見出し画像

映画備忘録/2023年7月編


あの、なんか、9月になっていました。駆け足で7月をまとめるので各それぞれ非常に短いです。「おもれ」と「まあまあ」を繰り返しています。それでは7月まとめです。

『告白、あるいは完璧な弁護』

IT企業の社長ユ・ミンホの不倫相手であるキム・セヒが、ホテルの密室で殺害された。第一容疑者となったミンホは犯行を否認し、敏腕弁護士ヤン・シネを雇って事件の真相を探り始める。ミンホは事件前日に起きた交通事故がセヒの殺害に関係しているかもしれないと告白し、事件の再検証が始まるが、目撃者が現れたことによって事態は思わぬ方向へと転がっていく。

2022年製作/105分/G/韓国
原題:Confession
配給:シンカ

告白、あるいは完璧な弁護 : 作品情報 - 映画.com (eiga.com)
https://synca.jp/kokuhakuaruiwa/

【総評:☆4.3】
ストーリー:☆4.3
演出:☆4.3
リピート:☆4.3

シンプルで、硬派で、手堅く面白い秀作サスペンス。

単純に「おもれ!!!」の映画。韓国映画ハズレなしシリーズ。韓国映画ってハズレがなくてこわいんだよね。韓国人何食って育ったの?

内容としてはソリッドシチュエーションのような構成で、舞台は雪に覆われた山奥の別荘。そのなかで弁護士と容疑者が対話をするだけ。(※回想シーンも多く、完全にソリッドの様相かと言われると微妙だが、しかしあくまで舞台コンテンツ的に、山荘を基軸として話が展開していく。)
それゆえにサスペンスとしてのエンタメ性にフォーカスしており、何が真実か分からないまま観客も振り回された末に行き着く結末が、非常にシンプルで奇をてらっていないものでありながらもきちんと「どんでん返された」ようなサスペンスの快楽が十分にある。
小難しくなく、誰にでも理解できて、しかし「なるほどね~~!」となる。
非常に硬派で律儀な映画。良い!!


『探偵マリコの生涯で一番悲惨な日』

新宿ゴールデン街にある小さなバー「カールモール」を切り盛りするバーテンのマリコには、探偵というもう1つの顔があった。ある日、マリコの前にFBIが現れ、「歌舞伎町に紛れ込んだ宇宙人を探してほしい」と依頼してくる。恋人で自称忍者のMASAYAにも協力してもらい、宇宙人の行方を追うマリコだったが……。

2023年製作/116分/PG12/日本
配給:東映ビデオ

探偵マリコの生涯で一番悲惨な日 : 作品情報 - 映画.com (eiga.com)
https://detective-mariko-movie.jp/

【総評:☆2.77】
ストーリー:☆3
演出:☆2.8
リピート:☆2.5

あの、今年いちばん演出がダサい映画かもしれん。

2人の監督がオムニバス方式で3本ずつ撮るスタイルだからなのか、全体的にちぐはぐしていてキャラクターの心情として整合性がとれておらず、「まあつまらなくはないが面白くも……」といのがかなり率直な感想。
しかし、トンチキコメディは好きなので、個人的には加点要素も多くあった。(これは「こういう」オタクとして楽しめただけなので、世間的な評価は分からない)「宇野祥平が宇宙人を強奪して逃走」という前提設定自体は良さげだった。宇野祥平ってそういうイメージあるし。

上記、総合して、とにかく「このままの路線で行けば結構楽しい」という瞬間と「演出がダサすぎてめまいがする」瞬間が交互にあり、結局プラマイでどちらに転ぶかは鑑賞者次第という感じがある。

(以下ネタバレ)

・突然に最強殺し屋伝説国岡の世界観になってそこは面白かった
・全体的にちぐはぐだと述べたが、常連客が2人も死んでいるのに主人公マリコや他の常連客たちが一切触れることがなく、最終的になんかコメディテイストのハッピーエンド風にまとめようとしているのが「ちぐはぐ」の一言で済ませていいのか?脚本の軽視では?と率直に思った。あと12歳のときに出会った女の子と付き合っている竹野内豊の倫理観、つきあい始めたのが18歳以降であったとしても、ちょっとヤバくないか?
・各話ごとにキャラの性格が若干異なっていて、そこもどうかと思った

