最後の一文小説(モンゴノグノム)

そして、数億もの人間が一斉に咆哮し、世界はつんぼとなった。

次々とてのひらからこぼれる君の砂、砂、砂。

この指、私のじゃない。

「あれよ、あの、一番背の高い、銀色の木」

そこには望郷の焼け焦げた匂いが蟠っていた。

丸めて放り投げたその紙は、ゆっくりと真っ直ぐに君の星へと向かってゆく。

鯖は最後まで鳴き止むことはなかった。

義兄と私だけが残った。

今宵、彼女の乳歯が2本抜けるだろう。

ダチュラダチュラと一番鳥が啼いた。

「但し、決して光を当てないでください」

さようなら、泥んこになったおろしたての君。

しずかに命の眠るにおいがする。

抱かれてるのは確かに君、だけど、抱いてる君は一体誰なのだろうか。

確かに聴いた、蜂の巣の落ちる、乾いた音。

舞う帽子の中に、君の後ろ姿をみとめた。

月は列車と同じ速度で遠ざかってゆく。

曜日感覚だけが綺麗に奪い去られていた。

私は倒れ込みながら縋るように白い耳に歯を立てて、そのまま噛みちぎった。

またひとつ、僕らの新しい星座が生まれた。

これだから秋のカルピスは嫌いだ。

傘の外に手を翳してみる。ごく小さな粒がはじける。

時間の残酷さよりも、彼女はしたたかだった。

そしてまたどうしようもなくうどんを啜る。

ぴゅろろろろろと細い音を立てながら、闇のすきまを抜けていった。

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