書き出し自選・タルク石の5作品（タルク石）

今、会いに行ける書き出し小説家、タルク石（たるくいし）です。
会いに来てくださったカズタカさんよりバトンを賜りましたが、自分でもビックリするぐらい時期尚早と思いつつも、修業時代に言われた「出来ませんから始まる接客は無い」という言葉を思い出し、恥を忍んでいかせていただきます。
ハンドルネームですが、シッカロール・ベビーパウダーだと耳馴じみがあると思います。
今は使うかわかりませんが、赤ちゃんの頃のオムツ替えの時に股間にポンポンされてたアレです。アレの原料です。
ベビーパウダーの匂い好きです。ノスタルジーです。
ちょっと粉っぽくなったので始めます。

髪を梳かしてあげるね、服も着せ替えようか、どこを舐めても苦いね。

（第248回　規定部門:夫婦）　

デビュー作です。リカちゃん人形です。
推しを「嫁」という文化があるのでどうかな？と。
内容的に妻や子供たち及び3親等ぐらいまでは、書き出ししている事を内緒にしておこうと固く決意させてくれた感慨深い作品です。
初採用の嬉しさのあまりツイッターで浮かれていたところ、フォローしていただいてる近所の出版社・荒蝦夷の土方正志さんに見つかり、地元新聞に連載されているエッセイで取り上げていただいたのも良い思い出となりました。

笑み。ネギ。

（第250回　規定部門:やさしい）

顔全体→口元アップ
空耳アワー的なカメラワークをイメージ。
好意を寄せている相手の歯間に佇む微塵切りの青葱。さっき食べた中華か。
あなたは伝えますか？伝えませんか？
おもんぱかる事はやさしい。はず。

人類はアシモフの盾をかざした。

（第253回　規定部門:シンギュラリティ）

お題発表の時に初めて知った言葉、シンギュラリティ。
手掛かりを繋いで考え、たどり着いたのが人造人間キカイダーとアシモフの三原則。
思いがけずSFになりました。石ノ森章太郎先生ありがとうございます。

皆さんが書き出しを考える時は、どんな環境で考えてますか？私の場合は通勤の自転車を漕いでいる時です。休日や悪天候を除けば毎日、片道5〜6kmを無理せず走り、季節の変化や路面の異物などを感じながら1つの言葉をぐるぐると考えてます。
かの水木しげる先生もアイデアに行き詰まった時は自転車に乗って絞り出すと描いてらしたので勝手にシンパシーを感じています。
では、後半いきます。

砂肝の下拵えをしながら僕はちょっとだけ内股になった。

（第255回　自由部門）

スーパーの精肉コーナーに並ぶ国産若鶏砂肝、見かけると「お、おう…」となります。
買ってきて台所で切り込みをいれていると「ひぃぃぃぃ」となります。
初めての自由部門での採用でコメントも付き、天久先生のキンタマも縮んでいただけた？ようなので本望です。

薬師如来と向かうアムステルダム。

（第256回　自由部門）

落語のまくらで出てきたアムステルダム。
パルプフィクションでトラボルタのセリフにアムステルダム。
使ってみたかったアムステルダム。
良くない薬のイメージが強い都市だったので、一緒に行くなら誰が良いかをボンヤリと考えて、脳内オーディションで薬師如来に決まりました。なんとなく相殺して貰えそうだし。と生まれた作品です。
これも「めちゃチル」とコメントいただき、踊り出してしまいそうでした。

これが私の5選になります。こうして並べてみると、体験したことがベースになる事が多いですが、言い換えれば体験したこと以上の物は創れていないように感じます。日々の出来事を大切に感じ取りたいです。

お恥ずかしい話ですが、活字を多くは読んできておりません。なので文学的な表現ができているとは思ってないです。大喜利的なアプローチになってしまいますが、何か魅せる事ができればバイプレイヤーのような書き出しが紛れ込んでもアリなのでは？と自分を納得させています。
採用回数は、やっと二桁になったばかりですが、少ないながらも代名詞になるような記憶に残って貰えるような作品を生み出せるように励みたいです。
デビューする少し前になりますが、ツイッターで書き出し作家さん達の名前を見かけて速攻でフォローしまくりました。
その頃、せきりょうさんが不定期で開いていたスペースに空気も読まず、しれっと入って聞き耳を立てていましたが、ぬるっと輪に入れて貰ったのが2022年10月ぐらいで、まだ半年と経っていません。日が浅い新参者を構ってくださる兄さん姐さん達（デビューが早い先輩達は芸人《文芸人》システム適用で勝手にそう呼ばせてもらってます）がありがたいです。ありがとうございます。

最後になりますが、風船で顔剃りの練習をしたことはありません。

先輩への感謝と床屋として伝えたい事も書けたので感無量です。

次は早百合姐さん！お願いします！