書き出し自薦・鯨谷いさなの5作品(鯨谷いさな)

皆様初めまして。Twitterで偶然出会った書き出し小説のおもしろさに心を奪われて投稿を始めた鯨谷いさなと申します。どなたかに推薦していただくスタイルの自選ですが、この度は勝手に名乗りを上げさせていただきました。
というのも投稿を始めたのと自選集2の発売がだいたい同じ頃で、いつかは載れたら、と憧れていました。なので今回を逃すとしばらく間が空くというお知らせを見て、居ても立っても居られない、けどこんなレジェンドの方々の中で手を挙げるとか大それたことはできませんよ!という思いとの間で揺れること2週間。突然吹っ切れました。大それたこと、やっちゃいます。


このコーヒーがホットだったのかアイスだったのかは、無言の彼にしかわからない。
(第220回・自由部門)


記念すべき初採用です。ミステリー好きの妄想が膨らんだものでした。

子どもが寝ている部屋の静かさを味わっている。
(第221回・規定部門「風流」)


元気な幼児が眠った途端に訪れる、部屋の温度とか広さが変わったような静けさ。あれも風流だよなーと思って書きました。

ローズは無言で、構えた鯖の味噌煮缶の引き鉄を引いた。
(第240回・自由部門)


天久先生の「固唾を飲んで見守りたい」というコメントがとてもうれしかった書き出しです。オチで「そっち?」ってなるお笑い、好きです。

眩しい紅葉に紛れて、あの人の骨を燃やした。
(第225回・自由部門)


おそらく一番反響をいただいた書き出しです。その少し前に見た燃えるような紅葉、あの中で何か燃えててもわからなかったりして…と思ったのがきっかけでした。

本当は僕は、この空で一番うつくしく、しろく輝く星なのだ。もちろん、それは秘密のことだ。
(第274回・規定部門「自分語り」)


キザですね。気恥ずかしさが「その秘密を守る限り君はうつくしい。」とコメントしていただいて救われました。そしてこういう方向もありなのか、と気付かされた書き出しでもあります。

以上、お付き合いいただきまして本当にありがとうございました。まだまだ未熟者ですが、これからも精進します。読んでくださった方に自販機で当たりが出るくらいのいいことがありますように!

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