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書き出し自選・茂具田の5作品(茂具田)

お待たせいたしました。いや、お待たせしすぎたかもしれません。茂具田(もぐた)です。
(ダリみたいなヒゲ面に燕尾服で登場)

つーかアンタ誰?と思う令和キッズも多いと思うので私の書き出し歴をお伝えしますと今は昔、第53回で初採用され以降5年ほど参加していました。

実のところ自選を書いて欲しいというお声がけは数名の方にいただいていたのですが、書き出しの投稿をしばらくお休みしていたので、その時はなんだかおこがましい気がしたのと単純に長文を書く気がしなかったのでお断りしてしまいました。その節はどうもすみませんでした。
(植毛手術を終えたばかりの坊主頭で謝罪)

そんな作文引きこもりだった私にある日、引き出し屋とも言えるxissa さんから連絡が来ました。
「提出はゆっくりでいい。締め切りは特にない。わんぱくでもいい、たくましく育って欲しい。
おめぇいさん、自選をお願いできるかい?」
(無言でジェスチャーのみで)

こんなホトケの提案が来てはこれ以上断る理由はないと思い
「おう!おめぇにとびっきりの五本選んで見せてやんよ!」
とこれまたジェスチャーで答えました。

それからやる気スイッチを押すまでに随分時間がかかりましたが、私は今、長渕剛が持っているのと同じ大筆(約40kg)を使い墨汁がタップり詰まったバケツと向き合いながら1文字づつこれを書いている訳です。(タンクトップ1枚)

これを書いている今、登校拒否児が久々に学校に出てきて「は…恥ずかしい」みたいな気持ちがあります。もしくは万引きGメンに見られていて「出るよ⁈出るよ⁈ほら出た‼︎」みたいな感じでもあります。

ところで皆さんはなぜ書き出し小説が好きなんですか?各々、テレパシーでアタイの脳に直接語りかけてくださいね。テレパシーが苦手な方は手紙を小瓶に入れて海に流すスタイルでもオッケーです。お待ちしています。

私が書き出し小説に参加したきっかけは、どてらに下駄という攻めのファッションをも華麗に着こなす選者の天久さんの文才に昔から深く傾倒していたので、採用される書き出し作家の皆さんがだんだん羨ましくなったからです。そして

(ボイスチェンジャー仕込みの低く野太い声で)
 あー私も天久さんに選ばれてぇなー

という選民思想が湧きそれが書き出し小説に姿を変えたという訳です。さて前置きが長くなりすぎましたが茂具田の自選五本をご賞味ください。


父方のボブと暮らしている
(第131回 自由部門)

書き出しを書く前にまず気になるキーワードを
頭に思い浮かべますよね?この時私は「父方の祖母」っていうフレーズが気になっていたので
父方のそぼ、そぼ…ボブ?よしこれだ!
となった次第です。私が思うボブのイメージは毎日底抜けに明るい黒人で誰にでも馴れ馴れしく話かけるし、自分が言ったギャグに自分でウケすぎて息ができなくなるぐらいまで大笑いするそんな憎めないやつです。父方のボブがいればもちろん母方のボブも存在しますが、父方のボブがよりキャラが濃いという設定です。
これは自分でも気に入っていた作品なので採用された時嬉しかったのですが、その後まさかの第149回で規定部門・モチーフ「ボブ」まで昇格しました。さすがボブ!

【ボブイメージ図】


園児が順に龍にまたがり、いっぱいになったところで一匹ずつ空へ舞い上がった。
(第76回 自由部門)

自分が園児だとして送り迎えが龍なら絶対テンションあがりますよね。ビックリしたら火を吹くだろうし、先頭に乗る園児はきっとツノを握っていると思います。これは考えている時にイメージの絵も描いていたので私にとっては思い出深い作品です。
今改めてみるともう少し修飾語を削ぎ落として短くしたいところです。この気持ちは何?
一つの曲をアコースティックバージョン、なんとかmixなどいろんなバージョンにアレンジして再リリースしたくなる気持ちも分かってきました。ですが色々いじったところでやっぱりオリジナルが1番いいはずなので、これはこのままでいいのかなという結論に至りました。

【イメージ図】

口ヒゲの濃い小学生に敬語を使って、その日はなんとなく終わった。
(第63回 自由部門)

無為な一日の無為なエピソードがさらに無為を際立たせる。
とコメントをいただきましたが、まさにその通りです。この頃、毎朝口ヒゲが濃い小学生とすれ違っていました。私より背も高くヒゲも濃い。むしろすれ違う度にヒゲはどんどん濃くなっていたので気になってしょうがなかったのです。
生きてる期間の長さよりも見た目の威厳の圧を感じ、喋るなら絶対敬語だよな。って思っていたのでこれを書きました。


この豚足を使って挙手をすると決めた。
(第124回 自由部門)

勝手に決めとけよっていう。
書き出し小説はこういう身勝手な強い意志の
表明も大切だと思っています。


2いいね。ありがとうございます。
(第168回 規定部門「スージー菅原の誰も得しない名言集」)

お調子者を絵に描いたようなスージーはそのキャラを認められ、規定のお題になりました。
スージーを知らない人は第168回の記事(https://dailyportalz.jp/kiji/kakidashi168)に写真があるので見てきてください。腹立つ感じの自撮りがあります笑
スージーは時折り鋭いセンスでバズりまくるという奇跡の男であり、確かに面白い人ではあるのですが、百発百中面白いわけではないのです。規定のお題を与えられた当時、スージーのTwitter(現X)を見に行くと
「アンタ、2いいね。もらえたら十分だよ!」というしょうもないツィート(今はポストっつーの?!)が並んでおりました。ただし彼はいい奴なのでたとえ2いいねでも謙虚に感謝もするだろうと感じこれを書きました。
スージーはDJもやっているのでよかったら会いに行ってみてください。声も爽やかで髪は艶々です。そして頼んでもいないのに無駄に沢山喋ってくれることでしょう。きっと2いいね。ぐらいあげたくなります。
ということで以上が5選になります。

書籍化された書き出し小説自選集②の最後に天久さんが書き出し小説を小さなパーティーに例え、いつでも参加できるし、いつ抜け出してもいい。
と言っています。読者の方も思いたったら気軽にこのパーティーに参加していただきたいですし、パーティーを抜け出した方も気軽に戻ってきたり、また抜け出したりなどして「徹子の部屋」に負けないぐらいご長寿連載になるといいなと願ってやみません。それではまた。

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