・タイトル名はうろ覚えだが、「歌舞伎町の恋」編でホス狂の女の子が担当の部屋の前で黄昏れながら「知らなかった、新宿って風吹くんだ~……」って言ってるシーン、ダサすぎて目眩がするかと思った(面白くてある意味好き)。
さらにそのあと担当と自分にエタノールかなにかをぶっかけて「あんたのことめちゃくちゃに愛してた……火傷しそうなくらい(ライターの火をカチッ)」ってシーンも目眩がするかと思った。
この編はおおよそ2023年とは思えない絶妙にダサい演出が目白押しなので一見の価値がある。

せっかく役者が良いのだからもうちょっとどうにかならなかったのかな、というのが最終的な感想でした。

『先生!口裂け女です!』

高校生のタケシとF1は、盗んだ原付バイクを不良軍団に売ってお金を稼いでいた。ある日、彼らは転校生のアヤカも仲間に加え、寂れたアパートに停めてあるバイクを盗もうとする。そこへ持ち主らしきマスク姿の女が現れたため、3人は慌ててバイクで逃げ出すが、女は人間離れした身体能力で走って追いかけてくる。なんとその女の正体は、頬まで口が裂け、100メートルを6秒で走るという都市伝説の口裂け女だった。

2023年製作/84分/PG12/日本
配給:エクストリーム

先生!口裂け女です! : 作品情報 - 映画.com (eiga.com)
https://kuchisake-onna.jp/

【総評:☆3.87】
ストーリー:☆3.5
演出:☆3.8
リピート:☆4.3

この令和のご時世に「口避け女」で1本撮る、その心意気だけですでに評価したい。口裂け女の令和の回答、これです。

結論から述べると、なかなかおもしろい!私は好き!

「2023年に口裂け女の映画を撮る」なんて私が映画監督なら泣いて断りたくなるようなネタだが、使い古しも使い古されこすりにこすられ出がらしも出なくなった口裂け女を現代に蘇らせるのならばこういったテイストに落ち着くのは合理的であり良い選択だったと思う。肩の力を抜いて観られて笑える口裂け女映画。
正統派ホラーとしても、コワすぎのようなジャンル映画的メソッドでも、すでに撮り尽されてしまって目新しさは無い。この映画が口裂け女の映画として世間に評価されるかは分からないが、難しい状況で、この方向性に振り切って1本撮ったのはそれだけで十分に評価に値すると思う。まだ若い監督なので今後も頑張ってほしい。(上からぶんた)
ちなみに、私はこういう「馬鹿だけど素直で根は良い子な子供たちがタッグを組んで怪異に立ち向かう」ような児童文学的テイストのホラーが好きだし、またコメディへの振り切り方も中途半端ではなくて良い。
あと、思っていたよりアクションも良い。アクションが景気いい。景気いいアクション、だ~いすき。

わだまさなりのオタクまじで羨ましい。どんな善行積んだ!!??

以下、あまり本筋には関係ない感想だけど、
若い監督で好んで「こういうの」を撮るひとで白石晃士に憧れてなかったひとは居ないと思う。最近、その影響を受けた世代(つまり20代半ばの私とほぼ同世代か少し上)のひとたちが映画監督として多く出てくるようになり、強く実感している。

『Pearl パール』

タイ・ウェスト監督、ミア・ゴス主演のホラー「X エックス」のシリーズ第2作で、1970年代が舞台だった「X エックス」の60年前を描く前日譚。「X エックス」に登場した極悪老婆パールの若き日を描き、夢見る少女だったパールがいかにしてシリアルキラーへと変貌したかが明らかにされる。

スクリーンの中で歌い踊る華やかなスターに憧れるパールは、厳格な母親と病気の父親と人里離れた農場で暮らしている。若くして結婚した夫は戦争へ出征中で、父親の世話と家畜たちの餌やりの毎日に鬱屈とした気持ちを抱えていた。ある日、父親の薬を買いにでかけた町で、母親に内緒で映画を見たパールは、ますます外の世界へのあこがれを強めていく。そして、母親から「お前は一生農場から出られない」といさめられたことをきっかけに、抑圧されてきた狂気が暴発する。

