書き出し自選 昼行灯の5作品(昼行灯)

明けましておめでとうございます。昼行灯と申します。
今回、もんぜんさんからバトンを受け、書き出し自選をさせていただきます。
人に見せるための文章なんて、学校の作文くらいしか書いたことが無かった自分に、まさかこのバトンが回ってくるとはっ。驚きと喜びのあまり全身の毛が一晩で抜け落ちました。そんな素人に毛も生えてない私の自選1作目は、コチラ。


駐めておいたゴリラが居ない。
(第177回 規定部門 「サル」)

初めて手応えと結果が結びついた作品。
投稿を始めた当初はアイデアを出すだけで楽しく、思い付きをそのまま投稿していました。が、無毛1年生が手ぶらで書いていても、当然なかなか採用には手が届かない。これは「小説の書き出し」、「共犯文学」なのだと、やっと意識し始めたのが、このゴリラを書いた頃でした。
採用していただいたこと、後に文芸ヌーに投稿することになる「愛ゴリラ」の原型になったことを合わせて考えても、この時期の試行錯誤の方向は、大きくは間違えていなかったのだろうと思います。
続きまして、2作目は時系列に沿ってコチラ。


午前五時。竹林に白い軽トラ。擦り傷のある太腿。雀の声。
(第178回 規定部門 「官能小説」)

日本画の伝統的なモチーフ、竹雀図の中に半裸婦像を置いたら官能的になるだろうと書いた作品。
書き出し小説を始めるずっと前から、言葉の羅列に強く惹かれるものがありました。モンティパイソン第3期のチーズショップや野坂昭如「火垂るの墓」の闇市の描写が強く印象に残っていて、影響を受けていると思います。
この作品では言葉の羅列を使い、風景の大きなところからクローズアップしていき最後に音声へ振る、映像的な効果を狙いました。
言葉の羅列を使って他にどんな表現ができるのか?これからも色々と試していきたいと思っています。
3作目は、2020年に入ってからの採用作品です。


わたし、夏子。北条政子から一文字もらって、夏子です。
(第187回 規定部門 「バカ」)

夏子は、90年代の漫画やドラマに登場しそうな純粋度100%な主人公をイメージしています。親のネーミングセンス、それを何の疑いもなく受け入れている夏子、2代続けてバカだなぁと思いながら書きました。
しかし採用されてみると、「怖い」というコメントが複数。どうしてかな?と、もう一度夏子をイメージしてみると・・・。夏子の登場シーン。この挨拶をする時のカメラ目線はどこまでも純粋で、真っすぐで、真っすぐ過ぎて・・・あれ?こっちを見てるはずなのに目が合わない・・・この子、怖いっ!
リアクションを貰うことで自作の気付いてなかった点を発見できました。
作品が自分の手を離れ、予想外の方向へズレていく様はとてもスリリングで楽しい。作品を人前に出さなければ起こらない現象。それを体感して、もっともっとアウトプットしたくなりました。
4作目は今回の中で一番新しい作品です。


彼女のあらすじの中に自分を探す。
(第196回 自由部門)

古今東西に異世界侵入物の名作が多くありますね。古典的なモチーフや手法を自分が扱って何ができるか?これも楽しい実験になりました。
結果、異世界に侵入は・・・してないな?と言う作品になりましたが、出来上がりが良ければ全てよしです。
ラストは一気に回を遡って、私の最初期から1作。


ピンポンダッシュ。頼んでもいない出前。いくら分別しても戻ってくるゴミ。殿様の頭に開国の二文字がちらつき始めた。
(第154回 自由部門)

「分からない」が魅力となって読み手を引っ張っていく、そんな作品が好きです。(作者は作品の意図を把握していなければ、と思いますが。)
なので、天久さんからこの作品へいただいたコメント「世界観が分からないだけに気になる。つづきが読みたい。」が、今でも嬉しい。
しかし、そういった作品を「狙って」書くのは、今の自分にとってはまだ難しい。「ピンポンダッシュ・・・」は、無毛1年生がたまたま書けてしまった作品だと思っています。「分からない」が魅力の作品を狙って書くために必要な地力を身に付けようとじたばたしている、というのが現状です。


作品の紹介は以上です。
書き出し自選のバトンは、ずっと憧れておりました。が、受け取ったら受け取ったで、飢えた徹子の部屋に放り込まれた新人芸人のような気分になりました。それもここまで書いてしまえば、次回バトンを渡す作家さんの紹介を残すばかり。早々に筆を置きましょう。
昼行灯の書き出し自選、最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。


次回の書き出し自選は、さくさくさんです。
ずっと前からこの方の自選を読んでみたかった!書き出し小説大賞の発表がある度に今度はどんな作品を・・・?と名前を探してしまう作家さんの一人です。

それでは、さくさくさん、よろしくお願いします。

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