書き出し他薦・xissaさんの5作品(もんぜん)

 こんにちは。もんぜんと申します。


 インターネットウミウシさんからバトンを受け取った書き出し小説自薦ですが、書き出し小説大賞200回達成を勝手に記念した特別編として「書き出し他薦・xissaさんの5作品」をやらせてください。


 これまで何度か書き出し作家さんたちと飲む機会があったのですが、誰かの作品について語り合うのは楽しいんですよね。だから自薦よりも他薦のほうが楽しいのではないかと思いまして、xissaさんに相談しご了承いただいた次第です。


 以下、もんぜんが選んだxissaさんの5作品です。


七分咲きの桜の枝に、ちいさなビニール袋で泳ぐ赤い金魚がぶらさがっていた。朝日を浴びてゆらゆらしている。捨て金魚だ。
<第15回・規程部門(桜)>


 捨て金魚という言葉の美しさに震えます。ついつい他の言葉も考えたくなる。投げ金魚。若者たちが金魚を投げ合う。拾い金魚。道に落ちていた金魚を拾う。どれも捨て金魚ほどの美しさはありません。


 ちなみに枝に金魚がくくりつけられている光景は昔よくあった光景でしょうか。それとも何かの映画のワンシーンでしょうか。どこかで出会ったことがあるような気はするのですが、どうにも思い出せない。
 いずれにせよ桜のピンクと金魚の赤が朝日を浴びてキラキラしている様子は物語のはじまりに必要な美しさを満たしていて、書き出し小説の答えのような作品だと思います。


紙コップを持ったゴリラが来る。
<第158回・規程部門(ゴリラ)>


 紙コップのなかには、検尿したオシッコが入っているに違いない。怖すぎる。5秒後の大事故が想像ついてしまう。
 しかし検尿ができるゴリラだ。力加減が上手なのかもしれない。わずかな期待を込めてゴリラを見つめる。しかしゴリラは紙コップを握りつぶす。ゴリラのオシッコは四方八方に飛び散り、周囲の人がびしょびしょになった。


 そんなシーンが思い浮かんでニヤニヤしてしまいます。何度読んでもニヤニヤしてしまいます。


見晴らし亭は入ってすぐのところに電子レンジが二台ある。
<第84回・自由部門>


 海が見える崖に喫茶店があり、そこではカレーライスやナポリタンのようなものが食べられる。入口には誰用なのかわからない電子レンジが二台置いてあって、片方には故障中の貼り紙。外には物干し竿に洗濯物が干してあって、その先にエメラルドグリーンの海が見える。生活感と美しい景色が混在している。


 そんなお店を知っているわけではないのに、ありありとイメージが思い浮かびます。xissaさんがどんなイメージで書いたのかはわかりませんが、少ない文字数でイメージが無限に広がる不思議な書き出し小説で大好きです。
 


リア友だ。足元に影がある。
<第42回・自由部門>


 そこで判断するんかい!とツッコミたくなる本作。リア友じゃない友が何者なのか想像が膨らみます。


 もしかすると主人公は人間に見た目がそっくりな敵と戦っていて、影で見分けをつけているのかもしれない。幽霊の友だちが多いのかもしれない。オンラインゲームの世界ばかりにいるのかもしれない。


 たとえどんな世界の話だとしても、主人公は可愛らしい人な気がするんですよね。この文に漂う可愛らしさが好きな作品です。
 


指定されていた駅前に、暴れ太鼓のモニュメントなどという待ち合わせ場所はどこにもなかった。大男が一人、こちらを見ている。
<第11回・自由部門>


 誰との待ち合わせなんですかねw


 指定されたと書いてあるので、短期バイトか探偵か風俗か身代金の受け渡しか。「暴れ太鼓の前で」と言われたらどんな状況でも笑ってしまう気がします。


 そもそも暴れ太鼓のモニュメントってどんなですかね。ふんどしの男たちが太鼓を素手で殴る感じでしょうか。巨大な太鼓が村を襲う感じでしょうか。


 短い文の中に面白さと謎と不穏さが詰まっていて、とにかく続きが気になります。大男は何者なんだ!?


以上になります。
 
 好きな作品が多すぎて選ぶのがものすごく難しかったです。七回忌のやつも人買いの目のやつも菜の花のやつも好きですけど、それらは様々な場所で名作として語られているので今回はあえてそれ以外にしてみました。xissaさんの作品から5つ選んでいる時間は幸せな時間でした。


 次回は通常の書き出し自薦に戻って、昼行灯さんにお願いします! すごいなと思う人のひとりで楽しみです。


よろしくお願いします。

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