどもたちの夢見る力を応援したい。それがストーリーテラーとしての役目です。