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第66回 これからの仏教⑦ 延命治療の是非?

先日、子供達が、私達夫婦の金婚式を祝うために一席設けてくれました。宴席終了後私宅に戻り、コーヒーを飲みながら、久し振りに親子水入らずで語り合いました。

 その時、滅多にない良い機会だと思い、私は、自分のリビングウィル(生前の意思表示)について、子供達に伝えておくことにしました。

 このシリーズの番外編に書いたように、私は、昨年(2022年)の3月にステージ4の大腸がんの手術を受け、現在も定期的に経過観察を続けています。

 手術終了後、大腸がんは腹膜(腹筋?)にも浸潤していて、それを全部取ろうとすると、右足に通じる神経と尿管を傷つける恐れがあるので取らずにそのまま残してあります、と執刀医から告げられ、今後は内科で抗がん剤治療を受けてくださいと指示されました。

 そして内科を受診し、遺伝子型の検査等諸々の検査を受けた後、抗がん剤治療の方針が決まり、心臓ペースメーカーを装着した状態で少なくとも2週間の入院が必要と判断されました。

 その後の詳細については別の機会に書こうと思っていますが、副作用に対する危惧などから、結果として、私は抗がん剤治療をお断りしたのです。

 従って、また外科に戻され、何の投薬・治療を受けることもなく、定期的に血液検査とCT検査を実施し、経過を観察することで現在に至っています。

 そんな状況にあり、年齢的にも何が突発的に起こるか分からないことから、万が一の場合に備えて、リビングウィルを伝えておこうと思ったのです。

 私は今回手術を受けてみて、医療技術の進歩に驚きました。腹腔鏡手術のため、腹部に6ヶ所穴が開けられていたのに全然痛みもなく、普通に入院生活が送れたのです。

 幸い、退院後も普通に生活できているので、今のところは何の不便も感じていないのですが、万が一、容体が急変して緊急入院を余儀なくされた場合、治療方針をどうするか?

 その場合の対処方針を、子供達に伝えておきたかったのです。

 このシリーズで何度もお伝えしているように、人間は、何度も何度も輪廻転生を繰り返している存在だということは、釈尊仏教の根幹をなす教え・思想であり、釈尊のように、生前、解脱して仏陀となる聖者を除いて、誰も免れることのできない真理です。

 回復の見込みのない患者を医療技術を駆使して延命させるということは、この輪廻転生のサイクルを一時的に阻害することに繋がり、決して患者のためになることではない、と私は思います。

 少しでも長生きしてほしいと周囲が願うような善い人だからこそ、延命治療を望むのですが、もう目の前に極楽浄土の門が見えている、阿弥陀如来や諸菩薩の姿も見えているという局面で延命治療を望むのは、「まだそっちに行ったらダメーッ!」と足を引っ張るようなもので、結果的に刑罰に近いような仕打ちになっているのではないかと思います。

 私は、子供達に、回復の見込みがなくなったら、痛みを和らげる緩和ケアを除いて決して延命治療はせず、自然に任せるようリビングウィルを伝えました。
 そして、前回(第65回)紹介した、「遺骨を残すな、墓を残すな、位牌を残すな!」も合わせて。

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