2022年製作/102分/R15+/アメリカ
原題:Pearl
配給:ハピネットファントム・スタジオ

Pearl パール : 作品情報 - 映画.com (eiga.com)
https://happinet-phantom.com/pearl/

【総評:☆4.37】
ストーリー:☆4.3
演出:☆4.5
リピート:☆4.3

どんな賞を受賞しても納得のいく映画。まさに力作で秀作で怪作で傑作。文句なし

ミア・ゴスの快演が素晴らしくて、ひたすらに良い役者だと感嘆。見惚れたし畏怖した。スクリーンに釘付けになってしまった。素晴らしく、恐ろしい。
ラストのアップでの長台詞は何の賞でも我が物にできると思うくらい総毛立った。これは本当に褒め言葉で、特に両親の演技も語りだしたら止まらないくらい圧巻される名演技なのだが、あまりにもミア・ゴスの独壇場でミア・ゴスの映画だった。あっぱれ。

作中での描写に言及すれば、とにかくパパが可哀想すぎる。やるせねえ。
ママの描き方についても、ただの毒親ではなく血肉を感じる描写であり、解像度が高かったと感じた。ただの機械的な悪者はおらず、ちょっとイヤなやつにも人間味があり、ちょっと良い奴にも鼻につくところがある、そういう機微が上手い。
結局はママに認められたかっただけのパール。ショービジネスに足を踏み入れる人間にはそういう人が多いんだろう。

個人的には前作エックスよりパールのほうが個人的には好みだが、どちらも70-80年代アメリカンホラー(スラッシャー)へのオマージュに満ちていて、非常に愛を感じる。わたしは映画への愛を感じる映画が大好きだ。パールのタイトルの入り方最高!!古臭くて最高!!!!
イタリアンホラーの巨匠ダリオ・アルジェントの新作を2023年にスクリーンで観るなんて経験をしたわけだが(『ダークグラス』)、最近はそういったかつてのジャッロ映画や70年80年代のスラッシャーにオマージュを捧げたようなホラーを観る機会がかなり増えた。音楽でも80年代に回帰しているし、そういうサイクルなのかもしれない。すべては回るのだ。
思い返せば最近の邦画『カラダ探し』もかなり昔のアメリカ青春(ジュブナイル)ホラーにテイストを寄せて作られていた印象だった。そのテイストを踏まえて鑑賞できた人は楽しめた映画だったように記憶している。

『うまれる』

愛娘の命を理不尽に奪われた母親の危険な愛情を描き、国内外の映画祭で評価された短編映画。

床屋を経営し多忙な日々を過ごす安川良子は、小学5年生の娘・裕美が天然パーマを理由に学校でいじめに遭っていることを知りながらも何もしてあげられずにいた。そんなある日、裕美が崖から転落して亡くなってしまう。良子はいじめが原因だと訴えるが、誰にも聞き入れてもらえない。やがて良子は、裕美の死の真相を知り……。

2021年製作/33分/R15+/日本
配給:ニチホランド

うまれる : 作品情報 - 映画.com (eiga.com)
https://toge-toge.com/umareru/

【総評:☆3.53】
ストーリー:☆3.3
演出:☆3.8
リピート:☆3.3

33分の短編映画。もちろん悪くはないのだが、前評判があまりに良すぎて、そして世間が持ち上げすぎていて、「想像していたより普通だな」というのが正直な感想となった。
もちろん観ていて非常にキツい。キツいが33分と短いので耐えられる。短いがゆえに凝縮された地獄でも始まるかと思ったがおおよそ想定の範囲内だった。子役の演技も拙いなりに解像度はそれなりに高かったと思う。

(以下すこしネタバレ?)

恐らく本作のタイトル的にもっともキモであったであろう「殺人シーンと出産シーンのクロスオーバー」が個人的に思想を違えてしまったのでいまいち乗り切れなかった。
思想を違えた理由としては、私は「腹を痛めて産んだ子」という概念が好きではなく(腹を痛めなくても愛情は生まれるし、そもそも父親は腹を痛めようがないが子への愛情は生まれる)、また母性神話などクソくらえと思っているからだ。本作は母性神話が描かれているわけではないし、「子を殺された親の苦しみ」や「出産と子の死の絶望的なまでの対比が叫び声を通してクロスする演出」自体は凄く理解できる。できるのだが、なんとなく、陳腐なところに演出が落ち着いてしまったなあと正直なところ思ってしまった。
いやほんとうにそれなりに良い映画なんですけど、いかんせん、前評判がハードル上げすぎていて…

