見出し画像

憧れの鳥探しに挑戦! 第6回《今からオオルリを探すには》

Author:髙野丈(編集部)

こんにちは、文一総合出版編集部の髙野丈です。プロバードガイド・石田光史さんの著書『旬の鳥、憧れの鳥の探し方(以降、探し方本)』のテーマに沿って、憧れの鳥探しを実践するこの企画。前回は憧れの赤い鳥を探しに行き、ベニマシコにオオマシコ、イスカのぜいたくな3種盛りを楽しみました。あれから季節は進み、野はすっかり緑が濃くなっています。今、旬の鳥はなんでしょうか。
*参照:
憧れの鳥探しに挑戦! 第1回《ムギマキに会いたい》
憧れの鳥探しに挑戦! 第2回《アオシギを見つけ出せ》
憧れの鳥探しに挑戦! 第3回《降りてこなかったトラツグミ》
憧れの鳥探しに挑戦! 第4回《シマエナガをかわいく撮りたい》
憧れの鳥探しに挑戦! 第5回《赤い鳥3種盛り》

旬の鳥は渡り途中の夏鳥

4月から5月にかけては、身近な公園で美しい夏鳥に出会えるかもしれないチャンスです。なぜなら多くの夏鳥が子育てのため、南方から繁殖地へ向けて移動する時期だからです。なぜ、夏鳥はこの時期に渡ってくるのでしょう。春に気温が上がってくると、多くの植物が葉を展開します。すると、その葉を食草にする虫や、それを捕食する虫も発生します。夏鳥たちは、ひなを育てるために必要な虫が多く、渡りに必要なエネルギーを補給できるこの時期に渡ってくるというわけです。

小さな虫の幼虫を捕らえたセンダイムシクイ

渡り鳥たちは繁殖地まで一気に移動することはできず、緑地や干潟などの中継地に降りて翼を休めます。そこで虫を採食したり、休息したりしながら、繁殖地まで渡っていきます。だから、公園などの身近な緑地が中継地となり、出会いのチャンスがあるわけです。それでは旬の夏鳥を求め、林のある公園に出かけてみましょう。

美しいさえずりがサイン

冬は落葉して鳥を見つけやすかった林も、すっかり葉が茂って探しにくくなっています。林の中の混んでいるところでは観察もしにくいので、空間のあるところで立ち止まり、木々の間を動くものや葉の揺れを目視で捉えましょう。「探し方本」でも解説しているとおり、最初から双眼鏡で探さないように気をつけます。まずは肉眼の広い視野で眺め、動くものを見つけたら双眼鏡で確認・観察するよう、心がけましょう。

「動くもの」はチョウだったり、落葉だったり、留鳥のヒヨドリやシジュウカラ、メジロだったりします。慣れないうちは、目視で夏鳥を見つけ出すのはなかなか難しいかもしれません。そんな鳥見初心者におすすめなのが、鳴き声で探すことです。繁殖期であるこの時期、多くのオスは中継地でもさえずります。美しい歌声を頼りにし、声のする方へ近づいていって探してみましょう。さえずっている間はあまり移動しない種も多いので、すぐ近くで歌が聞こえても、姿を見つけられないこともあるでしょう。そういう場合でも、ひとしきりさえずったあとには違う枝に移動するはずなので、あきらめずにねばりましょう。歌が終わった直後にすっと飛んだものがいれば、お目当ての夏鳥である可能性が高いといえます。

さえずるキビタキのオス。林のある公園で見ることができる

旬を過ぎたら繁殖地へ

春の渡りにも、旬があります。オオルリが渡る時期は比較的早く、東京の平地林で見られるのはおおむね4月いっぱいです。ホトトギスやサンコウチョウ、オオムシクイなどが渡る時期は比較的遅く、だいたい5月中旬以降です。キビタキのように、比較的長い期間(4月中旬頃から5月いっぱいくらいまで)見られる鳥もいます。毎年同じ場所で観察を続けることで、旬の鳥がわかるようになっていくでしょう。

さて、夏鳥の中でもとりわけ瑠璃色が美しいオオルリを探すには、どうすればよいでしょう。今は5月なので、身近な公園で見られる可能性はどんどん低くなっていきます。もう今シーズンは、あきらめるしかないのでしょうか……。そんなことはありません。公園では見られなくても、繁殖地に出かければ観察することができます。ということで、例によって探し方本をひもといてみましょう。

『旬の鳥、憧れの鳥の探し方』オオルリの探し方は4月の05で解説

1 4月に林のある公園で渡り途中の個体を探す
すでに書いたように、5月に入ってしまったので平地の公園で出会える可能性はとても低くなってしまいました。

2 5月以降は渓流や沢の流れる林を探す
オオルリは渓流沿いの崖などに営巣します。渓流や沢の流れる山地林へ行ってみましょう。なわばりをもつ個体に出会えるはずです。手がかりはさえずり。誌面に掲載している2次元コードをスマートフォンで読み取ることで、オオルリのさえずりの音声データを聴くことができます。

3 さえずりが聞こえたら、目立つ木の梢などを確認する
耳を澄まし、沢や渓流の流れの音の向こうから聞こえてくる美しいさえずりを聞き取りましょう。オオルリは木の梢など、目立つ位置でさえずることが多いので、さえずりさえ捉えられれば、見つけるのはそう難しくありません。オスは目立つ位置で朗々とさえずりますから、声の聞こえる方向を見回し、そのような場所を確認してみましょう。うまく見つけることができたなら、しばらく観察してみましょう。木の梢から飛び立ち、空中で虫を捕らえて再び元の木にとまるといった行動が観察できることでしょう。

オオルリは姿も声も美しい

オオルリはとても美しい鳥ですが、とくに珍しい鳥ではありません。まだ見たことがなく、憧れているという方は、この記事を参考にして探してみてください。ちなみに夏鳥であるオオルリを観察できる期間は意外と長く、秋には身近な公園で出会える機会が再び訪れます。繁殖を終えた夏鳥が、今度は南方へ戻っていくからです。探し方本では秋のオオルリの探し方も紹介していますので、参考にしていただければ幸いです。次回はオオルリ以外の青い鳥探しに挑戦してみたいと思います。乞うご期待!

Author Profile
髙野丈

文一総合出版編集部所属。『旬の鳥、憧れの鳥の探し方』(著:石田光史)の担当編集者。自然科学分野を中心に、図鑑、一般書、児童書の編集に携わる。その傍ら、2005年から続けている井の頭公園での毎日の観察と撮影をベースに、自然写真家として活動中。自然観察会やサイエンスカフェ、オンライントークなどを通してサイエンスコミュニケーションにも取り組んでいる。得意分野は野鳥と変形菌(粘菌)。著書に『探す、出あう、楽しむ 身近な野鳥の観察図鑑』(ナツメ社)、『世にも美しい変形菌 身近な宝探しの楽しみ方』(文一総合出版)、『井の頭公園いきもの図鑑 改訂版』(ぶんしん出版)、『美しい変形菌』(パイ・インターナショナル)、共著書に『変形菌 発見と観察を楽しむ自然図鑑』(山と溪谷社)がある。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?