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【新刊記事公開】『生きもの毛事典』③

 自然科学出版のスペシャリスト「ブンイチ」が編集・制作した『生きもの毛事典』(保谷彰彦:文/川崎悟司:イラスト)は、ほかの雑学事典とはひと味もふた味も違います。
 「気になるわき毛の話」を全文公開。まずは試しに読んでみてください!

5 気になるわき毛の話

 わき毛は思春期のころから生えはじめます。それと同時に、わきの下に特有のにおいが生じます。刺激的なにおいが強いとワキガと呼ばれます。
 このにおいの元は汗腺から出る汗です。ヒトの体には2種類の汗腺があります。1つはほぼ全身の皮膚にあるエクリン腺、もう1つがわきの下や乳首、生殖器の周囲などにあるアポクリン腺です。わきの下のアポクリン腺は、わき毛が生える毛包の中に開いています。エクリン腺からの汗は99%が水ですが、アポクリン腺からの汗は脂肪やタンパク質を多くふくみ、ワキガの原因になります。
 ところが、その汗にはワキガのもっとも刺激的なにおい成分であるチオール化合物がふくまれていません。じつは、わきの下にすむ細菌が、汗にふくまれる無臭の化合物をチオール化合物に変化させて、においを発生させているのです。

わき毛の表面は毛小皮でおおわれ、断面はへん平。

ちぢれているから魅力が上がる

 直毛とちぢれ毛は、見た目だけでなく、毛の断面の形が異なります。直毛は毛の断面が円形ですが、ちぢれ毛ではへん平です。ヒトのちぢれ毛は、水分やいろいろな物質を毛の表面にとどめておくのに役立つと考えられています。わき毛や陰毛がちぢれているのは、アポクリン腺の分泌物を毛にまとわりつかせ、そのにおいを性的魅力として使うためという説があります。

わき毛。わきの下に生える毛。1~5cmに成長する。ふつう陰毛よりもちぢれが少ない。摩擦によって、しばしばすり減る。

参考資料
Rudden M. et al. (2020) Scientific Reports 10: 12500.


毛のおもしろさ、役割を楽しんで!

 『生きもの毛事典』では、最新の研究論文を参照し、むやみに誇張することのない科学的な内容を提供しています。面白おかしく表現することで、本来の意味とは異なる誤った内容になってしまっているほかの雑学事典とは大きく異なる点です。資料一覧に裏打ちされた記事の正確さが、この本の魅力のひとつです。


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