『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』

考古学者で冒険家のインディ・ジョーンズの前にヘレナという女性が現れ、インディが若き日に発見した伝説の秘宝「運命のダイヤル」の話を持ち掛ける。それは人類の歴史を変える力を持つとされる究極の秘宝であり、その「運命のダイヤル」を巡ってインディは、因縁の宿敵である元ナチスの科学者フォラーを相手に、全世界を股にかけた争奪戦を繰り広げることとなる。

2023年製作/154分/G/アメリカ
原題:Indiana Jones and the Dial of Destiny
配給:ディズニー

インディ・ジョーンズと運命のダイヤル : 作品情報 - 映画.com (eiga.com)
https://www.disney.co.jp/movie/indianajones-dial.html

【総評:☆3.63】
ストーリー:☆3.3
演出:☆3.8
リピート:☆3.8

マッツのナチ姿が観られる、それがいちばんの収穫。
若マッツ、老マッツ、学者マッツ、ナチマッツ、いろんなマッツを楽しめる。それがいちばんの売り。

作品として、もちろん悪くはない。大予算が掛けられているし、アクションも豊富で、トンデモ設定だが「まあインディだし」で乗り切れる。ファミリームービー的でポップコーンシネマ的。それでいい。いいはずだ。
しかしながら私がいまいち乗り切れなかったのは、いくらファミリームービーでポップコーンシネマとはいえ、「それアリ!?」という展開が続き脚本に粗が目立ってしまったと私が感じたからだろう。もしスピルバーグが監督をしたのならばもっと全てがコミカルに描かれ、私が今回「粗」と感じた箇所も愛嬌として受け止められ、むしろよりスペクタクルに拍車がかかっただろう。
スピルバーグならばコミカルに切り取ったところが、ジェームズ・マンゴールドだとアクション映画チックにまじめに切り取ってしまい、結果的にちぐはぐな印象になってしまった。
「そのキャラ、要る?」なところや、ナチが舞台装置的に悪役として描かれているところが悪目立ちしていた。これもスピルバーグだったならば全体的にコミカルに描いて違和感を与えなかったんだろうか。

まあ、わりと、長い。もう少し短くてもよかったとは思う。
悪くはないしたぶんふつうに面白いんだけど、いかんせんトップガンが良すぎたため、トップガンくらい自信がなきゃ往年の名作の続編なんて作らないほうがいいんだよなあと思ってしまった。

『ヒッチハイク』

インターネット掲示板「2ちゃんねる」発の都市伝説の中でも特に怖いエピソードとして語り継がれている、ヒッチハイクをしたばかりに狂気の一家に追われることになった若者の恐怖を描いたホラー。

ハイキングの帰りに山道で迷ってしまった大学生の涼子と茜は、やっとのことでバス停にたどり着くが、バスが来る気配がまったくない。涼子は足を怪我しており、茜の彼氏も迎えに来られないという状況の中、2人はヒッチハイクを試みる。山奥でのヒッチハイクは無謀にも思えたが、運良く通りすがった1台のキャンピングカーが、2人を快く受け入れてくれた。しかし、カウボーイの格好をしたジョージと名乗る男が運転するその車は、車内に彼の家族も同乗しているものの、どこか異様な雰囲気が漂っていた。

2023年製作/74分/PG12/日本
配給:アルバトロス・フィルム

ヒッチハイク : 作品情報 - 映画.com (eiga.com)
https://hitchhike-movie.com/

【総評:☆3.83】
ストーリー:☆3.5
演出:☆4
リピート:☆4

概念因習村で楽しい。

荒削りながらも「こういう映画」に求めるカタルシスはある程度提供されていたし、色々な「ゆるいな~」という点もあるが総合的にはプラマイでプラスに転んだ映画だと思う。
可能であればもう少しゴア要素があれば嬉しかった(食人とか)。
川崎麻世がこんな映画に合うとは思っていなかったが、今後いろいろなヤバイホラー映画に出て欲しい。胡散臭いまでにシュッとした濃いハンサムな出で立ちと美声、そしてぎっとぎとの圧。いいね。
本当に概念因習村。最後に突然ホラーになるのがおもろ

