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Kirsten / Firesider

レストア前

アメリカ発のシステムパイプ、カーステンです。

カーステンは、1936年、ワシントン大学で航空工学を研究するフレデリック・カーステン博士によって発明されました。
博士が医者に紙タバコやめろって言われて、タールと水分を取り除く新しいパイプとして設計したそう。
インテリの執念。
究極のクール&ドライを誰でも簡単に体験できるそう。
現在は一般的には販売してなくて、カーステンのサイトから受注生産してるみたい。

全体は、ボウル/ラジエーターステム/バルブ/ラム・ロッド付きマウスピースによって構成されています。
同じようなシステムパイプとしてイギリス発のファルコンがありますが、あっちよりも複雑。
ステムの素材はジェラルミン。
航空工学ぽい。
メカ感。

ボウルはファルコンみたいに好みで取り替えられる。
サイト見ると、これはコロンバスってシェイプかな?
栗みたい。

ラジエーターステムのマウスピースと逆側、ボウル下にある六角ネジみたいなのが、バルブと呼ばれるパーツです。
パイプ使用中にこれを取り外して、ステム内部に発生した水分を出せるらしい。
掃除しないとヤニで固着して外れなくなるそうで、ペンチとかで頑張った跡が残ってます。

ステムの底にMADE IN USA、の後ろにF。
このFがシェイプナンバーぽい。

カーステンは、第1、第1.5、第2、第3世代に分けられるらしい。
第1世代は1936年〜1958年くらい。
第2世代は1958年〜1985年くらいまで。
第3世代はその後現代まで。
第2世代以降は、バルブとマウスピースにOリングと呼ばれるゴム性の輪っかがついてます。
これのおかげでパーツの取り外しがやりやすくなってるみたい。
第1世代はこのリングがないので、固着がもっとすごいらしい。

んで、F、というのは、第2世代の時のシェイプナンバーで、シェイプ名ファイヤーサイダーの頭文字。
フルベントのモデルです。

ボウルは結構使用感ある。
底のネジの真ん中に小さい穴が空いていて、それが煙道になるみたいだけど詰まってる。

マウスピースもそれなりの使用感だけど、深いティースマークはなし。
エボナイトぽい。
マウスピースが硬くて抜けなかったので、隙間にエタノール流し込んで外しました。


ボウルのお掃除

ボウル内のカーボンを削ります。
形状的にリーマーあんまり役に立たない。
リューターでゴリゴリ。
結構ボウル内ボコボコに抉れてたので、ヤスリでならしました。
底の方とかもリューターのヤスリで。

カーボンを取り除いてみると、結構深いクラックが複数。
一部はボウルの外側まで達してる。
まあ、外側のクラックは薄いからギリいける。

底のネジ穴にモール詰め込んで蓋。

レンゲの上にティッシュ敷いて、パイプレスト置いて、その上にコットン詰めたボウル置いて、アルコールメソッド。

放置してる間にちょっと調べたら、ネジ自体も外れるっぽいので、中断してネジを取り外す。
アルコールメソッドのおかげで固着が解消されていたのか、簡単に取り外せました。
その後、再び底をモールで塞いでアルコールメソッド再開。

一晩おいたらコットン取り除いて掃除。
内側削ってるのでそんなに汚れ出ない。

ボウルにキッチンペーパー詰めて、マーフィーのオイルソープでこすり洗い。
原液を歯ブラシにつけてゴシゴシ。
温水の流水で洗い落とします。


ボウルの修理

洗うと見えにくかった部分も見えやすく。
ボウルトップのあたりが結構削れてザラザラ。

240、400とかの荒いヤスリで傷をならします。
ボウルトップもヤスリに円の動きで擦り付けて水平に。
底の金属部品も外れるっぽいけど、これは接着されてるのか取れなかった。

外側のクラックに、接着剤と、ヤスリがけで出たブライヤーダストを混ぜて塗り込みます。
以前はうまくいったけど、ブライヤーが細かすぎたのか接着剤の材料がダメだったのか、うまく混ぜれなかった。
混ぜてる途中で煙出てビビる。
なので、接着剤をボウルに塗って、上からブライヤーダストを振りかける形にしました。
その後ヤスリかけて馴染ませます。
薄いクラックだったので、あんまり効果ないかもだけど、まあ。

