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こんな時期でも盛況の「Independent東京2021」。出展して感じたこと、いろいろ。

2021年8月7日、8日に開催されたアートフェア「Independent東京2021」に出展しました。持ち込んだ作品は、「なむしばられぼさつまんだら」であります。アートフェアというのは、自分が出展しても面白いし、出展者同士の刺激や、来場者とのやり取りがやっぱり楽しいものなのです。

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やはり現代美術の文脈に則って制作された作品が多いので、ここを見ればどんな傾向の作品がメジャーなのか、よくわかります。あー、これはあの作家の影響を受けているとか、こういうコンセプトでできているのか、などなど、もう評論家や先生と同じような還暦を過ぎた年齢の小生には、なんとなく分かるものなのです。

私自身は体系的な美術に関する教育を受けていません。大学は文学部でしたし、その後も美術には興味はありましたが、いろんな本や画集を乱読、乱観するだけでした。ただ高校生の頃、現代美術の全集本が近所の絵の先生の所にあって、ポロック以降の作家や作品を見ていたという経験はありましたが。

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ここに出展している若い人たちの作品を見て行けば、今の芸大や美大が何をどのように教えているか、ということにも結び付きます。そして今のギャラリーの方々の価値観が規定されていき、ひいては日本や世界のアートマーケットを形成していくのだろうと感じました。

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写真についても、やはり体系的な教育を受けていません。18歳の時、東京写真大学(現在の造形大)で開かれた、ワークショップに参加したことがあるくらいです。その後、同じように乱読、乱観によって自分なりの写真表現を勝手に考えてきたように思います。

そう考えると、私が展示した「なむしばられぼさつまんだら」は、どこでも教えていないジャンルの作品です。宗教画?写真?コラージュ?マンダラ?掛軸?なんじゃこりゃー?ということになってしまいます。うまく一つのジャンルとして規定できない作品ということ。いうなれば見る人を安心させない作品ということであります。

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たとえば宗教画の要素が近いと考えるとします。このマンダラを前にして、お坊さまが「人間にはその身や心を縛り付けるカルマ=因縁=業というものがありまして・・・」と説法すると、みなさんはフムフムと納得するのです。「カルマはひもで表現され、人間をがんじがらめに縛ります。しかしちょっと心を落ち着けて、手を合わせ合掌するわずかな時間があるならば、その人は霊的にちょこっと救われていくのですよー。そんな積み重ねを、日々の暮らしの中でしてくださいねー」となれば、これは立派な説法になるのです。たとえて言うなら、お坊さんが地獄絵を前に信者さんたちに善行の大切なことを説明するような感じでしょうか。

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このような絵は、どの芸大でも美大でも教えていないわけですから。結局、私の作品「しばられぼさつまんだら」は、孤立無援の作品として、不可思議な宗教作品として、ぽつねんと現代美術のイベントの中に展示された、というわけです。

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フェアが終わって、片付けながら「こういう作品はお寺に寄進したらどうなんだろう」などと考え始めてしまいました。その昔、絵師や仏師が寺院からの依頼を受けたり、あるいは自発的に寄進したりして、寺や神社に美術品が蓄積されていくようなことが、今の時代に会ってもいいなあ、などと考えてしまいました。

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アートフェアは楽しいです。一般の社会だとこれだけの作家さんたちが一堂に集まる場はないわけですから。老若男女の作家さんたちとお話しするのはやはり楽しいものです。いろいろな志を持った人たちが、アートフェアという一つの場に勢揃いするということは、やはりとても素敵なことなのだとしみじみ実感した日々だったのでした。

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