『ヴァチカンのエクソシスト』

1987年7月、サン・セバスチャン修道院。アモルト神父はローマ教皇から、ある少年の悪魔祓いを依頼される。少年の様子を見て悪魔の仕業だと確信したアモルトは、若き相棒トマース神父とともに本格的な調査を開始。やがて彼らは、中世ヨーロッパでカトリック教会が異端者の摘発と処罰のために行っていた宗教裁判の記録と、修道院の地下に眠る邪悪な魂の存在にたどり着く。

2023年製作/103分/PG12/アメリカ・イギリス・スペイン合作
原題:The Pope's Exorcist
配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント

ヴァチカンのエクソシスト : 作品情報 - 映画.com (eiga.com)
https://www.vatican-exorcist.jp/

【総評:☆4.37】
ストーリー:☆3.8
演出:☆4.5
リピート:☆4.8

おもしろすぎる!!
ジュリアス・エイヴァリー監督については『オーヴァーロード』で信用しているためずっと楽しみにしていたが、期待して観に行き期待通りの面白さが提供される素晴らしさよ。ジュリアス・エイヴァリー、もう完全に信頼の監督です。信じます、すべてを。

ラッセル・クロウがエクソシスト、もうそれだけで面白い。すでにエンタメが完成されている。
それでいてきちんと悪魔ホラーとしても手堅く作り、ミステリーの快感もあり、想像の域は出なかったもののアクションも迫力があり良い。どこを切り取っても手抜きはなく、真摯に作られた印象。
悪魔ホラーには欠かせない子役の憑依演技も半端ない。
ホラー初心者が入門として観るにもちょうどいいと思う。
また、凄腕エクソシストジジイと頼りないハンサム新人エクソシスト、ちゃんとバディになる。期待したものが観られる。助かる。バディものとしても面白い。

いつか日本を舞台に……とプロデューサーは言っていたが、それはリップサービスとしても、次回作を期待せざるをえない。毎週観たいもんな。

オタク、カタコンベとアイアンメイデンが好き。

『DASHCAM ダッシュカム』

女性ラッパーで迷惑系ライブ配信者として人気を得ているアニーは、ロサンゼルスのコロナ規制に辟易し、イギリスに住んでいる昔の音楽仲間であるストレッチのもとを訪ねる。しかし、今は配達員として普通に暮らしているストレッチにとってアニーの来訪は迷惑でしかなく、追い返されてしまう。頭にきたアニーは、ストレッチの車とスマホを盗み、ライブ配信をしながら彼のフードデリバリーの仕事を勝手にやりはじめる。そして、あるレストランのオーナーから大金を積まれ、ひとりの女性を運ぶという奇妙な配達依頼を受ける。悪態をつきながらも女性を目的の場所へ運ぶため出発したアニーだったが、その先には想像を絶する恐怖が待ち受けていた。

2021年製作/80分/PG12/アメリカ・イギリス合作
原題:Dashcam
配給:アクセスエー

DASHCAM ダッシュカム : 作品情報 - 映画.com (eiga.com)
https://dashcam-bh.com/

【総評:☆4.3】
ストーリー:☆3.8
演出:☆4.3
リピート:☆4.8

バケモンにはバケモンをぶつけんだよ!
ヤバい怪異に大迷惑系反ワクラッパー配信者をぶつけた、その化学反応がこれ。おもしろすぎる!!

最近は強い女を通り越してまあまあのクソ女が主人公になることも増えたが、今まででいちばんのクソ女だしずっとクソ。最後までクソ。ひとつも好きになれないしずっと大嫌いな女。なのに清々しい。マジでクソ女。綺麗なおべべ着てBadBitchなんて歌うだけの女じゃこいつに殴り合いでもラップバトルでも負けるね。こいつ真のクソ女だから。
クソだし庇いようはひとつもないけど、友達を見捨てて逃げることも、友達がクソ女を見捨てて逃げることもなく、なんかこのクソ女は見捨てられないタチなんだなと思った。いるよね、そういう奴。

さすがにラップ部分も台本だと思っていたが、まさかの即興らしい。驚愕である。今年イチ観るべきスタッフロール。ジェイソン・ブラムってマザコンだから「ハニー」って言われたらすぐにイッちゃうし家族全員近親相姦好きらしい。知らなかったな〜〜〜〜

(以下すこしネタバレ??)

