エントリーNO.404

「総ては永久から始まった」
           ミヒャエル・ペーターゼン

1.
 耐え難い賞賛の雨が降り出した。苦悩や苦役よりも、賞賛の雨の方が厄介だと思う。反発心にもならないから、教育にはならない。もちろん革命にも繋がらないし、側から見てもつまらない。また、期待に沿えない申し訳なさも生みかねない。だから、賞賛の雨を一身に受けて何かに挑んだ僕は、真っ逆さまに落ちた。地面スレスレでなんとか揚力を得ているが、右利きのオニヤンマにむんずと掴まれ、ひょいぱくひょいぱく肉を食い散らかされるのも時間の問題だろう。腹側はなんか怖いので、できれば背中側からいってほしい。

2.
「どれ以外を選ぼうとも、不正解となり得る」
「誰だけがいた街か考える旅に出よ」
「平たくなる。明日が」
 こうした声が聞こえてくることがある。いや、聞こえている。今も。ウルグアイ国旗のあいつが言っているに違いない。そのせいで、厄介性について考える毎日を送るはめになっている。たまにははめを外したいとも思うが、はめ込まれているらしい。つまり、色のない緑の考えが激烈に眠りたいらしいのだ。何が赤い何を食べている何のかさえ分からないうちにである。
 比べろ、比べろと語りかけてくる。奴らは、黒くて、ゴツゴツしていて、毛むくじゃらで、パサパサした、魔法の生き物。いや、生きていない。生きていないのだが、生き物様であることは間違いない。みくびらないでほしい。生き物を。生き物である私が、生き物か生き物でないかの判断に迷うことは、もはやほとんど無いと言える。

ウルグアイ国旗のあいつ

3.
 護られるべきだと思う。いや、本当にさ。先を越されたんだから、そこはもう仕方がないじゃないの。認め、護り、使おうよ。それが、夢見る世界でしょうよ。複雑に絡み合った、妬みや嫉みや、クルトンや、貝殻や、海抜や、警察……。あれ、どうして脇道に逸れた。まあ、いいや。とにかく、対立に描き出された本能とか、見下したいがためだけの音頭みたいなのは、もう一回棄ててしまおうよ。一回というか、永久に。たくさん色々あったら、俺は嬉しいけどね。ごちゃごちゃしてるの。好きだよ。

4.
  僕らは人称を失った。満洲語のように。モンゴル語のように。独立代名詞以外による、人称標示法を失ったのだ。述部からは想像もつかない、行為者の素性…!哀れ僕らは、独立性の高い道具を使うことでしか、誰が何をしたかも言い表わせない。


5.
 再び、ウルグアイ。
「マンネリだ」
「飽きてしまったんだろう?」
「どうだい、虫歯の具合は」
嫌な時に、嫌なことを言ってくる。寿司を食べている時に、虫歯の話をするな!忘れていたのに…。
「虫歯が酷くなると、菌が心臓に入って死ぬぜ」
寝る前に、そんなこと…!
眠れない。今日も眠れない。
眠たくなってくると、耳の中(外耳孔のあたり)でパン!と破裂音がして眠れない。
だから、妄想の巨大宇宙船はドンドン大きくなっていく。妄想の仲良し(男だけ)だけが住んでいる巨大な長屋みたいな家は、ドンドン大きくなっていく。部屋数はドンドン増える。逃げ込める部屋が。護ってくれる部屋が。やり過ごせる部屋が。

 5.
 総ては、永久から始まっている。終わらないし、始まらない。点がない。線もない。進行方向もない。幅もない。永久とは、かくもつまらぬモノか。そうだ。永久とは、つまらない。安心感もない。永久にある彩は、ほんの一瞬。例えば散歩をしていたら「お、ここの家カレーか」というような、そういう匂い近い。いや、不快度としては副鼻腔炎の時の鼻の奥の「空気臭さ」だが。兎に角、永久とはつまらぬものだ。
(満洲語)enteheme banjiki.「永久に生きたい」
これをテーマにやってきた。やってきたのだが、永久はつまらないということが分かり始めた。では、どうする?俺は、永久に憧れるでもなく、何を追い求める?なぜウルグアイは黙る?肝心な時に。肝心な時にばっかり、いなくなる。邪魔をしに来るくせに。嫌なことを言いに来るくせに。弱虫。ウルグアイの国旗のアイツは、弱虫だ。弱虫。俺は、俺の心は、奴を生み出した俺の生涯は、弱虫だ。蛆虫だ。カワゲラだ。小指で押せば死ぬ虫だ。

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