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17章 西口先輩

留年してから西口先輩とよくつるむようになった。
ライブに足を運び、知り合いも増えた。
今までにない楽しみを見つけ毎日が本当に充実していた。

そんなある日の事。

西口先輩の部屋に来ていた。

先輩、キモイ事聞きますけど何で仲良くしてくれんすか?

。。。本当にキモイな。
え。。。気持ち悪いな。
楽しいからだよ。それ以外ねーべ。
後は、きっかけだけど何か俺2年遅れて入学してさぁ。何かお前留年したじゃん?他の奴辞めてく中でなんだかんだ辞めねーで学校来てんじゃんよ?
何か近いもん感じるのもあんのかな?
わかんねーけど。

正直、先輩とは全然理由が違ってピンと来なかった。
俺は勝手をやりすぎてこの結果。
なのに、それでも適当に学校に行っている自分に罪悪感がありつつも楽しいが優先してる事に先輩がくれた言葉に申し訳なくも感じた。

いや、俺は辞めてもやる事ないからとりあえず来てる感じっすよ。
先輩とは違います。。。

いや、いいんじゃね?
俺はだけど、俺も話してなかったけど前の高校つまんなくて辞めたんだよね。
そこそこ偏差値たけー学校だったけど違うなって辞めたんだよ。
でも、俺も特に今やりてー事ないし高校くらい出とかないとってとりあえずやってる感じよ。
ブルとあんま変わらねーよ。
とりあえず一緒に卒業すんべよw

ありがたかった。
何か、本当に響いた。
こんなにダメな素直な意見を一緒の目線で語ってくれた事に感謝しか無かった。
先輩も本心ではあると思うけど、かなり救われた。
この時かもしれない。何が何でも卒業してやる。

それでも、遊び優先ではあった。
西口先輩の家にいると色々な人が来た。
だいたい西口先輩目的の女の子が多かった。
決まって一緒に3人で呑むのだが。。。
俺はその女の子に悪くて帰ろうとすると西口先輩が女の子に見えない様に腰を殴ってくる。
帰んなまだ。の合図だ。
西口先輩の悪い癖だが、トイレと行って部屋を出て帰って来ないのだ。
断る事が出来ずに部屋に女の子を通すがそんな時に必ず呼ばれる俺。
トイレに立ってから帰って来ない先輩。その女の子と2人になった時の気まずさったらない。
一応気を使って。。。西口先輩ど〜しちゃったんですかね〜?なんて事をぬかしてみたりもするが。。。

嫌われてんだよアタシ。。。

勘弁して欲しい。
何故、西口先輩の事を想う相手のケアをしなくてはならないのだ。

そんな事はよくあったが、先輩に問い詰めても必ず酔いすぎて兄ちゃんの部屋で寝ちゃったと言う。
嘘がダサい。
もっとマシな嘘を付けである。

でも、何かそんな所もかっこいいと思っていた。
媚びないのだ。
俺を使う先輩は悪いが、普通女の子が部屋に来る。これは高校生からしたらウハウハな展開ではないか。
だけど、先輩は全く無関心。
とりあえず媚びないのだ。

その余裕が多分モテていたんだと思う。

とにかく当時は全て憧れていた。

そんな時軽い事件が起こった。
先輩の家で夜何人かでお酒をのんでいた。

皆、若い事もあり実家なのに調子に乗って騒いでいると。。。

いきなり西口先輩のお母さんが部屋に入って来た。

ご、ごめんなさい。と、言うが怒った顔をして出ていかない。

西口先輩の部屋にはドラムセットがあった。

お母さんはそのドラムセットに腰掛けて息を思いきり吸うと。。。軽快にドラムを思いきり叩き出した。。。
めっちゃくちゃ本当にびっくりするくらい上手かった。。。

皆、シーンとして見入った後、先輩のお母さんはこう言った。

いい加減にしなさい。何時だと思っているの!

皆、シーンとしたままお母さんが部屋を出るのを待った後で大爆笑した。

ドラムは何のメッセージだったのかと当時は腹を抱えて笑った。

今思えば、お母さんの優しさだとわかる。
それはいつも先輩の家に行く度に、お母さんが仲良くしてくれてありがとうねって笑顔で言ってくれてたからだ。
先輩の顔を立てる為にふざけてくれたのがわかる。
でも。。。少し変わったおちゃめなお母さんだった事は間違いない。

とにかく、西口先輩が俺が留年してから不安とか払拭してくれたのは間違いない。

大袈裟ではなく、俺の人生を変えてくれた人物である。

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