書き出し自選・さくさくの5作品(さくさく)

 こんにちは、さくさくと申します。この度、昼行灯さんからバトンを受け取りまして、僭越ながら書き出し自選を担当いたします。

 少しだけ自己紹介をしますと、書き出し小説大賞には第145回から参加しております。好きな食べ物は苺で、好きな戦闘機はF-4EJ改(ファントムⅡ)です。

 それでは参りましょう。私が選んだ5作品はこちら。


あなたがほしい。ひとくちだけでいいから。
(第145回 自由部門)
 初挑戦&初採用となった第145回の自由部門から。「ひとくち」とは何を指すのか、解釈を読み手の皆様に委ねた作品。本当に、ひとくちだけで済めばいいのですが。

 こちらの作品は、天久先生に「素直な直球が刺さるときもある」というコメントもいただけて嬉しかったのを覚えています。そして調子に乗り、作品を投稿し続けるようになって、今に至ります。


遊びなんかじゃない。雪道は。
(第163回 自由部門)
 時には、説明が不要な作品もあります。


私と蚊取り線香、しづかに白骨化していく。
(第174回 規定部門:怪談)
 蚊取り線香の匂いが個人的に好きなのと、あと、蚊に刺されるととてもムカつくので、暑い時期になると毎晩蚊取り線香を焚いています。真夏の夜、くねる煙をぼんやりと見つめながら「人間と蚊取り線香の共通点とはなんだろうか?」と考えていた際に生まれた作品。

 そんな私のオススメ蚊取り線香は、伽羅(きゃら)という香木の匂いが添加された蚊取り線香です。家の中がお寺みたいな匂いになります。


タカアシガニ脱走兵、夜の監視カメラ前を横歩きで通過。
(第176回 自由部門)
 一見するとアホみたいな作品ですが、完成までに約3週間かかりました。思い出深いです。深夜、鮮魚店の生け簀からタカアシガニが命懸けで脱走して、慣れない陸地を長い脚で踏み締めながら故郷の海を目指す……という映像は頭に浮かんでいたのですが、このまま文章にすると文字数が多すぎるんですよね。どうしたものか、多すぎるぞタカアシガニ、寝ても覚めてもタカアシガニ、と考え続けた結果、「脱走兵」ならタカアシガニの緊迫した状況も伝えつつ、たった3文字で済むじゃん! と気がつき、大幅な文字数の削減に成功しました。

 余談ですが、軍隊からの脱走というのはかなりの重罪になるらしいですね。人命を軽視する傾向が強い国家の軍隊だと、死刑に処される事もあるそうです。なのでこのタカアシガニ脱走兵も、おそらく捕まったが最期、カニ鍋に……。


「ノーチラス号、応答せよ。こちら、文川高校ロマン部」
(第177回 自由部門)
 第145回の規定部門(モチーフ:部活動)の採用作品の数々から影響を受けて「ならば私は、自分で自分が入りたくなるような部活動を新たに設立しよう!」という考えからスタートした作品。

 2020年に、書き出し小説大賞の連載200回を記念して行われた、書き出し小説大賞マイベストにてこちらの作品が選出され、とても嬉しかったです。そして第177回の自由部門は、私の作品が3つ並んで採用されたのも嬉しかった。ハッピー。「ノーチラス号」の部分は、よく知らないけど名前がカッコいいので取り付けました。

 以上で、5作品の紹介を終了いたします。

 それにしても、書き出し小説って本当にいいもんですね(水野晴郎っぽく)。小説の書き出し部分だけでいい、という手軽さと、自由度の高さ、そして他の書き出し作家の皆様による素晴らしい作品の数々に魅了されて、気がつけば書き出し小説の書籍を2冊とも買っていました。それから数日後、気がついた時には書き出し小説大賞の応募フォーム内の送信ボタンを押していました。

 そんな新参者の私が、ひそかに憧れていた書き出し自選の機会をいただけるとは。本当にありがとうございました。


 さて、次回の書き出し自選ですが、八重樫さんにお願いしたいと思います!

 八重樫さんといえば、痺れるくらい素敵な短歌も発表されていらっしゃいますが、個人的には第167回の自由部門の「こういう性病だと思って見ると、ふきのとうは怖い。」が強く印象に残っていて、野山の雪が解けていく季節になるとあの書き出し小説を思い出すようになりました。どんな自選になるのか、とてもワクワクしています。それでは、よろしくお願いいたします。

 次回、八重樫さんの書き出し自選に、ご期待ください!

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