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プリンセスという夢 〜『Go! プリンセスプリキュア』39話 感想〜

プリキュアシリーズ第12作目『Go! プリンセスプリキュア』は今月ようやく4クール目に突入しました。この時期はクライマックス突入への高揚感と、1年が、というかひとつのプリキュアが終わってしまうことへの寂寥感が入り混じる季節ですね。私だけでしょうかね。

というわけで先日放送された第39話の感想を書いていきたいと思います。批評とかは書けません。

『Go! プリンセスプリキュア』第39話は、いわゆる「神回」ポジションでした。前話で強く絶望してしまった主人公、はるかの立ち直りから、より強大な力を手に入れる流れは作画も相まってたいへん素晴らしかったです。

ただ、私は普段アニメ、とりわけプリキュアに関しては深く考えて見ないで楽しむことをモットーとしているのに(そのとき見たものをそのままで感じたいので)、今回はどうしても考えなくてはもやもやするシーンに出会ってしまいました。そのシーンに入ってから39話の終わりまでずっと考え続けて少しだけ納得のいく答えにたどり着けたので、そのことについて書いていきたいと思います。

はるかの夢はプリンセス。なんの比喩でもなく本当にプリンセスになることを夢に見ています。プリキュアの仲間や友達の夢は、トップモデル、親のあとを継ぐ、絵本作家など比較的一般的でわかりやすい(達成も現実的に不可能ではない)中で、はるかだけは「プリンセス」という、少なくとも我々から見て現実的ではない夢を持っています。実際のところ作中でも、小さいころ男子にからかわれるなど、プリンセスという夢を現実的と見ない描写はありました。

ただ、これまで(39話まで)はるかの夢の理由は語られてきませんでした。プリンセスになるのだという情熱やその過程での努力の様子は話のメインとなっていたほどなので、「プリンセス」に中学生になっても固執するのであればそれを抱き始めた理由の一つや二つあるのではないか、と考えるのが妥当だと思います(ただ、今まで3クール分ずっとそのことに触れられなかったので、私の中で違和感が消えてきていたのも事実です)。その理由(もしくはきっかけ)が39話でようやく紐解かれることとなりましたが、それは幼少期のはるかがプリンセスに抱いていた「キラキラかわいいから」というものだけでした。

すごく腑に落ちなかった。
はるかの夢は明らかに他の人とは違うから、この「悪堕ちから立ち直るタイミング」に夢を持った頃の回想シーンが持ってこられたことで、特殊な夢にはそれ相応の理由が語られるのではないかと期待してしまっていました。それなのに、上述の通りの理由に、思い出したはるか本人も「それだけ…?」とコメントしつつ、夢と夢に向かっている自分を思い出しただけで、深い絶望に堕ちていた状態から自力で立ち上がりました。いつも前向きなはるかを、絶望に堕とすきっかけになるほどだったカナタの言葉(後述します)もなしで。だからこそ、すごく不思議な流れでした。というのも、夢を追いかけるのが全て、みたいな少女が夢を否定されたのに、誰かの慰めや激励も何もなく、自分の中で全てを終わらせて立ち直るなんてことがあるとは思えなかったからです。はるかの心はどこまで強いのか。「夢」ってこんなにも大きい力を持っているのだろうか……?

カナタは異世界の王子様で、かつて幼いはるかの夢を肯定してくれた人でした。諸事情があって記憶をなくしたカナタが、前話(38話)で敵と不利な状況で闘っているはるかを見ていられず、「そんなに傷ついてまで夢を追いかける必要性はない」、「君はプリンセスにならなくていい!なれない!」という言葉をかけていました。夢を認めてくれたはずのカナタに夢を否定されてしまったことで受けたショックは、相当なものでした(プリキュアに変身できなくなるほど)。
 
きっとはるかにとっては、もう夢それ自体は大した問題でないのかもしれないのだと思いました。大した問題でないというのは、カナタの言葉のように「夢を諦めた」ということではありません。はるかがこれまでプリンセスという夢に向かって本当に頑張って努力してきたこと、そして努力している過程で得たものや友達の存在が生きる(そして、プリキュアとして闘う)原動力に代わっていたみたいでした。カナタの言った「夢は君の全部」というのは、きっとそういうことなんだろうなあ、と。

だから、はるかはたとえプリンセスになれないことになったとしても、もう絶対に絶望することはないのでしょう。はるかの歩んできた道が、これからの困難を全て支えていくことになるのだと思います。それに気付けたから立ち直れたのだし、そんなはるかは強い。


私がこのシーンを見てすぐに理解が及ばなかったのは、私の夢がもうとっくに死んでしまっていたからなのかもしれません。夢に向かって歩むという尊い経験がないから、そのことがもたらす強い力にすぐに思い当れなかった。のかも。

もうすぐ12月。残された話数ももう数少ない。次回作も発表されました。寂しいですが、『Go! プリンセスプリキュア』はまだまだ大切なことを教えてくれそうです。そんなプリキュアが私はこれからもずっと好きです。

引用した画像:『Go! プリンセスプリキュア』39話より
(C)ABC・東映アニメーション

著: てんか

自己紹介: プリキュアになる夢を諦めつつ就活が嫌だ嫌だと夜な夜な泣いているダメ人間です。
グラーフ・ツェッペリンちゃんを手に入れたくて艦これを久々に開きましたが風邪と独検の勉強に阻まれる。わたしの未来はどっちなんだ…

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