・ヴァチカンのエクソシストを観たあとにダッシュカムを観たから、ずっと「はやくイタリアからラッセル・クロウを呼べ!!!!!!」と叫んでいた。エクソシストのラッセル・クロウがいたらこんなことには……
・悪魔崇拝かUFO系かは分からないが、終盤のヤバそうな宗教系施設のくだりでも2時間観たかった。白石晃士、リメイクしてくれ。
・zoomもそうだけど、ロブ・サベッジ監督はホラーにおける「現象」のみに注力していて「フーダニット/ワイダニット/ハウダニット」をはっきり描くのはホラーにおいてはむしろ好ましくないと思っているんじゃないか?
「こんなことが起きました」は描くけど、なぜ誰がどうやって起こしたのかはぼんやりと「こんなかんじ?かもね?」くらいにしか描きたくない……というかそこを描くことに萌えがないんかな?

・いや、勝つんか〜〜〜い!!

『CLOSE クロース』

13歳のレオとレミは、学校でも放課後でも一緒に時間を過ごす大親友だった。しかし、ある時、2人の親密すぎる間柄をクラスメイトにからかわれたことで、レオはレミへの接し方に戸惑い、そっけない態度をとってしまう。そのせいで気まずい雰囲気になる中、2人は些細なことで大ゲンカをしてしまい……。

2022年製作/104分/G/ベルギー・フランス・オランダ合作
原題:Close
配給:クロックワークス、STAR CHANNEL MOVIES

CLOSE クロース : 作品情報 - 映画.com (eiga.com)
https://closemovie.jp/

【総評:☆4.03】
ストーリー:☆3.8
演出:☆4.3
リピート:☆4

何かをかなり強く感じたが、言語化ができない。処理がいまいち追いついておらず、観ているときにいくら考えても紐解けないが、日常のなかで意識していないときにふと何か腑に落ちる瞬間がありそう。そういう映画。
ブロマンス色が強いかと思ったが、むしろそんなことはない。誰しも思い当たるような幼少期の憧憬と日々の苛立ちやルサンマンや漠然とした鬱。そういうものを、必要以上には語らずに牧歌的な風景のなかで描き出し、私達の心の一部を抉り取っていく。
この映画は誰にでも当てはまる。親友はいなくても、幼なじみと境界線をぐらぐら歩いたことはなくても、誰でも子供だったことはあるから。
未発達な子供の情緒と肉体は、残酷なんだよなあ。誰しもいっかいは子供のときに自死やその影がよぎったことはあるでしょう。

劇場を出ていくとき、マジで老若男女全員同じ表情だった。私もたぶん同じ表情をしていた。
こんなに老若男女の顔が同じなことあるんだ……と思った。

『ナチスに仕掛けたチェスゲーム』

ヨーゼフは久々に再会した妻とともに、ロッテルダム港からアメリカへと向かう豪華客船に乗る。かつてウィーンで公証人の仕事をしていた彼は、オーストリアを併合したナチスドイツに貴族の資産の預金番号を教えるよう迫られるも拒絶し、ホテルに監禁された過去があった。豪華客船ではチェス大会が開かれ、世界王者が乗客全員を相手に戦っていた。世界王者と船のオーナーの対戦の際、オーナーにアドバイスして引き分けに持ち込んだヨーゼフは、自ら王者と一騎打ちをすることになる。ヨーゼフのチェスの強さには、ある悲しい理由があった。

2021年製作/112分/G/ドイツ
原題:Schachnovelle
配給:キノフィルムズ

ナチスに仕掛けたチェスゲーム : 作品情報 - 映画.com (eiga.com)
https://royalgame-movie.jp/

【総評:☆4.27】
ストーリー:☆4
演出:☆4.3
リピート:☆4.5

『帰ってきたヒトラー』でヒトラー役を好演した(と言っていいのか分からないが)オリヴァー・マスッチが主人公ということで、興味をそそられて鑑賞。
高級ホテルの一室でナチスに監禁された主人公が、その監禁の記憶と船上でのチェス対決を交互に体験しながら、やがて行き着く真相に私は結構「ゾッと」した。あまり評判は良くないようなのだが、個人的には結構好きなフィクション作品。

