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僕はひどく疲れている。12

「女」を理由に仕事が取れるほど彼女が生きている世界は優しくはない。

いらないものはいらないし、いるものはいる。だけれど、結果を出し評価される彼女は職場で嫉妬されている。
自分が出来ないことを他の誰かが出来ているとき、それがすんなりと出来ているように見えるとき、怒りを感じる人がいる。怒りの対象を性別に向けるのは容易い。あいつは女だから。女だから仕事を取れる。
僕らが生きているこの社会ではどこをどう見たって、どう考えたって、「男」の方が多くの場面で下駄を履かせてもらっているにも関わらず。

「女だから」という理由で学ぶ機会を奪われ、「女だから」という理由で同じ仕事をしていても給与は低く抑えられ、「女だから」と家事・育児などの多くをやるべきものだとされ、多くの女性たちもそう思い込まされている。
男がパートナーとの関係を「僕らは平等です」というその男女間の関係は、殆どの場合女性の方に大きな負担を強いられている。

もし、「女」ということで仕事がもらえるなら、それは一時のものだろうし、何年も続くことはない。
彼女がしている仕事は、何年もかけて関係を築く仕事で、そこで信頼され、契約を取り、取引をしているのならば、それは「女だから」取れた仕事ではなく、彼女だから取れた仕事なのだ。それを容易に「女だから取れた」と、仕事の出来ない男が言うのだ。

「女だから」と取れるような仕事をあなたは出来ないのですか?
自分が仕事で成果を出せないこと、社内で昇進できないことを誰かの所為にせずに、自分に何が足りないのか少しは考えないのだろうか。仕事で成果が出ないのも、社内で昇進できないのも、顧客から信頼されないのも、別の誰かの所為ではなくて、自分に何かが足りないとは考えないのだろうか。成果を出せず、昇進出来ないのを誰かの所為にせず、自分で受け止められないのだろうか。
彼女が必死に自分たちが扱う商品について学び、取引先のことを考え、提案し、社内でも円滑に仕事が進められるようにという努力をしていることが分からないのだろうか。

けれど、組織というか、複数の人間が集まり働くというのは、そういうことが常に起きる場なのだ、とも思う。
性別や年齢に関わらず、成果を出し、信頼される人は、必ず誰かから嫉妬される。

僕が前の仕事を辞めた理由も同じようなものだった。
僕は上司からひどいパワハラを受けていた。
仕事自体は忙しかったものの、中々楽しかったし、顧客からも信頼をされていた。
けれど、働き始めてほんの1ヶ月で上司からパワハラを受けるようになった。
その女性の同い年の上司は、僕は前職が全く違う仕事だったので、僕がすんなりと仕事を覚えることにまずいらだちを覚えたのだろう。訳の分からない奴がやってきた。それなのに彼女が毎日22時頃まで残業している中で、僕が仕事を終わらせ定時で帰っている。私はこの仕事を何年もやっている。けれど、どこから来たのかも分からないあいつ(僕)はすんなりと仕事をこなし、ささっと定時に帰っている。なんなんだあいつは。あんなやつはいなくなれば良い。

本当は最初僕が配属されたとき正式には上司ではなかったのだけれど、僕が配属されたことで彼女は結果的に昇進することになった。
そのことを彼女はとても嬉しそうに僕に話して来たが、やる仕事は特に何も変わらないので、「はぁ、そうですか。」とだけ僕は言った。
もしかしたら、それも気にくわなかったのかも知れない。
どうだ、私の方がおまえより上なんだ、会社からのお墨付きもあるんだ、と。
でも、僕はそんなことどうでも良く、むしそ、そうやって必ずマウントを取って来ることに毎回うんざりしていた。

私の方が出来る、というアピールと、おまえのやり方はダメだという否定。
僕は仕事が出来れば良かっただけで、与えられた仕事を定時内に終わらせ帰れれば良かった。
けれど、彼女の仕事量よりも僕に与えられる仕事量が増えてきたときでさえ、彼女は何故か22時くらいまで連日残業していた。

その職場に配属されてからすぐにその上司のパワハラが始まって困ったので、僕はもっと上の上司に相談をした。
その上司はすぐになんとかする、と約束をしてくれた。
けれど、結局何も変わらなかった。
顧客から僕らの会社に与えられる仕事が増え、顧客からは今いる上司ではなく「田中さんをメインにしたい」とまで言ってもらえ、僕らの会社からの人員も増やしてもらった。

結果的に、僕が配属されたときには2人でやっていた仕事を僕が辞めるときには5人でするような仕事を任されるようになっていた。

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