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いざ鎌倉へ


なぜか、瑠美子とたった2人だけになった。
深夜喫茶で一晩過ごすことになった。夜明けが近づいた頃、このまま、別れるのも気がひけた。
「しかし、よく飲んだ。何処かにいく」
「鎌倉に行きたい」
瑠美子は、くだらないギャグでも笑ってくれる総務課の事務の女の子だ。どうして、一緒にいるのかも分からない。多分、気が合うのだろう。そうとしか、言いようが無い関係だった。

その2人が逃避行のようにいざ鎌倉へ

小田急で藤沢に出て、江ノ電で、鎌倉まで行くのが、デートコースだ。江ノ島駅を過ぎて、カーブの先から路面になる。腰越駅を過ぎると、海が拡がる。このパノラマこそ湘南だ、女の子は、太平洋の雄大な胸に抱かれた瞬間を感じる。稲村ヶ崎を超え、極楽寺に着く頃は、古都、鎌倉の風情を感じる。大仏のある長谷で、どっと乗客が乗り降りする。
鎌倉駅に吸い込まれるように電車が到着した。
「何処に行きたい」
「どこでもいいよ」
全てを任せるように瑠璃子は、私を信頼していた。

私は、外目にはかっこいい、バリバリのプロデューサーに見えたはずだ。彼等の方が部下より数十倍憧れの存在だと肌で感じた

昭和初期に建てられた古民家をお店にした「こ寿々(こすず)」で、手打ちそばと名物のわらび餅を食べる事にした。老舗っぽさと鎌倉感で、瑠璃子は感涙していた。

ありがちな、八幡宮に立ち寄り、小町通りを抜けて、JRの鎌倉駅に着いた。横須賀線で、亀有まで帰ると言う瑠璃子。私は、横浜で降りしまった。未だ二十歳そこそこの娘と楽しい時間を過ごせただけでも嬉しかった。

それからしばらくした、また総務部の連中と会社のある五反田の居酒屋で飲んだ。確か十人位の男女がいた。森部長や早見係長だけが男で後は女子ばかりだった。なぜ、私だけ呼ばれたのか分からないが、同席していた。真面目な大人達ほど、無礼講の飲み会ははっちゃけるものだ。

いくら飲んだかわからないが、終電間際まで飲んだ。「妹のところに泊まるんだけど、一緒に来る」と瑠美子にこっそりと誘われた。間髪入れずに
「うん、頼むは」と返事をした。

不倫みたいで、ワクワクする。

妹の住んでいるアパートは、戸越銀座の近くにあった。酔った二人を受け入れざるを得ない妹は、若干怒っている。当たり前だ。


寝静まって、留美子のおっぱいに手が出た。
「お姉ちゃん、うるさい」と妹が止めた。
危なく、男女の関係になりそうだった。
そういえば、昔もあった。おんな友達の家で雑魚寝をした時、一緒に飲んだ友達の姉ちゃんが、ちょっかいを出してきて、その気になった瞬間友達に見つかってこっぴどく怒られた。

二度も未遂に終わった。
大体、大勢が寝ているところで、何かしようとする行為が駄目だ。

ある男友達が、
「そのうち、貴方の子供がこんなに大きくなったのよと家に訪ねてきたら、どうする」

ホラーよりこわい現実。やっぱり未遂に限る。

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