『イノセンツ』

退屈な夏休みに不思議な力に目覚めた子どもたちの遊びが、次第に狂気へと変わっていく姿を、美しくも不気味に描いたノルウェー製のサイキックスリラー。

ノルウェー郊外の住宅団地。夏休みに友人同士になった4人の子どもたちが、親たちの目の届かないところで隠れた力に目覚める。子どもたちは近所の庭や遊び場で新しい力を試すが、やがてその無邪気な遊びが影を落とし、奇妙なことが起こりはじめる。

2021年製作/117分/PG12/ノルウェー・デンマーク・フィンランド・スウェーデン合作
原題:De uskyldige
配給:ロングライド

イノセンツ : 作品情報 - 映画.com (eiga.com)
https://longride.jp/innocents

【総評:☆4.33】
ストーリー:☆4
演出:☆4.5
リピート:☆4.5

良い!!!!北欧ホラーの意地悪なところが出ていて最高!!
子供は無垢で、それゆえに危ういことをしでかす。でも子供は子供なりに結構複雑なことを考えている。子供の描き方はもちろん、人物たちのディテールが細やかで満足度が高い。
観客は大人だから「それ」が最悪な方向に向かうことは予測できて、しかし無邪気に遊んで最悪へ進み続ける子供たちを止める術はない。その歯がゆさと子供の深層を盗み見るような背徳感がこれ以上なく私を居心地悪くさせる。それが魅力。
必要以上のことは語らない。演出で観客に「察知」させる。当たり前のことかもしれないけど、最近は当たり前じゃなかったりする。余計なことを説明して萎えさせる要素がなくてよかった。
そして静かな脚本と同じように、「静」を強調した超能力ラストバトル、アツい!!ずっと不穏で、最後まで不穏。遠くでモスキート音が聞こえるような不快な感じ。北欧ホラーは最高。余韻の残る終わり方は良いな。

関係ない感想だけど、北欧って夏でも涼しそうでいいなあ

『キングダム 運命の炎』

春秋戦国時代の中国。天下の大将軍を志す少年・信(しん)は秦の若き国王・えい政(えいせい)と運命的な出会いを果たし、ともに中華統一を目指すことに。魏との戦いに勝利をおさめた彼らのもとに、秦に対して積年の恨みを抱える隣国・趙の軍隊が攻め込んでくる。えい政は長らく戦場から離れていた伝説の大将軍・王騎(おうき)を総大将に任命。王騎から戦いへの覚悟を問われたえい政は、かつての恩人・紫夏(しか)との記憶を語る。100人の兵士を率いる隊長となった信は、王騎から「飛信隊」という部隊名を授かり、別働隊として敵将を討つ任務に挑むが……。

2023年製作/129分/G/日本
配給:東宝、ソニー・ピクチャーズエンタテインメント

キングダム 運命の炎 : 作品情報 - 映画.com (eiga.com)
https://kingdom-the-movie.jp/

【総評:☆3.2】
ストーリー:☆3.3
演出:☆3.3
リピート:☆3

いやまだまだ終わらないんかい。
お金をかけているところとアクションを撮っているところは引き続き評価しているが、全体的に惰性で続いている感じは否めない。映画として面白いかと言われたら、正直、うーん……となる。「マンガの実写化」としては良いと思う。
今回も豪華な俳優陣が登場したわけだが、このままの勢いだと芸能界の有名な俳優を全て使い果たしてしまうのではないか?まだ持ち駒ある?大丈夫?
キングダムに限った話ではないが、やはりあまりにセリフで説明しすぎだし、回想を使いすぎだ。これは制作陣が観客の理解力を信用していないということに他ならないし、邦画の由々しき問題だと真剣に思う。もちろん「邦画は〜」と一口に語ることはできないが、平均値として、実際に「セリフで説明しすぎ」の傾向はあると思う。
映画としてだけ評価するならば☆2.5くらいを付けそうになるが、お金をかけているところとアクションを撮っているところは本当に評価しているので……。

結局なんの話だったのかはわからん。わざわざ映画にする必要あったのかな(身も蓋もない)。とはいえこういう何も考えずに済むアクション映画、ポップコーンシネマは嫌いじゃないよ。北欧ホラー映画とか観たあとにちょうどいい。


以上、駆け足7月でした。今から駆け足8月やります。ねみ~

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?