忌怪島を観たよ。この虚しさを吐き出したい。そして日本ホラーの限界集落を憂う。あなたは天才のはずだから。

だって私はホラーが大好きだから………。。。。。

忌怪島を観ました。通常の備忘録やフィルマークスのログにこの呪詛を書き残してしまうと、ただスクロールしただけでも目に入ってしまい不快な思いをする人もいるだろうと思い、隔離のための記事を書くに至っています。
先月観た『65』なんかは「悪口言いま~~~す」と大声で言えたものですが(決して品の良い行為ではないので推奨しません)、本作については、ただあけっぴろげに悪口を言ってエンタメとして消化できるものでもなく、この虚しさをただ誰かに聞いて欲しく、この文章の行く末も思い付かないまま情動的にキーボードを打っています。
ただ感情のおもむくままの記事なので箇条書きでいきます。


・とりあえずアイドル俳優アイドル女優に天才の役をやらせることを法律で禁止してほしい。

・"天才"が「はい?」と聞き返すやつ、10年代のラノベみたいでダサい。
・ぶっちゃけ脚本がダサい。
・役者陣はいずれも他の映画やドラマで何度も見たことがある面々だったが、なんか全員いつもより演技が下手だったし、全て浮いてて外してる感じが凄くあった。たぶんこれは脚本があまり良くなくて、そして役者に脚本をカバーできるほどの技量がなかったせいもあるんだろうけど。(事実、あ~~~……となるのはメインの若い役者たちばかりで、なんかなだぎ武とかは良かった。なだぎ武はまともな演技であったがゆえに逆に浮いてた。)
・全体的にキャスティングはもう少しどうにかしてほしかったが、ラストシーンのむりな恋愛要素あたりは清水監督もこれ撮ってて楽しくなかったのでは……?と滲み出ていて(私の所感ですが)、キャスティング含め色々と大人のしがらみがあったのかなあとぼんやり思ったりはした。
・全体的なキャスティングの話はしたが、しかしやはり主役が特にいちばん演技力が「……」という感じだと一気に映画として良くなくなってしまうと思うので、そこのキャスティングがもっとも気になった。
・実力にそぐわない役をやらせて事故るの、その役者も可哀想だと思うから、よくないよやっぱり。順序ってものがあるじゃない。鍛錬を積むターンが必要じゃないか、すべての仕事において。
・あとむのこと好きなんだけど(?)、阪元作品で見せる輝きはどこにいったの……やっぱりみんな全体的に普段より演技が下手になっている……つまり脚本演出が良くないのだ……それをカバーできるほどの技量は若い彼らにはまだ無いのだ……
・キャラクターが何かを見て「これって……」と言った後に回想のセリフが流れたりするやつ、ダサい。
・関西弁キャラ、必要だろうか。エセ関西弁なので気になってノイズでしかないし、本作においては南の離島という環境で都会から来たグループが新世界を作ろうとしている(つまり主人公グループは島では異端であり、浮いているべき)なのなら、主人公たちは全員標準語であったほうが脚本としては良かったんじゃないかと思う。せっかくの島の方言が、ひとり関西弁キャラがいるだけでありがたみが薄れてしまう。

・忌女が最終戦で主人公に不意打ちをくらって「ウワーッ!」ってびっくりした顔していたの、悲しかった。長い間島を狂わせてきた怪異なんだろ、今やバーチャルも現実も行き来する怪異なんだろ、もっと泰然としていてくれよ。そんな小物の幽霊みたいな表情しないでよ。これは私の嗜好の問題でもあるけれど、やはり怪異は人智を超えていてほしいし、よくわからんものでいてほしい。人間に不意打ちされて焦るなよ。

・ユタ婆ちゃん好き。しげじい好き。オタクはユタとイタコが好きだからね。

・「島は死人と狂人だけになる」って言うから期待しちゃった。ならんのかい。本当に死人と狂人だけになって信じられんくらい血まみれになって『哭声』の終盤みたいになって最終的に全滅ENDならスタンディングオベーションしたと思う。
しげじい、あそこまで引っ張っておいてあっさり自殺するの信じられん。島をめちゃくちゃにしてくれよ。
・清水監督、いつも「大昔の因習パート」のときは撮ってるのが楽しそうなので、本当にやりたいのはこういうものなのかなあと思う。清水監督の本気の「ヤバイ映画」、早く食らわせてください。

