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盛岡 日々好日


郷ひろみが65歳の誕生日を迎えたと言うニュースを見た。思えば、郷ひろみや矢沢永吉が、若さを売り物にショービジネスを続け、沢田研二が、年相応のダンディズムを披露している。

毎年毎年、歳は重ねるしか無いのが、生き物だ。2005年のモレスキンのノートがあった。日記と言うよりメモや殴り書き程度のものだが、7月28日から二泊3日で、盛岡と仙台に行った証拠が残っていた。霞んだレシートやスタンプなどだけだが、痕跡があった。

泊まったのは、盛岡の旅染屋『山いち』と言う旅館だ。盛岡に着いて、旅館案内のパンフレットで「旅を愛して 宿に恋して」と言うキャッチフレーズで決定。直接電話をかけたら、空いていた。ふらり旅の醍醐味だが、計画のない所にサプライズが待っている。

旅館までの道のりを教えてもらった通り、バスに乗り、バス停で降りると、旅館の主人がバス停まで迎えに来てくれた。盛岡駅から30分の距離は、こんなに遠いのかと不安だったが、着いた。
「こんなに遠いの、牧場かどこかに行くのかしら」と妻が心配したほどだ。
「そんな訳ねえだろ」
関西人ならもっと面白いツッコミを入れるだろうと思った。

旅館は、リニューアルしたらしく、随所に若い感覚で、おしゃれにシンプルになっていた。部屋に通されたが、トイレも風呂もない、それが気に入った。

早速、温泉に入ると、昔がながらの蛇口や湯船が旅情を誘う。ちょっと熱めの源泉は、新幹線で窮屈な思いさせた身体に滲みる。

料理も森岡特産の物をふんだんに使った豪快なものだったと記憶する。特に岩手牛は、最高の味だった。忘れられない味の一つになつた。しかし、ビールとお酒で記憶が無いのが残念だった。

「昨夜、調べたの。『盛岡手づくり村』と言う施設があるそうよ。なんでも、南部曲り家(まがりや)があって、昔の家屋が見学できるそうよ。それに、南部鉄器の鉄瓶を買いたいの」
旅モードの妻が嬉しそうに解説してくれた。

『馬産地であったこの地域特有の住居を移築したもので、手づくり村にある曲り家は江戸時代後期に建てられたものと言われています。南部鉄器・南部せんべい・盛岡三大麺・地酒など盛岡地域の特産品をはじめ岩手県内の特産品(約4,000種類)を販売しております。』とパンフレットに書いてある。

早速現地で南部鉄器の鉄瓶と風鈴を買って、
市内に戻った。

「わんこ蕎麦より、冷麺が食べたいの」と言われ、賛成した。食いしん坊としては、味のないワンコ蕎麦より味のある冷麺の方がいい。大勢で来たら、わんこ競走で勝敗がつく方が面白いに決まっている。その点では、名物を逃したと言う悔いはない。

石川啄木と宮沢賢治の誕生の地だけあって
文化の香りが街中にする。民度も高い街と言う印象を強く受けた。駅前の旅行パンフレットは、「なんだか、横浜旅行が圧倒的に多くない。東京じゃないんだね」と妻も驚いたほど横浜人気だった。それだけでも、盛岡が好きになったしまう。

「今日、仙台で泊まろうか」
「ノモも新潟だしね。3人上手くやってるかな。」
「意外に上手くやってらと思う」
というのも、息子は、妻の年老いた両親と3人で、義父の故郷に、三泊四日の親戚めぐりを含めて、旅行の最中だった。その間隙を縫って二人旅をしていた。

「ふらり旅の面白さは、予想も付かない場所に行けることだとね。降りたら、物語の始まりだから」
「どこに行っても、旅をしていると思う。隣町の谷戸山公園に行っても」

旅と言うか、旅行と言うか、散歩と言うかは、別にして、毎日毎日が、まだ見ぬ旅である事は確かだ。

予想や予測の付かない毎日、それこそ旅の一つかも。笑われるけど。日々好日。


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