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チャコとハグしたい


雑貨街をチャコに連れらるままに、雑踏の中をなにかを踏むように歩く。衣料品の総本山、馬喰町問屋街・横山町問屋街に現金問屋概要がある。そこを歩いて進んでいた。

「ここにザ・ギンサに似た商品なんかがあって安いのよ」とチャコが指刺したところは、小さな店だった。
「何だか、よその国は来たみたいだ」と驚きをあらわにした道雄。
ただ、物珍しさで歩くのも妙である。市価の半値くらいで、一般の小売りお断りの店が圧倒的に多い。
チャコに結構大きな声で「有名な雑貨屋さんの社長もよく買い付けに来るんだって」と言われ、成る程と納得した。
‘’チャチーもの‘’、”ニセモノ”、‘’ロクでもないもの‘’が特に目を引いた。「人間の血が通っているからだろうな」と道夫は、感心した。

チャコは、成城学園に住む良家の子女だ。母親は、大手アパレルのチーフデザイナーで、現役で活躍している。父親は、親の代からの金持ちで、駅前周辺の不動産管理をしている。そんな彼女が、会社の同僚、藤間一也と結婚した。盛大な結婚式に道雄も出席した。

どちらかと言うと、道雄とチャコの方が、カップルのように感じする受けたほどほど仲が良かった。そのチャコが、新婚旅行から帰って来てすぐ、離婚した。派手で、赤いミニドレスが似合う活発な女の子だ。昔で言う成田離婚というやつだ。スピード離婚が身近で起こった事に道雄は驚いた。

「何で、結婚式前に辞めなかったの」
「だって、日取りも場所も決まっているし、それと、招待状も出してしまったから、皆んなに迷惑かけるから、出来ないよ。」
「言い分も分かるが、新婚旅行から、直接家に帰って来た両親の方が、驚いただろう」
「それは、パパにもママにも前から話してあったから大丈夫だったの」

引き止めない親も親だが、強引に離婚した娘も娘だ。「じゃあ、離婚パーティを盛大に開こう」と真面目にチャコの仲間が計画した。


藤間を呼ぶか呼ばないかで、議論したという。呆れるばかりの連中だ。まるで、‘’チャチーもの‘’、”ニセモノ”、‘’ロクでもないもの‘’が集まる雑貨屋さんみたいだと思った。

みんなが、真面目になり過ぎて息苦しさを感じる。いつも、SNSで見張られているのような違和感がある。

思った通りに生きたい。
思った事を素直に実行したい。
ちょっと前まで、平気でクレジーな事がまかり通ったはずなのに、外見や世間体ばかりが気になる。

やっちまえ、アーメン。好きな事をしよう。
道雄は、好きな女の子全員にハグをすると決めた。これをクレジーと言わず、セクハラ、犯罪と言う。その方がクレジーだと道雄は、怒る。

なんか、チャコに会いたくて仕方ない。
そして、思いっきり、思い出と共にハグしたい。ささやかな道雄の夢となった。不思議ちゃんに会いたい。

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