・ここまで色々ダサいという話をしてきたけど、
でもこれってダサいけど要するに制作陣に「こんだけちゃんと説明してあげないと観客は物語を理解しない」と思われているというわけで、観客は舐められているし信用されていない。これはかなり観客としては憤っていいことであるし、同時に、観客の質の低さを反省すべきであるとも思う。
シンエヴァも、不可解で考察の余地がたくさんあることが売りだったはずの旧エヴァに比べて全てを説明する演出になっていて驚いたけど、これは鬼滅のヒットの際にそのアニメの演出において指摘されたように「何でもかんでも説明してあげないと理解できない視聴者が増えた」ことに起因するんだろうな。これは私たちは怒って良いし、反省しないとだめだよな。
視聴者・観客の質が下がったのは事実で(ここにおける質とは従来の物語性を理解する能力が乏しいという意味であり、世界は移ろっていくものだから、絶対的な質の悪さとは言えないけれど)、でもこの流れを止めていくことは難しいのだろう。

・村シリーズについて、私は樹海村はなかなか良かったと思う。
・がしかし、とにかく清水崇監督が世間から「こういう監督」の評価を受けていることが酷く悲しい。虚しい。清水監督は本当はもの凄く尖っていて面白くてイケてるホラー映画を撮れるはずなんだ。分野は違えどジェームズワンのようなキレッキレの監督のはずなんだ。私は清水監督を奇才だと思っているんだ。監督はきちんとJホラーのじんわりとした湿度の高い恐怖演出をすることができる。それでいて村シリーズのお化け造形でも顕著なように幽霊がどこかゾンビじみていて、この2つを合わせてカルト的人気を博し後世まで一部のホラーファンがバイブルとして語り継ぐようなヤバイ映画を撮ることができるはずなんだ。ずっこけポイントとして世間から扱われている演出も、少し見方を変えればものすごく面白くて奇抜なホラーに仕上がりそうに見えるんだ。ただ世間からオーダーされて提供したものとその演出はかみ合ってないんだ。本当に、本当に凄い監督のはずなんだよ。
だからこそ世間から「こういう扱い」なのが凄く悲しい。何が良くないんだろう。何が原因なんだろう。どうすれば監督はヤバ面白いホラー映画を撮ってくれるんだろう。
・この悲しみを言葉にしていると中田監督への悲しみもわき上がってくる。近年だと監督作が『事故物件 恐い間取り』や『それがいる森』で、まあ、酷い。少なくとも、斜に構えたジャンル映画的楽しみ方ができる私でも酷いと思ったし、世間一般はかなり痛烈な評価を下している。でも思い出してほしい、『女優霊』を、『リング』を、『仄暗い水の底から』を!思い出補正もあるのだろうが、いやしかし、紛れもなくJホラーの第一人者であり、紛れもなく素晴らしい監督だったはずなんだ。どうすればいいんだ。なんでこうなったんだ。なんでみんな、みんな才能があってキレッキレのはずなのに、こういう映画しか撮らないんだ。
・なんか、もしかして歳とともに才能って枯れたりする……?
・実際には絶対にそんなことはないのだ。ないんだけど、そう思っちゃうんだよ。なんで?なんでこうなの?絶対に面白いヤバイホラー映画が撮れるは
ずなのに!!!!!ねえ!!!

・先日映画評論家の町山智浩が、「映画会社は全社協力して地上波のゴールデンタイムを買って、ジブリ以外の実写映画を毎週放映して、小中学生の映画ファンを育てないと、映画観客がいなくなる」とツイートしていた。これには全文同意で、特にホラーの限界集落感なんか顕著だよなと思っていた。
私は20代で「若者」だと思うが、同年代にホラー映画ファンの人間はそうそういない。ツイッターや映画バーで自ら出会いにいかないと出会わない。かつてどのくらいの人口規模だったか知るよしもないが、話を聞く限り、また書籍などで当時の状況をうかがい知る限り、やっぱり圧倒的に今はホラー映画ファンは少ないと思う。若者は減り、高齢化が進み、限界集落だ。
・清水監督と中田監督に「ねえ!!!!」とここまで言ってきたが、とはいえ近日公開のホラー映画は中田監督『禁じられた遊び』に清水監督『ミンナのウタ』。シネコンで上映されるホラー映画を中田と清水にしか撮らせない今の日本映画業界が悪いとも思う。主語がデカいけど許して欲しい。それほど今のホラー映画業界は狭くてヤバイんだと思う。えーん。

・ホラー映画人口が増えて活性化されてこそ清水監督も中田監督も「真の姿」になるんじゃないかな!?真の姿を私は希望的観測で発言していますが、まあ、結局『それがいる森』が真の姿である可能性も無きにしも非ずではある。
でも、夢は見させてよ!映画ってそういうもんでしょ!?

清水監督、私を成仏させてください。あなたは天才のはずですよね?

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?