その後、全体を2000までヤスリがけ。
白棒パフもかけます。
ピカピカになったら塗装。
ピカピカにしてから塗装しないと、塗装後にヤスリかけたりパフかけたりで結局色落ちちゃいます。
染料をエタノールで溶かして、モールを筆がわりに薄く塗っていきます。
好みの色になるまで重ね塗り。

ここがクラックのあった場所。
クラック隠れるように濃い目の色で仕上げました。

ボウル内部のクラックは、葉巻の灰と蜂蜜を練って、パテ代わりに埋めていきます。
まあ、カーボンで固めるって話ですな。

なんで葉巻の灰かって言うと、最も不純物が少ないそう。
白い灰であれば問題ないんだけど、紙巻きタバコとかパイプの灰だと、不純物や燃えカスが残ってて、味に影響が出るみたい。
葉巻は、無着香であれば何でも良いらしく、近所のタバコ屋に一番安い無着香の葉巻を聞いたらこれが出てきた。
NEOS Mini RESERVA っていうシガリロ。
葉巻とタバコの間の子みたいなやつ。
小さい灰皿をこのシガリロ専用にして、灰を貯めてます。

最後に、カルナバワックスで仕上げ。
小さくて拭きにくい。
ひとまずボウルはおしまいです。


ステムのお掃除

マウスピースやらバルブやらシャンクやらをエタノールにドボン。
マウスピースの変色強めだったけど、オキシ漬けは無し。
アルミはオキシ漬けすると変色することがあるみたいだけど、マウスピースの金属製の棒が取り外せない。
シャンクのジェラルミンってアルミと銅の化合物らしいので、多分他パーツもアルミ入ってるだろうと。

でも、今度はゴムのOリングも外せないので、エタノールでゴムが劣化しないように長時間は漬けず、しゃぶしゃぶスタイル。
ちょっと浸して拭き取ってしゃぶしゃぶしてブラシで洗ってを繰り返す。

モールでマウスピース内をゴシゴシ。
ブラシ入らないし細いモールじゃないと通らない。
金属の棒は、マウスピース側の太いところまでしか穴空いてない。
ここまでが、いわゆるアルミフィルターの感じ。
その先の細い棒はただの棒。
煙を冷却するための装置ぽい。

シャンクの中とかはキッチンペーパーとかにエタノールつけてピンセットでゴシゴシ。
バルブの内側も。
結構大変。

洗い終わったら、マウスピースにティースマーク出てきた。
軽くライターで炙る。
エボナイトは、こうすると凹みが少し盛り上がります。
下が炙った後だけど写真だとあんま変化ないね。

炙った後は、ダイヤモンドヤスリと400のヤスリで成形。
凹みなくなりました。

あとは600〜2000までヤスリかけて、白棒パフとコンパウンドで仕上げ。
つやふきんでマウスピース部分拭いておしまいです。

金属部分は、Amazonで売ってた研磨剤の入っていない銀磨きで磨きまくります。
バルブなどの目立つ傷や汚れが強い部分は、ダイヤモンドヤスリから1000〜2000のヤスリかけて白棒パフ、その後100均で売ってた研磨剤が含まれてる研磨用の布に銀磨き付けて拭きまくり。
すぐに布が真っ黒になる。
磨いた後、シャンクとバルブは外側にルネサンスワックスを塗っておしまいです。


完成

ピカピカです。
メカ感。
かっこいい。

マウスピースもピカピカ。
フィルターもピカピカ。

クラックも埋まってまだまだ行けそうです。
パテ乾き切ってないけど。

ボウルトップのザラザラした傷もなくなりました。

ボウルを留める煙道のネジも詰まり解消。

ファルコンは普通のパイプを金属にしただけの形状なので、ボウル外せるのがオモチャみたいで嫌だったけど、ここまでメカメカしく振り切ってると、これはこれでカッコいい。
普通のパイプとは別物として。

ファルコンだと底に敷くリング状のコットンとか、使い捨ての道具用意するのがめんどくさいけど、こっちはそういう消耗品もない。
手入れはファルコンの方が楽っぽいけど。

自分で使うつもりなかったけど、自分で使うことにしました。
世界で最もクールなスモーキングってのに興味あるし。
パテ乾くのが待ち遠しい。
1週間程度休ませます。

以上でレストア終了です。
おつかれさまでした。

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