【創作】九段理江「しをかくうま」
誰かいるのか?
ヒは問う。返事はない。ヒの問いがヒの体の中でこだまする。誰かいるのか? 誰かいるのか? 誰かいるのか?
声はたしかに聞こえる。どこから聞こえてくるのかわからない。聞こえ始めたころはとくに気にしていなかった声だった。だが次第に音が大きくなるにつれ、自分の頭がつくりだした声なのか、それとも頭の外からの声なのか、出所を知らなくてはならなくなった。それを突き止めないことには、どれほど頭の中に言葉を増やそうと、いくら急いで歩みを進めようと、どこへも行けないのだとふ