書き出し自選・xissaの5作品(xissa)

xissaです。きさ、と読みます。
ほんとにそう読んでいいのかどうか、私も詳しいことはわかりません。
検索すると「もしかしてissa?」と訊かれますが私はDA PUMPではありません。USAではないのです。
私のxissaは
ここの、 

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ここ
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です。行ったことはありません。今回はそんな私の五選です。


もう会えない人にあやまりたいときは、どうしたらいいんだろう。(第26回 規定部門「怪談」)

お題が出る前にできてはいたものの、重たいなーと思って投稿できずにいた作品でした。
ずっと下書きに残っていたのを、「怪談」だったらこれくらい辛気くさくてもいいかも、と思ってこの回に投稿したのでした。
誰かに読んでもらう、ということを考えなければ、怪談でなくても気に入っていた作品でした。「怪談」になったとたんものすごくほめていただいて私自身もいいものを書いたような気になったのですが、これ、ただただモチーフに活かされた作品なのかもしれません。


焼香の間も気持ちは明後日の方を向いていた。明後日は火曜日だ。火曜日の約束が、僕らにはあった。(第119回 自由部門)

余計なことを出来るだけ排除して最短距離できっちり伝わるように書きたい、という気持ちはいつもあります。読むまでもなく、見たまますぐ意味が流れ込むのが理想、と思うくらいには生き急いでいます。ただ時々、ちょっと長いのも書いてみたい、と思うこともあるのです。
これは三つの文章の重なり方がとても気に入っています。リズムも好きです。書いた時には気づいてなかったんですが今見てみると、所在無さとか茫然とした感じとかもこの希薄な重なりの中に醸せてるような気さえしてきます。

キミの食べるはずだった菜の花が咲いてしまったよ。(第71回 自由部門)

冷蔵庫の中の菜の花が咲いた、ということを書こうとしたら、菜の花、と思ったとたんに佐伯さんの声が浮かびました。
佐伯さん、というのは書き出し小説のイベントの時に朗読してくださる佐伯さち子さんのことです。
そうしたら、あの声で「キミ」って言ってもらったらすてきじゃあない??と私の中の女子たちがきゃあきゃあし始めたので、それじゃ、とうんと佐伯さんの声に寄せて書くことにしました。
その人のために書くわけではないのですが、書いてるうちに、これ、この人の声で聞きたい!と思って、雰囲気を寄せてしまうことはたまにあります。

ぼくはきっぷ。かみなりにおへそあげたねこ。(第134回 規定部門「児童向け」)
これは矢野顕子さんの声のイメージ。
今日から、虫。『変身』(第141回 規定部門「帯文」)
これはいとうあさこさん。

この「菜の花」は、イベントで実際佐伯さんに読んでいただいて、あまりの素朴なうつくしさに、泣きそうになった思い出があります。

いつまでも、いつまでも手をふっている。(第99回 規定部門「バカ」)

規定部門は、モチーフがあって毎回それについて考えて書くのですが、たまに、それを書く、というより、「そのモチーフを踏切板にして飛ぶ」みたいな感じになることがあります。
踏切板があるからこそ届く場所がある、ような気がします。なかなかそうはいかないけど。
モチーフがないと立てないのに続きを書くには自立し過ぎててどうしようもない作品ですが、これ、とても気に入っています。
気持ちよくばぁんと遠くに飛べた、と思っています。

モノレールは夜を滑る。(第155回 自由部門)

書き出し小説が始まる時、サンプルで読んだのがすごくおもしろくて、あんなの書きたい!と思って始めたはずなのに、私はあんまりおもしろいのは書けませんでした。
私がおもしろい人間ではないので、もうそれはしょうがないのです。
おもしろさも華もない私が、爆発的におもしろいぴかぴかした人たちの間でそういう人たちをせめて「困らせないように」するにはどうしたらいいかを考えていたら、作りがめきめき地味になっていきました。
書き出し小説はおもしろい、楽しいものですが、それだけではない、広さ、みたいなのもあるような気がしています。そしてそれは私にはとてもありがたいことだったと思います。
「地味な作り」の作品はたくさんあってわりとどれも気に入っています。今回は一番あたらしいのを。
こんなのを見つけてくださって、いい!と後押しし続けてくださった天久先生には感謝しかないです。


連続書き出し小説(第13回 規定「忍者」の回。1本も入選しませんでした)とか、
解散目的で大伴さんと組んだ書き出しユニット・サイズ(第60回 2作品入選)とか。
こっそりいろいろ楽しんでます。あと私一人で普通に生活してたら絶対縁のなかったような人たちに会えたり行くことなんかないような場所に連れていってもらえたりしたのは本当によかったです。こんな人生になるとは思ってもいませんでした。

次回は夏猫さん。
あのひらひらした薄いピンクの生姜の甘酢漬けみたいな作品、どれも大好きです。しゃりしゃり。たのしみにしてます。しゃりしゃり。それではよろしくね。


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